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自立支援・重度化防止に向けた報酬体系への見直しを求める(6月25日)

社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は6月25日、オンラインにより会合を開催し令和3年度介護報酬改定に向けて議論を深めた。この日は、横断的なテーマである①自立支援・重度化防止の推進②介護人材の確保・介護現場の革新③制度の安定性・持続可能性の確保─について検討した。また約30団体からヒアリングを行うことが厚労省から提案され、分科会は了承した。

③制度の安定性・持続可能性の確保について厚労省は、新型コロナウイルス感染症を踏まえ、感染症や災害の発生時にもサービスが安定的・継続的に提供されるための介護報酬や人員、運営基準等における対応も含めて意見を求めた。

意見交換では、自立支援・重度化防止の推進につながるような報酬体系への見直しや、新型コロナウイルス感染症に対応した特例的な報酬設定などが指摘された。

生活行為向上リハ実施加算等の見直しを求める

自立支援・重度化防止の推進について、健保連の河本滋史委員は、現行では基本的に利用者の要介護度が改善すると介護報酬が下がる仕組みであることから、「経営的なメリットがない」と指摘。利用者が改善した場合に高い評価が受けられる「メリハリの利いた報酬体系」にしていくことを主張した。さらに「評価の原資は、自立支援・重度化防止につながるサービスを実施していない事業所の減算によって賄い、財政中立で行われるべき」と訴えた。

同様に協会けんぽの安藤伸樹委員も、「データを蓄積してサービスの質を評価して結果を介護報酬に反映するなどアウトカム評価に基づく報酬体系に見直しを図るべき」述べた。

全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員も自立支援・重度化防止の推進について、今年度から運用が進められているCHASE等のデータに基づく評価を積極的に推進すべきと求めた。

算定率が低い加算の見直しも課題だ。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、通所リハビリに導入された生活行為向上リハビリテーション実施加算について、導入から5年ほどたつが、算定率が加算1で0.61%、加算2で0.54%と、1%に満たないことをあげ、「制度的・構造的に何か問題があるのではないか」と指摘した。また訪問介護に2年前に導入された生活機能向上連携加算も加算Ⅰで0.37%、加算Ⅱで0.20%に止まることから「適切な見直しを考えていただきたい」と求めた。

日本医師会の江澤和彦委員も生活行為向上リハ実施加算の見直しについて次回改定の課題とした。

特定加算の算定率は6割

介護人材の確保のため処遇改善は引き続き大きなテーマだ。

昨年10月に導入された介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)の請求状況(令和2年1月審査分)が示された。全サービスの算定率は加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の合計で57.0%にとどまった。

全国市長会の大西秀人委員は、特定加算算定率が6割にとどまったことや、従来の介護職員処遇改善加算でも1割がいまだに算定していないことを指摘。要因として特定加算等の手続きが煩雑であることなどをあげ、手続きの簡素化や柔軟な配分を可能とするよう検討を求めた。

連合の伊藤彰久委員が介護職員の処遇改善を引き続き行っていくことの議論を要請。他方、日本経団連の井上隆委員などは処遇改善加算の効果検証の必要性を指摘した。

新型コロナウイルス感染症への対応における報酬設定も提起された。

市長会の大西委員は、コロナの感染防止対策を講じてのサービス提供では負担がかかることから、「国において特例的な報酬設定を検討いただいて第2波・第3波の到来に備えてほしい」と要望した。

全老健の東委員は、「感染症対策も含めてリスクマネジメントを報酬上、どのように評価していくかが重要だと思う」と述べた。

その他、分科会は次の団体からヒアリングを行うことを了承した。前回よりも日本栄養士会や全国介護事業者連盟など7団体増えている。

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