テクノロジーや介護助手の活用について議論、新型コロナ臨時特例の見直し案は了承へ 介護給付費分科会(2023年4月27日)
厚生労働省は4月27日、第216回社会保障審議会介護給付費分科会を開催し、「テクノロジー活用等による生産性向上の取組に関する効果検証について」および「今後の新型コロナウイルス感染症にかかる介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」議論した。
夜間見守りで業務時間が削減される一方、移乗支援では増加の傾向も
「テクノロジー活用等による生産性向上の取組に関する効果検証について」では、事務局より「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する測定事業」についての説明が行われた。
実証テーマは、①見守り機器等を活用した夜間見守り、②介護ロボットの活用(移乗支援(装着・非装着)、排泄支援、介護業務支援)、③介護助手の活用、④介護事業者等からの提案手法の4つ。
昨年7月の第211回介護給付費分科会における検討を踏まえ、調査項目が追加されたものとなっており、今年3月に報告がなされていた。
①見守り機器等を活用した夜間見守りでは、導入率が100%の状態で「直接介護」「巡回・移動」時間の合計が11.7%減少するなどの効果が見られた。
②介護ロボットの活用では、移乗支援(装着型)・移乗支援(非装着型)・排泄支援(排尿前通知機器)・介護業務支援(スマートフォン入力)の4つをパッケージ型で実証。移乗支援ではvitality indexに大きな変化が見られず、業務時間についてはやや増加する傾向が見られた。一方、排尿を検知する機器を用いた排泄支援では、利用者の状況の可視化に繋がったとの意見が8割を占め、トイレ誘導時に排泄がなかった回数がおよそ半減した。スマートフォン等を活用した介護業務支援では、昼・夜ともに「記録・文書作成・連絡調整等」の業務時間の効率化が図られた。削減された業務時間は、利用者とのコミュニケーションに活用するなどの運用が見られた。
③介護助手の活用は、17施設で調査。介護職員が利用者のケアに注力することで、介護職員に余裕ができ、結果として利用者の発語量や笑顔の頻度等が増加する傾向が把握できた。
④介護事業者等からの提案手法では、社会福祉法人善光会、SOMPOケア株式会社、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションでの実証事業の結果が示された。
このほか、その他調査として、施設職員、利用者・家族から匿名で意見を調査が実施された。
ここでは、肯定的な意見・否定的な意見がそれぞれ寄せられており、たとえば夜間見守りの職員調査では、「転倒リスクのある利用者の対応に役立っている」という一方、「センサーがなった後に止める作業が増えた」などの意見が挙げられている。
また、利用者・家族の面からも「就寝中の行動がわかり安心できる」と「家族に見える形で伝わらない」という意見がそれぞれ見受けられるなどの結果となった。
介護助手の有効性については複数の委員より指摘、業務内容の例示を評価
こうした事業の実施結果等を踏まえ、次期介護報酬改定に向けた検討のなかで議論が行われた。
健康保険組合連合会の伊藤委員は、テクノロジーの活用に関する好事例の横展開を求めつつも、導入費用についての懸念を示した。製造単価をどうやって下げていくのかなど、費用対効果の観点からの分析を求めた。
全国老人保健施設協会の東委員は、ICTの導入支援としては地域医療介護総合確保基金があることを挙げつつも、継続的にかかる費用に言及。寛解後記録・見守り・インカム・ナースコールやLIFE対応などをクラウドで実施すると高額な運営費用がかかるとし、「ランニングのサポートが必須」との見解を示した。また、介護助手の活用については、自らの施設における状況を報告。介護職員の減少と3分の1となった残業代が、介護助手の導入にかかる費用と釣り合っている実態を示し、人件費の面でも大きな負担がなく効果が得られると強調した。
日本慢性期医療協会の田中委員も、実際に活用している現場の立場から介護助手の有用性に触れ、「導入していない事業所においては、その仕事の切り分けがイメージできていないのではないか」と指摘した。また、今回の実証において介護助手の活躍可能な業務内容が明示されたことを評価した。
しかし、実証に関しては選定方法、機器の種類の少なさ、参加施設・参加利用者ならびに職員・家族数の少なさを指摘。さらなる検証が必要だと要望した。
日本医師会の江澤委員もn数の問題、アウトカムの設定の問題等などを指摘し、質の担保された検証事業を実施していく必要性に言及。また、人員確保の困難を踏まえ、介護助手の処遇について考えていくことを求めた。さらに、介護が「人が人に濃厚なサービスを提供する心の通い合う究極のサービス業」であることを前提に、生産性という言葉がそもそも馴染むのか今一度考えていく必要があること、生産性向上のもと過去の集団ケアに逆戻りしてはならないことを強調した。
事務局では、規模別・サービス別といったより詳細な整理分析などを行い、今後の議論に向けた整理していくこととした。
サービスの簡略化などに関する特例は終了へ――新柄コロナウイルス感染症に関する臨時的な取扱い案を了承
2つ目の議題では、「今後の新型コロナウイルス感染症にかかる介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」議論した。
臨時的な取扱いとは、これまで新型コロナウイルス感染症の患者等への対応等により、一時的に人員基準を満たすことができなくなる場合等が想定されるため、介護報酬、人員、施設・設備・運営基準などについて、柔軟な取扱いを可能としたもの。
これについて、令和5年5月8日より特段の事情が生じない限り新型コロナの位置づけの変更することが間近となっていることを踏まえ、見直しの案が示された。
具体的には、次のような対応となっている。
[当面の間継続]
利用者や介護職員等において新型コロナの感染者が発生した際にも、安定的にサービス提供を行うための特例や、ワクチン接種の促進のための特例については、当面の間継続する。また、医療資源の効率的な活用およびケアの質向上の観点から、医療機関からの退院を受け入れた介護保険施設に対する、介護報酬上の評価も当面の間継続する。
[一定の要件のもと継続]
引き続き感染対策を行いながら必要なサービスを提供する観点及び新型コロナの位置づけ変更やオンラインによる研修環境の改善等を踏まえ、より合理的な取扱いに見直すことが適当なものについては、必要な見直しを行ったうえで継続する。
[臨時的な取扱いの終了]
位置づけ変更に伴い、各種制限が緩和されることを踏まえ、特例的な取扱いがなくても必要なサービスを提供することが可能と考えられるものについては終了する。
これにより、訪問・通所系サービスにおける、短時間の提供により最短時間の報酬が算定可能とする取扱いなど、サービスの簡略化などに関する特例は終了する案となっている。
この案については、異論はなかったものとして、提示された内容で進めていくことが了承された。
次回の介護給付費分科会は5月24日(水)午後を予定している。