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在宅医療で活躍する訪問看護ステーションが押さえておきたい令和4年度診療報酬改定の3つのポイント

令和4年診療報酬改定で医療保険の訪問看護が変わっています!

令和4年4月から、診療報酬の改定が行われました。その一環として医療保険の訪問看護も、質の高い在宅医療・訪問看護を提供するという観点から、さまざまな見直しが行われました。

この記事では、訪問看護ステーションが押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

ポイント1.専門管理加算の新設:施設基準を満たした場合に1月あたり2,500円の算定が可能に

専門性の高い看護師による訪問看護の評価の推進を図る観点から、専門の研修を受けた看護師が、専門的な管理を含む訪問看護を実施する場合の評価が新設されました。

一定の基準に適合している旨を届け出た訪問看護ステーションにおいて、「①緩和ケア、②褥瘡ケア、③人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師」あるいは「特定行為研修を修了した看護師」が、要件に該当する利用者に対し、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に加算することができます。

書籍『訪問看護業務の手引』(発行:社会保険研究所)では、専門管理加算について次のように解説しています。

9)専門管理加算
 専門管理加算は,専門の研修を受けた看護師が,専門的な管理を含む訪問看護を実施する場合の評価として令和4年度改定で新設されたものです。訪問看護ステーションの①緩和ケア,褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師,②特定行為研修を修了した看護師が,指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に,月1回に限り,下表に掲げる区分に従って,いずれかを所定額に加算することができます(いずれも2,500円。なお,例えば,同一月に同一利用者に対して,褥瘡ケアに係る管理と特定行為に係る管理を実施した場合には,いずれかを月1回に限り算定します)。
 専門の研修を受けた看護師は,主治医から交付を受けた訪問看護指示書に基づき,定期的(1月に1回以上)に指定訪問看護を行うとともに,当該利用者に係る指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行います。
 特定行為とは,診療の補助として,医師又は歯科医師が作成する手順書により看護師が行うもので,実践的な理解力,思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされるものをいいます(「保健師助産師看護師法」第37条の2第2項)。特定行為を行う看護師は,厚生労働省令で定める基準に適合する特定行為研修を修了していることが義務づけられています(同第37条の2第1項)。
 また,訪問看護指示料又は精神科訪問看護指示料の手順書加算は,診療を担う保険医療機関の保険医が,訪問看護において特定行為(訪問看護において専門の管理を必要とするものに限る)に係る管理の必要性を認め,訪問看護ステーション等の特定行為研修を修了した看護師に対し手順書を交付した場合に,保険医療機関において算定する加算です。
 特定行為のうち「訪問看護において専門の管理を必要とするもの」とは,①気管カニューレの交換,②胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換,③膀胱ろうカテーテルの交換,④褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去,⑤創傷に対する陰圧閉鎖療法,⑥持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整,⑦脱水症状に対する輸液による補正,の7つをいいます。

[専門管理加算]
(専門の研修を受けた看護師→管理の対象となる利用者)

■①緩和ケア,②褥瘡ケア,③人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護 2,500円
→①悪性腫瘍の鎮痛療法若しくは化学療法を行っている利用者,②真皮を越える褥瘡の状態にある利用者(在宅患者訪問褥瘡管理指導料(C013)を算定する場合は真皮までの状態の利用者),③人工肛門若しくは人工膀胱を造設している者で管理が困難な利用者

■特定行為研修を修了した看護師 2,500円
→①訪問看護指示料(C007)又は②精神科訪問看護指示料(I012-2)の手順書加算を算定する利用者

訪問看護業務の手引 令和4年4月版』p.132-133より転載

ポイント2.情報提供療養費の対象となる情報提供先の追加

訪問看護における関係機関との連携を更に推進する観点から、訪問看護情報提供療養費の対象者や情報提供先の範囲が追加されました。

  1. 訪問看護情報提供療養費1における情報提供先に、障害福祉サービスの指定特定相談支援事業者と指定障害児相談支援事業者が追加され、また対象となる利用者の範囲も拡大されました。

  2. 訪問看護情報提供療養費2について、情報提供先に高等学校等が追加され、対象となる利用者の年齢が引き上げられました。また、当該利用者に対する医療的ケアの実施方法等を変更した月においても算定可能となりました。

8 訪問看護情報提供療養費
 訪問看護情報提供療養費は,訪問看護ステーションが利用者の同意を得て,①市町村・都道府県又は指定特定相談支援事業者・指定障害児相談支援事業者(障害者・障害児に対し障害福祉サービス等の利用計画の作成等を実施),②学校等,③保険医療機関等に対して,指定訪問看護に関する情報を提供した場合に支給されます。情報提供先が①の場合は訪問看護情報提供療養費1を,②の場合は同2を,③の場合は同3を算定します。令和4年度改定では,1,2の情報提供先が拡大され,それに伴い対象者の年齢が引き上げられました(下表の太字を参照)。

[訪問看護情報提供療養費]

■訪問看護情報提供療養費1
・情報提供先:利用者の居住地を管轄する市町村(特別区を含む),都道府県/指定特定相談支援事業者,指定障害児相談支援事業者
対象者:巻末4⃣①※の該当者/同②の該当者/精神障害を有する者,その家族等/18歳未満の児童
算定日数:月1回

■訪問看護情報提供療養費2
・情報提供先:保育所,認定こども園,家庭的保育事業・小規模保育事業・事業所内保育事業を行う者,幼稚園,小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,高等専門学校,専修学校
・対象者:18歳未満の超重症児,準超重症児/巻末4⃣①※に該当する18歳未満の児童/同②に該当する18歳未満の児童
・算定日数:各年度1回/入学・転学等により当該学校等に初めて在籍することとなる月に1回/医療的ケアの実施方法等を変更した月に1回

訪問看護情報提供療養費3
・情報提供先:利用者(在宅)の診療を行っている保険医療機関(保険医療機関,介護老人保健施設,介護医療院への入院・入所時)
・対象者:在宅から保険医療機関,介護老人保健施設,介護医療院へ療養の場所を変更(入院・入所)する利用者
・算定日数:月1回

訪問看護業務の手引 令和4年4月版』p.133より転載

※上記表中の「巻末4⃣」とは、介護保険と医療保険の使い分けや、加算の算定に関連する疾病等を箇条書きで整理した10種類の一覧(『訪問看護業務の手引』では後ろ見返しに掲載)の一つです。

4⃣ 厚生労働大臣が定める疾病等の利用者
(平18告示103号「基準告示」第2の1)
○医療保険で週4日を超える訪問看護を行うことができる利用者
①特掲診療料の施設基準等・別表第七に掲げる疾病等の者
・末期の悪性腫瘍
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・スモン
・筋萎縮性側索硬化症
・脊髄小脳変性症
・ハンチントン病
・進行性筋ジストロフィー症
・パーキンソン病関連疾患
・進行性核上性麻痺
・大脳皮質基底核変性症
・パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る)
・多系統萎縮症
・線条体黒質変性症
・オリーブ橋小脳萎縮症
・シャイ・ドレーガー症候群
・プリオン病
・亜急性硬化性全脳炎
・ライソゾーム病
・副腎白質ジストロフィー
・脊髄性筋萎縮症
・球脊髄性筋萎縮症
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎
・後天性免疫不全症候群
・頚髄損傷
・人工呼吸器を使用している状態

訪問看護業務の手引 令和4年4月版』後ろ見返しより転載

ポイント3.遠隔死亡診断補助加算の新設:訪問看護ターミナルケア療養費に1,500円加算

医師が行う死亡診断等について、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が補助した場合の評価として、訪問看護ターミナルケア療養費に遠隔死亡診断補助加算(1,500円)が新設されました。

9 訪問看護ターミナルケア療養費
 訪問看護ターミナルケア療養費は,主治医との連携の下に,訪問看護ステーションの看護師等が在宅等での終末期の看護の提供を行った場合を評価するものです。
 在宅で死亡した利用者(ターミナルケアを行った後,24時間以内に在宅以外で死亡した者を含む)又は特別養護老人ホーム等で死亡した利用者に対してターミナルケアを行った場合は,訪問看護ターミナルケア療養費1(25,000円)を算定します。ただし,特別養護老人ホーム等で死亡した利用者のうち,介護保険における看取り介護加算等を算定した利用者については,訪問看護ターミナルケア療養費2(10,000円)を算定します。「特別養護老人ホーム等」には,指定特定施設,指定認知症対応型共同生活介護事業所,指定介護老人福祉施設(有料老人ホーム,軽費老人ホーム,養護老人ホーム,認知症高齢者グループホーム,特別養護老人ホーム)が含まれます。
 具体的には,主治医の指示により,死亡日及び死亡日前14日以内の計15日間に訪問看護基本療養費,精神科訪問看護基本療養費又は退院支援指導加算のいずれかを合わせて2回以上算定し,かつ,訪問看護におけるターミナルケアの支援体制(訪問看護ステーションの連絡担当者の氏名,連絡先電話番号,緊急時の注意事項等)について利用者及びその家族等に対して説明した上でターミナルケアを行った場合に算定します(令和4年度改定で退院支援指導加算が追加)。
 1回を退院支援指導加算とする場合は,退院日にターミナルケアに係る療養上必要な指導を行っていることが必要です。また,1つの訪問看護ステーションにおいて,死亡日及び死亡日前14日以内に介護保険制度又は医療保険制度の給付の対象となる訪問看護をそれぞれ1日以上実施した場合は,最後に実施した指定訪問看護が医療保険制度の給付による場合に,訪問看護ターミナルケア療養費を算定します。
 ターミナルケアの実施については,厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ,利用者及びその家族等と話し合いを行い,利用者本人の意思決定を基本に,他の関係者と連携の上,対応することになっています。なお,同一の利用者に,他の訪問看護ステーションにおいて訪問看護ターミナルケア療養費を算定している場合又は保険医療機関において在宅患者訪問看護・指導料の在宅ターミナルケア加算若しくは同一建物居住者訪問看護・指導料の同一建物居住者ターミナルケア加算を算定している場合においては,訪問看護ターミナルケア療養費は算定できません。

(遠隔死亡診断補助加算)
 訪問看護ステーションの情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が,在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の死亡診断加算を算定する利用者(同(Ⅱ)で準用する場合も含む)について,その主治医の指示に基づき,情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合に,遠隔死亡診断補助加算として,1,500円を所定額に加算します(令和4年度改定で新設)。加算の対象となる利用者は,訪問看護基本療養費及び精神科訪問看護基本療養費の特別地域訪問看護加算の地域に居住する利用者に限られます。
 なお,主治医による死亡診断の補助は,厚生労働省「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」に基づいて行います。

訪問看護業務の手引 令和4年4月版』p.135-136より転載

報酬改定に的確に対応し、訪問看護に求められる役割を確実に果たすために

以上のほかにも、改定項目は次のように多岐にわたっています。

  1. 業務継続に向けた取組強化の推進(いわゆるBCP)

  2. 機能強化型訪問看護ステーションの見直し(機能強化型1及び2については、初日の管理療養費を引上げ)

  3. 退院支援指導加算の充実化

  4. 複数名訪問看護加算の見直し

  5. 訪問看護指示書の様式の見直し等

医療と介護をつなぐ要として、訪問看護は大切な役割を果たしています。訪問看護ステーションは、医療機関(病院・診療所)とともに訪問看護の担い手として、地域に不可欠な存在となっています。それだけに、適切な運営・経営が求められています。

訪問看護業務の手引』は、訪問看護ステーションの開設から日々のサービス提供、そして報酬の算定・請求にいたるまで、各方面にわたり役立つ情報が満載されていますが、このたび前述の令和4年改定に対応した「令和4年4月版」が刊行されました。訪問看護に関連する厚生労働省所管の直近の法令・通知・事務連絡に基づき、内容を一新しています。

『訪問看護業務の手引 令和4年4月版』の詳しい目次・内容紹介とご購入はこちら

本書は、介護保険による訪問看護と医療保険による訪問看護について詳細に解説しています。医療保険による訪問看護は、この4月に実施された診療報酬改定に対応した、最新の内容を盛り込んでいます。

訪問看護ステーションの開設から、訪問看護の実施費用の請求(レセプトの作成)まで、図表を駆使してわかりやすく解説しています。特に、介護保険と医療保険の使い分け(給付調整)については煩をいとわず随所で説明しており、実務書として工夫を重ねています。

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