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#6 障害年金の基本と注意点-会社員の障害年金

望月 厚子(もちづき あつこ)/望月FP社会保険労務士事務所 所長

この記事は社会保険研究所刊「くらしとねんきん」2023年夏号に掲載したものです。

障害年金は、病気やけがが原因で障害の状態になった場合に、生活を支えるものとして支給されます。
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つがあります。どの制度から障害年金が支給されるかは、「初診日」においてどの年金制度に加入していたかということで決まります。


会社員の障害年金は厚生年金加入中に初診日がある障害に支給される

初診日とは、その障害の原因となった傷病で初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。初診日に自営業者(第1号被保険者)の人や専業主婦(第3号被保険者)の人の場合には国民年金から「障害基礎年金」が支給されます。
初診日に会社員(第2号被保険者)の人は、障害基礎年金に加えて、第2号被保険者である期間分の「障害厚生年金」も支給されます。
障害年金を受給できる人は、公的年金に加入し、保険料納付済期間等を満たし、障害認定日{その障害の原因となった傷病について初診日から1年6ヵ月を経過した日、または1年6ヵ月以内にその傷病が治った場合はその日(症状固定)}に障害の状態が一定の程度にあることなどの支給要件を満たしていることが必要になります。

対象となる障害の程度や疾患とは

障害年金が支給される「障害の程度」は、法令によって障害等級(1~3級)の基準が定められています。
たとえば、1級の場合、他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態となります。障害年金は、手や足などの肢体に現れる障害以外にも、精神疾患(統合失調症、うつ病など)や内臓疾患(慢性気管支炎、心筋梗塞、糖尿病、がんなど)を患っている場合も支給されることがあります。

支給される年金の種類・年金額は

「障害基礎年金」は、1級または2級、「障害厚生年金」は、1級、2級、3級または障害手当金(一時金)があります。
支給される障害年金の額は、障害の程度や配偶者や子供の有無で決まります。
「障害基礎年金」の年金額は、1級が993,750円、2級が795,000円。18歳到達年度の末日までの間にある子(または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子)がいる場合は、子供2人までは1人につき228,700円、3人目以降は1人につき76,200円が加算されます。
「障害厚生年金」の年金額は、厚生年金加入期間中の標準報酬額と加入期間(300月未満の場合は、300月と見なす)で計算します。1級は報酬比例の年金額の1.25倍、2級は報酬比例の年金額です。なお、65歳未満の配偶者がいる場合は、228,700円が加算されます。
3級は報酬比例の年金額(最低保障額あり)、障害手当金は、報酬比例の年金額×2(最低保障額あり)となります。
※年金額は令和5年度の額(67歳以下の人の場合)です。

心疾患治療中、職場復帰予定のHさんのケースを見てみましょう。

心疾患の治療中で、職場復帰の予定です。障害等級3級に該当するそうですが働きながら障害年金を受けられますか。

心疾患の治療で、ペースメーカーを装着しました。病院で障害年金について説明を受けて確認したところ、障害等級3級に該当する可能性があるとのことです。職場復帰の予定ですが障害年金は会社に勤務していても受けられるのでしょうか。また、その場合、いつからどのような年金が受けられますか。

Hさん(52歳、男性。20歳から厚生年金加入。妻50歳、パートタイマー)

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