介護療養型医療施設の移行検討状況の報告を義務付け(11月26日)
厚労省は11月26日、社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)に、これまでの議論を踏まえ、介護保険施設・居宅介護支援に関してさらに検討を求めた。
厚労省は介護療養型医療施設の介護医療院への移行等が確実に行われるように、一定期間(半年)ごとに移行等の検討状況を都道府県などの許可権者に報告することとし、期限までに報告されない場合は次の期限までの間、基本報酬を減額することを提案した。複数の委員が支持した。
これまでの議論を踏まえ、さらに詳細が示された事項を中心に紹介する。
介護医療院・介護療養型医療施設
介護医療院に「長期療養生活移行加算」の創設を提案
厚労省は、介護医療院に「長期療養生活移行加算」(仮称)を新設することを提案した。療養病床における長期入院患者を受け入れ、生活施設としての取り組みを説明し適切なサービスを提供する場合に評価するもの。
介護医療院でのターミナルケアにあたり、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関 するガイドライン」等に沿った取組を行うことを明示する考えも示した(介護療養型医療施設でも同様)。
また介護療養型医療施設から介護医療院に移行し、一定の要件を満たした場合に算定できる移行定着支援加算について令和3年度末の廃止を提示した。
介護療養型医療施設について厚労省は、介護医療院等への移行等が確実に行われるように、一定期間(半年)ごとに移行等の検討状況を許可権者(都道府県、政令市、中核市)に報告することとし、期限までに報告されない場合は次の期限までの間、基本報酬を減額することを提案した。なお報告通りの移行等を義務付けるものではないことを前提とする。
また令和2年度診療報酬改定で療養病棟入院基本料(経過措置1)の評価で療養病棟入院料2の減算幅が100分の90から100分の85に拡大されたことを受け、介護療養病床の評価を見直すことも改めて提案した。基本報酬を減算する考え。
健保連の河本滋史委員は、「介護医療院は長期療養が必要な方を受け入れる機能を有している施設」と指摘し、長期療養生活移行加算」(仮称)の導入に疑問を示した。また介護療養型医療施設の移行検討状況の報告の義務付けや介護療養病床の評価の見直し、移行定着支援加算の期限通りの廃止を支持した。
協会けんぽの安藤伸樹委員も介護療養型医療施設の移行状況の報告義務付けや移行定着支援加算の廃止を支持。さらに許可権者が報告内容を確認し必要に応じて助言などを行う重要性を改めて指摘し、移行状況の報告の統一的な様式を整備するなどの運用上の工夫を求めた。
全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、介護療養病床の評価の見直しについて、「あまりにも急に下げると現場も混乱する。激変緩和の措置が必要」と指摘した。
日本医師会の江澤和彦委員も介護療養病床の評価の見直しでは激変緩和措置を求めた。また介護医療院の役割として長期療養と生活施設の2つがあることを挙げ、「生活施設としての機能の評価は今後の検討課題」と述べた。
特別養護老人ホーム
看取り介護加算の算定をより早期から可能に
看取り介護加算の要件として、▽看取りに関する協議等の参加として生活相談員を明示すること▽「人生の最終段階における医療・ケア決定プロセスにおけるガイドライン」等のないように沿った取組を行うことを明示すること─を提示した。
算定日数を超えて看取りに係るケアを行っている実態を踏まえ、看取り介護加算の算定日数を現状より早期から行うことも示した。現状では死亡日より30日前から死亡日までについて算定が可能だ。
令和2年度の「特別養護老人ホームの医療や看取りのあり方に関するアンケート調査」で看取りと判断された時期から死亡日までの日数をみると、4週間未満は48・0%とおよそ半数にとどまる。
不明・無回答の3・8%を除く48・2%が4週間以上となっており、このうち23・0%が12週間以上となっている。
同様に、老健施設のターミナルケア加算をはじめ、特定施設や認知症グループホーム、小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援などの加算でも「人生の最終段階における医療・ケア決定プロセスにおけるガイドライン」等に沿った取組を行うことを明示する。
また老健施設のターミナルケア加算の算定も現行より早期から可能とする。
日医の江澤委員は、「人生の最終段階における医療・ケア決定プロセスにおけるガイドライン」について「意思決定支援のツールであり、看取りに限ったものではない。看取り介護加算の算定要件のみならず、日常的に幅広く介護事業所で活用していただき、利用者の意思決定支援に重点化していただきたい」と求めた。
施設のリスクマネジメントで未実施の場合は減算も
介護保険施設のリスクマネジメントとして、運営基準に安全対策に係る担当者を規定するとともに、運営基準における事故発生又はその再発防止のための措置がとられていない場合は基本報酬を減算することを提案。
あわせて安全対策をより一層強化するため、外部の研修を受けた担当者が配置され、施設内に安全対策部門を設置し、組織的に安全対策を実施する体制が整備されている場合を評価することとした。また事故報告の標準化による情報収集と有効活用のため報告様式を国が作成することも示した。
小規模特養の別個の報酬単価を維持
広域型の特養よりも高い基本報酬単価が設定されている小規模特養(定員30人)について、30年度報酬改定では他の類型との均衡を図る観点から、一定の経過措置の後、通常の基本報酬に統合することとしていた。厚労省は今回の改定では別個の報酬単価を維持することを提案した。
令和2年度の介護事業経営実態調査では小規模特養の収支差率は0・4%と、広域型(平均)の1・6%や地域密着型特養の1・3%よりも低かったため。
一方、小規模特養の収支差率には地域差が見られることから、経営実態について今後調査し、通常の基本報酬との統合を検討することとした。小規模特養の7割以上が管内の過疎地域に所在する道県における平均収支差率は▲1・7%となっている。
協会けんぽの安藤委員は、「経過措置を維持する場合、期限を切って検討してほしい」と要請した。
老健施設
在宅復帰指標の見直しの経過措置は半年間
在宅復帰・在宅療養支援等評価指標について、居宅サービス実施数に係る指標で訪問リハビリテーションの比重を高めることやリハ専門職配置に係る指標で、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の3職種の配置を評価することを提示するとともに、半年間の経過措置を設けることを示した。
所定疾患施設療養費の対象疾患を拡大
所定疾患施設療養費について、▽検査の実施の明確化▽療養費Ⅱの算定日数を連続する7日から10日に延長すること▽対象疾患に蜂窩織炎を追加すること▽摘要欄の記載の簡素化─を示した。
日医の江澤委員は、帯状疱疹の治療では投薬も認めるように要望した。
薬剤調整で老健施設とかかりつけ医との連携と減薬実現を個別に評価
かかりつけ医連携薬剤調整加算について、入所時及び退所時におけるかかりつけ医との連携を前提としつつ、同連携に係る取組と、かかりつけ医と共同して減薬するにいたった場合を分けて評価することを提案した。
連携に係る取組は、入所に際し、薬剤の中止・変更の可能性についてかかりつけ医に説明し理解を得るとともに、入所中に服薬している薬剤に変更があった場合には、退所時に、変更の経緯・理由や変更後の状態に関する情報をかかりつけ医に共有する。
高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬剤は国内外でガイドライン等がまとめられており、入所中に薬剤の変更が検討される場合に、より適切な薬物治療が提供されるよう、前記の評価は、施設の医師又は薬剤師が、高齢者の薬物療養に関する研修を受講している老健施設を対象とするとした。
その他、入所時から退所後の生活を念頭に置いて対応することでより早期の在宅復帰を促進する観点から、退所前連携加算の単位数を見直すことを示した。
居宅介護支援
質の高いケアマネジメントの促進で加算や運営基準を見直し
質の高いケアマネジメントの促進のため、特定事業所加算の見直しを提案した。
具体的に、同加算の要件として、「多様な主体等が提供する生活支援サービス(インフォーマルサービスを含む)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること」を追加する。加算単価は拡充する方向で検討する。
小規模事業所を念頭に、事業所間連携を促進する加算区分を導入する。
他方、現行の加算Ⅳについて名称を「医療介護連携体制強化加算」(仮称)に変更することを示した。加算Ⅰ~Ⅲと評価軸が異なることや医療と介護の連携を推進するため。
他方、居宅介護支援事業所の公正中立なケアマネジメントの取組の一環として運営基準に次のことを規定する。
具体的に、①当該事業所のケアプラン総数に利用を位置付けた、特定事業所集中減算の対象サービス(訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、地域密着型通所介護)の利用割合と②前6カ月に作成したケアプランに位置付けた訪問介護等の提供回数のうち同一事業者によって提供されたものの割合について利用者に説明することを明示する。さらにその内容を介護サービス情報公表システムの運営情報に掲載する。
その他、算定率が低調な(看護)小規模多機能型居宅介護事業所連携加算を廃止する。
ICT活用するケアマネ事業所の低減制の適用は45件 から
一定のICTの活用又は事務職員を配置している居宅介護支援事業所についてケアプラン作成の逓減制の適用を45件からとすることを提案した。現行では40件を超えると適用される。ICTの活用とは具体的に事業所内外や利用者の情報を共有できるチャット機能のアプリを備えたスマホや訪問記録を随時記載できる機能のソフトを組み込んだタブレットの使用などを示した。
こうした取扱いについて、ケアマネジメントの質が確保されていることに関する効果検証などを行う。また逓減率でもメリハリをつける考え。ICTの活用等を行わない場合の現行の低減制も継続する。
他方、居宅介護支援費Ⅰの適用上限を受ける場合について、中山間地域等の事業所の所在状況からやむを得ず利用者を受け入れた場合も例外的な取り扱いとすることも示した。
看取り期の利用者の死亡でサービス利用につながらなかった場合も評価
看取り期に利用者の死亡によりサービス利用につながらなかった場合等に限り、モニタリングやサービス担当者会議における検討等の必要なケアマネジメント業務や給付管理のための準備が行われ、介護保険サービスが提供されたものと同等に取り扱うことができるケースは基本報酬の請求を可能とする。
介護予防支援の委託時の連携を加算で評価
介護予防支援について地域包括支援センターが外部に委託する場合に居宅介護支援事業所との連携を評価する「委託連携加算」(仮称)を創設することを提案した。初めて委託するケースで算定が可能だ。