#10 繰下げ受給の予定を取り消して65歳からの年金をさかのぼって受けられる?
Мさんは、今月65歳になりましたが、日本年金機構から届いた書類を前に繰下げ受給しようかどうか悩む日々が続いているそうです。
Мさんのように60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金を受けている人が65歳になったときは、特別支給の老齢厚生年金に代わって、新たに「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受給することになります。
この場合、65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金の受け取り方を選択し、期日までに書類を提出(送付)することになっています。
今回は、65歳からの年金の受け取り方についてご説明します。
老齢年金は最大75歳まで10年間繰下げ可能
老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、原則65歳から受け取ることができますが、60歳から75歳までの間で、ライフプランに合わせて自由に受給開始時期を選択することができます。
65歳より遅く受取開始したい場合は、「繰下げ受給」を選択することで最大75歳までの10年間受取開始を繰下げることができます。
受給開始を1か月繰下げるごとに、年金額が0.7%増額しますので、75歳まで繰下げた場合の年金額は、最大84%増額されることになります。
なお、昭和27年4月1日以前生まれの人(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している人)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までです。
65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金の受け取り方は4パターン
冒頭のМさんは、65歳からの年金の受け取り方をどうしたらよいかと決めかねているそうです。Мさんの奥様は、現在63歳で特別支給の老齢厚生年金を受給しています。
Мさんの職場は、希望すれば、70歳まで働くことができるため、すぐに年金を受け取り始めなくても良いと思っています。
それでも65歳からの年金の受け取り方をどのように選んだら良いか…なかなか結論が出ません。
65歳になる前に特別支給の老齢厚生年金の請求手続きをした人には、65歳になる誕生月の初め頃(1日生まれの人は、前月の初め頃)に、日本年金機構から「年金請求書 (図表1参照))」とリーフレットが送付されます。
このリーフレットには、年金請求書の記入の仕方と繰下げ受給制度の説明が書かれています。
65歳の年金請求書の大きさは、はがきと同じサイズで、『請求者の欄』、『加給年金額対象者の欄』、『受取方法欄』に分かれています。
『請求者の欄』には、請求者の個人番号(または基礎年金番号)、氏名、住所などを記入します。
『加給年金額対象者の欄』には、加給年金額の対象となる配偶者や子どもの名前や生年月日などを記入します。
そして、『受取方法欄』には、65歳からの年金の受取方法を選択しますが、繰下げ受給には、4つのパターンがあります(図表2参照)。
(1)老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を65歳から受け取る(どちらも繰下げをしない)場合
は、1にチェックを入れます。
(2)老齢基礎年金のみ65歳から受け取り、老齢厚生年金は繰下げる場合は、2にチェックを入れます。
(3)老齢厚生年金のみ65歳から受け取り、老齢基礎年金は繰下げる場合は、3にチェックを入れます。
(4)66歳以降年金を請求(繰下げ)予定の場合
は、年金請求書の提出は不要となります。
前述の(1)~(3)にチェックを入れた人は、誕生月の末日(1日生まれの人は、前月末日)までに必ず提出(送付)します。
届出が遅れてしまうと、年金の支払いが一時保留されることがあり、振り込みが遅くなることがあります。
なお、(4)を選択する人は、年金請求書の提出は不要です。
繰下げ待機中にさかのぼって年金を一括で受給することも可能
ところで、(2)・(3)・(4)のように今回受け取らず、繰下げする年金については、75歳になるまでに別途請求手続きが必要となります。
この場合、繰下げている年金を受け取る方法は、次の(a)または(b)の2種類あります。
(a) 66歳以降に増額した年金を受給する
(b) 65歳までさかのぼって受給していない年金を一括で受け取る ※1
(a)と(b)について、Мさんの希望を例に挙げてご説明しましょう。
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