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社会福祉法等一部改正案について衆院厚労委員会が審議を開始(5月13・15日)

地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」は衆議院厚生労働委員会において法案の趣旨説明が13日に行われ、15日から質疑が開始された。

法案には、高齢や障害福祉など分野を超えた支援を行うための、新たな「重層的支援体制整備事業」の導入が盛り込まれている。15日の質疑の中で、新たな事業の実施では、アウトリーチ支援を重視することや、事業開始後も各分野での取り組み状況を確認して、継続的に支援体制の改善を行うことなどが説明された。


新たな事業の導入は、市町村が地域の多様なニーズに対応するための「入り口」

桝屋敬悟議員(公明党)が、重層的支援体制整備事業による支援体制の構築について、加藤勝信厚生労働大臣に所見を尋ねた。

加藤厚労大臣は、新たな事業の実施では、これまで高齢や障害福祉など制度ごとの縦割りになっていた補助について一体的に執行できるように、交付金を導入することに触れ、市町村の事務負担が軽減されるなどのメリットを説明。

さらに、「各市町村が地域の多様なニーズに対応する創意を工夫した積極的な取り組みに入っていける入り口だと思っている。これをきっかけとして、法案が成立したら市町村や様々な人から運用を含めて意見を聞きながら、目指すべき方向に体制が強化されていくように引き続き、努力していきたい」と述べた。

桝屋議員は、属性を超えた支援を行う先駆的な取り組みを踏まえ、「在宅で動き回るソーシャルワーカーと巡回型のヘルパー」と、さらに場合によっては一時的に家族から隔離・保護して支援するような拠点の必要性を指摘した。

谷内繁社会・援護局長はまず、「地域からの孤立や課題の深刻化により自ら支援を求めることが難しい方々に対して在宅に出向いてアウトリーチを進めていくことは重要だ」と強調した。

そのうえで、新たな事業でも、▽個人又はその世帯への訪問による状況把握▽訪問により相談を行うこと▽課題を抱える個人や世帯への継続的な支援─を行い、「関係性を築いて自己肯定感の向上を図る」と説明。「アウトリーチ支援では、ヘルパーなど既存の関係機関と連携してチームで支援に当たることとしており、『在宅ソーシャルワーカー』の機能も担うことになる」とした。

続いて谷内局長は、居住支援等について、高齢や障害などの属性の異なる各分野で充実させてきたことを説明し、「既存の支援を十分に活用することが重要」と指摘。そのうえで、「地域においては属性を問わず一時的に住まいを確保し見守り等を行うケースもある。今回の新たな参加支援事業では、このような既存制度にないメニューも位置づけることも可能だ」と説明した。

事業開始後も各分野の支援状況を確認し、支援体制を改善

西村智奈美議員(立憲民主党)は、重層的支援体制整備事業の実施にあたり、高齢・障害・子育て支援・生活困窮の補助金等が束ねられて一体的な執行が行われることについて、影響力のある地域の関係団体により、「いわゆる声が大きい分野が有利にならないか」と懸念を示した。

加藤厚労大臣は、「関係者間の連携が深まって本当に真の意味での支援が行われることが非常に大事だ」と強調。さらに包括的な支援体制の構築に当たっての留意点を説明した。

「事業実施計画の策定を通じて各分野の関係機関や地域住民と丁寧な議論を行い、考え方を共有し意見を反映することに努力していただく。事業開始後も各分野の支援の実施状況を確認するとともに、地域住民や関係機関の議論を継続して支援体制を改善するプロセスを繰り返していただく。また新たな事業を実施する市町村においては関係者の共通理解の下、効果的かつ適切な支援を実施するため地域の関係機関また関係部局、関係する団体が体制構築に向けた十分なすり合わせ、調整を行っていただきたいと思う」

養成施設校ルートの国家試験義務化の施行は3度延期

介護福祉士養成施設卒業者への国家試験の義務付けについては、平成19年の社会福祉士及び介護福祉士法等一部改正法により、24年4月から施行される予定であったが、その後、延期され、29年度から経過措置付きで導入されてきた。

今回の法案では、令和3年度で期限がくる、介護福祉士養成施設卒業者への国家試験の義務付けの5年間の経過措置を、さらに5年間延長することが盛り込まれている。

こうした経緯を踏まえ、尾辻かな子議員(立憲民主党)は、国家試験の義務付けの延期の回数やその理由について質問した。

厚労省の辺見聡審議官は、「義務化の施行延期自体は3度実施され、経過措置の延長は、平成28年の法改正で経過措置が創設されて、本法案で初めて盛り込んだもの」と答えた。

これまでの経緯や理由は次のように説明した。

「養成施設校ルートの卒業者への国家試験の義務付けは、平成19年の社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律で規定され、平成24年に施行される予定であった。その後、平成23年と26年の2度の施行延期を経て、平成28年改正により義務化の施行の準備期間を確保する観点からさらに1年後の29年からとされ、5年間の経過措置付きで施行されている」

「それぞれの改正理由は、平成23年は喀痰吸引等にかかる新たな教育内容が養成施設のカリキュラム内容に追加されることを踏まえて延期した。平成26年は介護人材の確保が困難な状況を踏まえて延期した。平成28年は漸進的に国家試験を義務化することとし、平成29年から5年間の経過措置を設けることとした」

経過措置の延長は令和13年まで影響

こうした説明を踏まえ、尾辻議員は「今回なぜまた5年延長なのか」と尋ねた。

辺見審議官は、経過措置の延長について「介護現場での人手不足の深刻化」などの状況を「総合的に勘案」した結果であることを説明した。

「厚生労働省として、介護福祉士の養成施設校卒業者に国家試験合格を義務付けることで資質を向上させるという28年当時の法律改正の基本方針は堅持している。そのうえで平成28年当時と状況を比較すると、介護現場での人手不足はより深刻化するなか、養成施設の定員・入学生のいずれも減少し、養成施設においては外国人留学生の数が急増したものの、その後の国家試験合格率は低調している状況がある。
そうした状況の下、介護サービスや養成施設の関係団体からは『経過措置を延長すべき』との要望をいただいているが、その一方で介護福祉士会や福祉系高校の関係者などから『資質の向上のため予定どおり経過措置を終了させるべき』との要望もいただいている。
今般こうした状況を総合的に勘案して慎重に検討し、養成施設の教育の質を上げるための取り組みと合わせて介護福祉士が今後果たしていく役割や資格の在り方を検討することとしたうえで介護サービスの提供に支障がないように経過措置を5年間に限り延長することとした」

これまでの説明を踏まえ、尾辻議員は、「試験を不合格でも介護福祉士を名乗れる制度はあと何年続くか。なし崩し的に固定化されないか」と質した。 辺見審議官は、「経過措置を5年間延長するものであり、現時点でさらに延長することは考えていない。経過措置は令和8年度卒業の方まで影響が及ぶ。この方が卒業後5年間ということで令和13年までこの制度が影響する」と答えた。

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