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#2 第2回社会保障審議会年金部会の議論を巡って①

権丈 善一(けんじょう よしかず)
坂本 純一(さかもと じゅんいち)
司会:年金時代編集部

※この記事は、2018年8月10日に「Web年金時代」に掲載されたものです。

「ガルブレイスという経済学者は、現実とは違うんだけど、世間に人気のある考え方をconventional wisdom、『通念』と呼んでいたわけで、公的年金保険の世界は、通念が多くってね。少子化の影響を受けない積立方式にどうしてしないのか!とか、積立金の名目運用利回りの前提が高すぎる! 給付負担倍率に世代間の格差があるのはおかしい!なんかは、通念に支えられた年金批判の典型。でもこうした通念は、とにかく人気がある。何も考えないでぼーっと生きながら空を眺めていると、やっぱり天動説なんだと思うよ。地動説は、意識的に考えて初めて見えてくる世界。年金が政争の具として利用されたのは、年金の世界ではこうした通念と現実とのギャップが大きかったところにあるんだと思う。
でも、いま結構、このギャップを埋めるために年金周りの人たちも頑張っていて、第2回年金部会のときも、年金局が財政検証の意義・役割について説明したり、提出する資料も充実してきている。いまは、正確に、国民の共有財産としての公的年金保険制度を理解してもらえるように、何回も何回も事あるごとに話題にしていくことが大切なんだよね。
やっぱり、約1億2,700万人の人口というのはきつくって、1千万人弱のスウェーデンなんかと比べて、情報の伝達がおそろしく難しい。
共和制ローマ時代のグラックス兄弟のお母さんは、『食卓の話題』でも人は育つと言っていたけど、日本では、公的年金保険も、食卓で、そして居酒屋で談義されるくらいの話になって初めて、本当に理解してくれる人が増えていくんじゃないのかな。僕は学生と飲みに行ったら、だいたい自分の関心のある社会保障の話しかしていないんだけど、どうも悲しいことに、授業よりも居酒屋での会話、飲みながらの食卓での会話のほうが、彼らには浸み込んでいるようで・・・(涙)。
『年金時代』は、以前の雑誌と違って機動性を長所とする飛び道具なんだから、年金部会が開かれるたびに、提出された資料をつまみに、年金談義でもやって遊びながら、年金の情報を四方八方に波状攻撃的に発信していくってのは、おもしろくないか(笑)」(権丈善一さん)
というわけで、『年金時代』では、権丈さんの企画提案で、「居酒屋ねんきん談義」のコーナーを開設(開店!?)することといたしました。権丈さんと、年金部会、経済前提の専門委員会を毎回傍聴されている坂本純一さん、そして権丈さんがお誘いした方々との年金制度改正を巡る対談・鼎談・座談会等を掲載していきます。
さて、今回は第2回社会保障審議会年金部会の議論をテーマに権丈さんと坂本さんお二人の対談です。(2018年7月13日対談)

「解」は与えられているが実行は難しい。しかし改革を実施していくことが重要。

対談する坂本氏(左)と権丈氏(右)

権丈:いや、今回も、編集者も含めた3人の鼎談だよ(笑)。

編集部:恐縮です。坂本様との対談というかたちで結構です。

権丈: この前、僕と坂本さんが次期年金制度改正を巡って、『年金時代』で対談したところ、この『年金時代』のサイトへのアクセスが跳ね上がったようです。そこで、これを機会に、年金部会や経済前提の専門委員会が開催されるたびに、対談をしたらどうだろうかと編集部に提案しました。今回も前回に続いて、平成16年改正のときの年金局数理課長であった坂本さんの視点から、年金部会などの議論をどのようにご覧になられているかということを伺いながら、議論したいと思います。なお、『年金時代』での企画名は「居酒屋ねんきん談義」ということのようですが…。

編集部:まだ、そのようなネーミングにするかどうか決めかねています。

権丈:あっそう。じゃあ、これでいこう。坂本さんも、それでいいですよね。

坂本:毎度、発想がおもしろいですね(笑)。

権丈:まぁ、僕らは飲みに行ってもこんな話ばかりしているわけだから、日頃と代わり映えしないわけですけどね(笑)。でははじめましょうか。年金部会がこれまで2回、経済前提の専門委員会が6回開かれています。これらをご覧になられて、坂本さんは、どのように思われましたか。

坂本:年金部会については、社会保障制度改革国民会議が報告書を作成し、プログラム法(「持続可能な社会保障制度の確立を図るために講ずべき改革の推進に関する法律」)が制定されましたが、同法に沿って平成26年の財政検証でオプション試算とされた、①マクロ経済スライドの仕組みの見直し②被用者保険の更なる適用拡大③保険料拠出期間の延長と繰下げ受給の活用――の3つの検討課題については、いずれも将来世代が受ける年金の給付水準を高めることが、平成26年の財政検証結果でも示されています。
そこで、将来に向けて改革を進め、「チャンスの窓が閉まらないうちに」それらを完全実施していくことが、一つの方向だと思うのです。しかし、改革の「解」が与えられているのですが、それをどうやって実行していくかが、非常に難しいという思いで見ています。しかし、そうであってもこれらの改革を実施していくことが重要だと考えています。

坂本氏。

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