障害児入所施設でソーシャルワーカーの専任配置を報酬で評価することを提案(10月12日)
厚労省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームは12日、令和3年度報酬改定に向けて、⑴障害児入所施設⑵居宅介護⑶重度訪問介護⑷同行援護⑸行動援護⑹重度障害者等包括支援─に係る基準・報酬について議論した。厚労省が示した見直しの方向性について検討チームのアドバイザーは概ね賛同した。
基準・報酬の見直しの方向性について、障害児入所施設と居宅介護などの訪問系サービス等に分けて紹介する。
障害児入所施設について、厚労省はソーシャルワーカーの専任配置を報酬上、評価することを提案した。また福祉型施設で人員配置基準の見直しやサテライト型の導入を示した。医療型施設では小規模グループケアの促進の観点から、各ケア単位での台所・便所の設置を行わなくてもよいこととすることを提案した。
福祉型障害児施設でサテライト型の導入を提案
まず⑴障害児入所施設について、厚労省は2月に公表された「障害児入所施設の在り方に関する検討会」最終報告書(以下、検討会報告書)を踏まえて論点を示した。
障害児入所施設には福祉型と医療型の2類型がある。
福祉型施設の論点としては、①人員配置基準の見直し②小規模グループケア(サテライト型)③医療的ケア児の受け入れ体制─の3点をあげた。
①人員配置基準の見直しでは、旧施設区分により異なっているが、旧知的障害児入所施設の基本配置は1976年に4.3:1になって以降、見直されていない。
他方で検討会報告書では、被虐待児の増加に伴いケアニーズの高い入所児童に対して専門的なよりきめ細かい支援を行う観点や子どもとして適切な愛着形成を図る観点から、質・量ともに強化する必要があることを指摘。児童養護施設の人員基準を参考とし、人員配置基準を引き上げることが提案している。
これを受け厚労省は、主として知的障害児を入所させる施設(4.3:1)と、主として盲児又はろうあ児を入所させる施設(乳・幼児4:1、少年5:1)の現行の職員配置について、4:1に見直すとともに、合わせて基本報酬を引き上げることを提案した。
他方、特に幼児期においては愛着形成を図る重要な時期であるが、全国0~5歳の入所児童数が85人という実態も踏まえ、乳幼児を更に年齢別の配置基準とするよりも、加算で対応することとした。
②小規模グループケア(サテライト型)について、建物自体が本体施設から分離した場所(外部のアパート、法人所有の土地内の別建物等)で、小規模な生活単位を設けて支援した場合(サテライト型)の評価の検討を要請した。
検討会報告書で、▽児童福祉法で規定する「良好な家庭的環境」において養育されるようユニット化等によりケア単位の小規模化を推進すること▽単独設置が可能な「障害児グループホーム」(仮)を導入すること─が提言されたことを受けての対応。
③医療的ケア児の受け入れ体制では、看護職員配置加算(Ⅱ)の判定スコアについて、厚生労働科学研究で開発された医療的ケア児のための判定基準案を導入することを提案。さらに算定要件を見直すことも示した。
看護職員配置加算(Ⅱ)は平成30年度改定で新区分として導入されたが、算定事業所数はゼロ。同加算(Ⅱ)は一定の基準を満たす医療的ケア児を受け入れるための看護職員の加配を評価するもの。一定の基準とは、人員配置基準に加え、看護職員を1名以上配置し、判定スコアの合計が8点以上である利用者の数が5名以上としている。
算定要件の見直しでは、「判定スコアの合計が8点以上である利用者の数が5名以上」を変更することをあげた。
医療型施設での小規模グループケアの促進で一部要件を緩和
医療型施設については、①主に肢体不自由児を対象としている医療型障害児入所施設の報酬②強度行動障害児特別支援加算の適用範囲③小規模グループケア加算における要件等─を論点として提示した。
①主に肢体不自由児を対象としている医療型障害児入所施設の報酬について、厚労省は、「重度重複障害児加算」の算定要件を変更することを提案した。
現行で主に肢体不自由児を対象としている施設で、重度障害児支援加算の条件に該当し、かつ3種類以上の障害を有する肢体不自由児への支援を対象に重度重複障害児加算が算定できるが、複数(2以上)の障害をもつ肢体不自由児を支援した場合に評価できるようにすることとした。
主として肢体不自由児を支援する場合は1日につき174単位だが、主として重症心身障害児を対象に支援を行う場合は913単位と大きな格差が生じている。一方、主に肢体不自由児を対象としている施設でも支援の度合いが高い入所児童が増えており、大島分類による重症心身害周辺の児童が一定数いる。関係団体ヒアリングで報酬の見直しが求められた。
②については、現行では福祉型施設だけで算定が可能な「強度行動障害児特別支援加算」について、医療型施設でも算定を可能とすることを提案した。
福祉型施設だけでなく、医療型施設でも睡眠障害や自傷・他害、著しい多動など、常に見守りが必要な入所児童が一定数いることが検討会報告書で指摘されている。検討会報告書では、福祉的な支援の観点から、医療型施設で対応困難事例に対するさらなる支援を図ることを求めた。
③については、医療型施設での小規模グループケアの促進を図る観点から、ケアの各単位での台所・便所の設置は行わなくてもよいこととすることや、指定発達支援医療機関においても算定要件を満たした場合に当該加算を算定できるようにすることを提案した。
重度障害児支援加算の施設要件の見直しが要望される
福祉型・医療型の施設に共通する論点としては、①重度障害児の小規模グループケアの在り方と②ソーシャルワーカーの配置を示した。
①については、現在実施している令和2年度障害福祉サービス等報酬改定検証調査の障害児入所施設の支援の実態調査の結果を踏まえ、重度障害児入所棟の在り方を含め、重度障害児の小規模グループケアの在り方について今後、検討することを提案した。
提案の背景には、自治体からの要請がある。
障害児入所施設で算定している「重度障害児支援加算」は、①重度障害児専用棟の設置、②重度障害児入所棟の定員を概ね20人以上、③居室は1階に設けること─などを要件としている。しかし、この施設要件が小規模グループケア化を進める際の障壁となっているため、小規模グループケアに対応した重度障害児支援加算の施設要件となるように、「令和元年地方分権改革推進提案」で見直しが求められている。
②では、検討会報告書の提言を踏まえ、ソーシャルワーカーを専任配置した場合に報酬上、評価することを提案した。配置するソーシャルワーカーの要件も聞いた。アドバイザーからは、社会福祉士や精神保健福祉士を配置した場合に評価を求める意見が出された。
検討会報告書では、障害児入所施設において、▽里親やファミリーホームの施策の活用による家庭的な養育環境の推進の必要性▽入所児童が18歳になり退所して地域の障害者支援施設等に移行していくため、地域の様々な社会資源等と有機的に結び付けるなどのソーシャルワークの必要性─が指摘された。
現在、障害児入所施設における退所に向けた取り組みを報酬で評価するものとして、「自活訓練加算」や「地域移行加算」がある。
自活訓練加算は、訓練により自活が可能となると見込まれる障害児に対して、必要な訓練を行った場合、1人につき180日を限度に加算するもの(支給決定期間中、原則1回。さらに必要な場合は2回を限度とする)。同一敷地内に自活訓練の居室がある場合は1日につき377単位を算定できる(居室の確保が困難な場合は1日につき448単位)。
地域移行加算は、退所する障害児に対し、退所後の居住の場の確保や在宅サービスの利用調整等を行った場合に500単位を算定できる(入所中2回、退所後1回を限度とする)。
こうした評価を見直していくことが考えられる。