三宅社労士の年金実務セミナー|#21 2025年の年金制度改正について(前編)
2025年(令和7年)に予定されている年金制度の改正については、厚生労働省から7月3日に公表された5年ごとに行っている年金制度の財政検証結果をもとにして、社会保障審議会の年金部会で年末までに取りまとめられて、来年の通常国会に改正法案が提出される予定になっています。
そこで、何が改正の論点になっているのか、どのように変わるのか、議論の内容等について、主だった項目を現時点で分かっている範囲にはなりますが、説明させていただきます。かなりの分量になりますので、前編を今月、後編を来月に公開します。
なお、「基礎年金の保険料拠出期間延長」については、7月3日の年金部会で見送る旨が公表されましたが、マスコミ等を含めて話題になりましたので、議論の経過を説明します。ここまで話題として盛り上がったにもかかわらず、また将来の給付水準の確保の面からも、実施されないのは残念で仕方ありません。次の機会は5年後なので、今後の年金制度に禍根を残すことにならなければよいのですが…。
それから、一部私見も述べさせていただきますが、皆様もぜひ、考える材料にしていただけると幸いです。
1 令和6年財政検証の基本的枠組み、オプション試算について
(1)財政検証の基本的枠組み
最初に今回の財政検証の基本的な枠組みを確認しておきましょう。
≪社会・経済等の諸前提について≫
1.人口の前提
「日本の将来推計人口」(2023年4月、国立社会保障・人口問題研究所) 【低位・中位・高位】
2.労働力の前提
「労働力需給推計」(2024年3月、独立行政法人 労働政策研究・研修機構) 【成長実現・労働参加進展シナリオ、成長率ベースライン・労働参加漸進シナリオ、一人当たりゼロ成長・労働参加現状シナリオ】
3.経済の前提
経済・金融の外部専門家で構成する社会保障審議会年金部会のもとに設置した「年金財政における経済前提に関する専門委員会」で設定
⇒ 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2024年1月22日)や経済財政諮問会議で内閣府から示された2060年度までのマクロ経済・財政・社会保障の試算(2024年4月2日)を参考にしつつ、長期的な経済状況を見通す上で重要な全要素生産性(TFP)上昇率を軸とした幅広い複数ケース 【①成長実現ケース、②長期安定ケース、③現状投影ケース、④1人当たりゼロ成長ケース】
≪制度改正の検討のためのオプション試算について≫
1.2019年財政検証では、法律で要請されている現行制度に基づく「財政の現況及び見通し」に加えて、年金部会での議論等を踏まえたうえで、一定の制度改正を仮定したオプション試算を実施
2.「社会保障審議会年金部会における議論の整理」(2019年12月27日)においては、今後の年金制度改革でもオプション試算を踏まえたうえで議論を進めていくべきとされており、2024年財政検証でもオプション試算を行う
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