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勤続10年以上の介護福祉士で2万円超の賃金改善(10月30日)

厚労省は10月30日、令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果を公表した。

昨年10月に創設した介護職員等特定処遇改善加算を算定している事業所において、勤続10年以上の介護福祉士(月給・常勤)の平均給与額を平成31年2月と令和2年2月で比較すると、2万740円増加していたことが分かった。加算を取得している事業所の介護職員では1万8120円増加した。

同加算の目的は、経験・技能のある介護職員に重点化しつつ介護職員の処遇改善を進めることであり、一定程度の効果が確認された。

調査結果は、同日相次いで開催された社会保障審議会介護給付費分科会の介護事業経営調査委員会(委員長=田中滋分科会長)や分科会に報告されたもの。

経験・技能のある介護職員に重点化した処遇改善を実施

令和2年度調査では昨年10月に創設した特定処遇改善加算の影響や、従来の介護職員処遇改善加算の取得状況、調査対象事業所に在籍する介護従事者等の今年2月における給与などを把握した。調査対象は、介護保険施設や訪問介護、通所介護、通所リハビリテーション、特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護など10サービス。1万1323事業所を調査客体とし有効回答は7346事業所(有効回答率64.9%)。

特定処遇改善加算は、勤続年数10年以上の介護福祉士など経験・技能のある介護職員に重点化しつつ介護職員の更なる処遇改善を進めるために導入された。リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を実現するため、経験・技能のある介護職員において「月額8万円」の賃金改善、又は全産業平均賃金水準(役職者を除く。年収440万円)を設定・確保することとした。

他方で、一定の柔軟な運用を認め、介護職以外の職種の処遇改善も可能とした。具体的に、平均処遇改善額について、経験・技能のある介護職員は、その他の介護職員の2倍以上とする。他方、その他の職種は、その他の介護職員の2分の1を上回らないこととされた。「その他の職種」では、全産業平均賃金水準以上の者は対象外とされた。

特定処遇改善加算の算定は、従前の介護職員処遇改善加算の(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していることが前提。さらに処遇改善加算の職場環境等要件に関して複数の取り組みを行っていることや、処遇改善加算に基づく取り組みについてホームページへの掲載などで「見える化」していることが要件である。

加算率は、加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の2段階。サービス提供体制強化加算(最も高い区分)や特定事業所加算(従事者要件のある区分)、日常生活継続支援加算、入居継続支援加算のいずれかを取得している場合は加算(Ⅰ)を算定できる。それ以外は加算(Ⅱ)となる。算定率はサービスにより異なる。たとえば訪問介護では加算(Ⅰ)6.3%、加算(Ⅱ)4.2%。特養ではそれぞれ2.7%、2.3%など。なお訪問看護や居宅介護支援など一部のサービスは、加算の対象外となっている。

加算届出をしている事業所の介護職員の賃金は1万8120円増加

特定処遇改善加算の取得状況は、令和元年度に届出を出しているのは63.3%。このうち加算(Ⅰ)は34.7%、加算(Ⅱ)は28.6%となっている。

特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得した事業所の介護職員(月給・常勤)の平均給与額を平成31年2月と令和2年2月を比較すると、1万8120円増加した。

同様に介護福祉士全体では1万8390円増加。さらに勤続10年以上の介護福祉士の平均給与額は2万740円増加しており、勤続1~4年(1万9360円増)や勤続5~9年(1万6850円増)よりも高かった。また平成30年度の調査における勤続10年以上の賃金改善は8640円であり、その2倍以上になった。こうしたことから厚労省は、「所与の目的を果たしているのではないか」と評価した。

ちなみに増額分には、介護職員処遇改善加算の取得が進んでいる影響も含まれている。処遇改善加算の取得は、30年度調査と今回の調査を比べると、加算全体では2.4ポイント上昇し93.5%になっている。特に加算(Ⅰ)の取得が進み、6.3ポイント上昇し75.6%になっている。

賃金引き上げの実施方法は、「手当の引き上げ・新設」が54.0%で最も多い。次いで「定期昇給を実施」が51.4%など(いずれも複数回答。それぞれ予定を含む)。

経験・技能のある介護職員の賃金改善の状況では、「既に賃金が年額440万円以上となっている者がいる」が41.5%、「改善後の賃金が年額440万円以上となる賃金改善を実施」が38.6%。一方、「月額平均8万円以上の賃金改善を実施」は10.3%にとどまった。またいずれの取り組みもできなかったという回答も33.5%と3割を超えた。

特定処遇改善加算は、その他の職種にも配分が可能だ。配分された職種の内訳をみると(複数回答)、最も多かったのは生活相談員・支援相談員であり、69.1%。次いで看護職員65.3%、事務職員64.4%、介護支援専門員47.1%などとなっている。

特定処遇改善加算の届出を行わない理由としては、「職種間の賃金バランスがとれなくなることが懸念」38.8%、「賃金改善の仕組みを設けるための事務作業が煩雑」38.2%など、職種間・職員間の賃金バランスがとれなくなることを懸念したり、事務作業の負担感から、算定が進んでいないことが分かる。

なお介護給付費等実態統計の特別集計によると、特定処遇改善加算の算定率は徐々に上昇。4月には64.3%になっている。  

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