新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針を決定(3月28日)
政府は28日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を決定した。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑えオーバーシュート(爆発的な感染拡大)の防止を強調する一方、オーバーシュートを見据えた医療提供体制の確保などを指示。
また厚労省は、感染症病床等の利用状況について一元的かつ即座に把握することを可能とする仕組みの構築を進めるとしている。
感染経路の不明な患者やクラスターの発生の封じ込めの重要性を強調
基本的対処方針は、同法を踏まえて設置された、基本的対処方針等諮問委員会(尾身茂会長)による同27日の検討を経て、政府の新型ウイルス感染症対策本部(本部長=安倍晋三総理大臣)で決定された。
政府対策本部は同26日に、加藤勝信厚生労働大臣から「新型コロナウイルス感染症のまん延のおそれが高い」ことが安倍総理に報告され、同法に基づくものとして改めて位置付けられたもの。
基本的対処方針ではまず、これまで新型コロナウイルス感染症への対策として、「水際対策やまん延防止、医療の提供等について総力を挙げて講じてきた」と紹介。一方、感染経路の不明な患者が増加している地域が発生しているが、「引き続き、持ちこたえている」としつつ、「爆発的な感染拡大を伴う大規模な流行につながりかねない状況」と危機感を表明。感染経路の不明な患者やクラスター(患者間の関連が認められた集団)の発生を封じ込めることが、オーバーシュートの発生を防止し、感染者や重症者、死亡者の発生を最小限に食い止めるために重要と強調した。
その上で(1)新型コロナウイルス感染症発生の状況に関する事実(2)新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針(3)新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する重要事項─を提示した。このうち(2)全般的な方針としては次のように示している。
情報提供・共有及びまん延防止策により、各地域においてクラスター等の封じ込め及び接触機会の低減を図り、感染拡大の速度を抑制する。
サーベイランス・情報収集及び適切な医療の提供により、高齢者等を守り、重症者及び死亡者の発生を最小限に食い止めるべく万全を尽くす。
的確なまん延防止策及び経済・雇用対策により、社会・経済機能への影響を最小限にとどめる。
対策は、感染者の増加に伴い不可逆的に進むものではなく、例えば、地域で感染者が確認された早期の段階で、クラスター等の封じ込め及び接触機会の低減が奏功し、当該地域での感染者の発生が抑制された場合には、強化した対策を適宜適切に元に戻す。
オーバーシュートを見据えた医療提供体制の確保も指示
(3)対策の実施に関する重要事項では、①情報提供・共有②サーベイランス・情報収集③まん延防止④医療⑤経済・雇用対策⑥その他重要な留意事項─の6項目を挙げた。
このうち②サーベイランス・情報収集については、厚労省は従来の感染症法に基づく医師の届出とは別に、国内の流行状況等を把握するため、既存のサーベイランスの効果的な利用やさらに有効なサーベイランスの仕組みを構築するとしている。
③まん延防止については、政府はクラスター対策にあたる専門家の確保及び育成を行うとしている。クラスター対策の抜本強化の観点から、政府及び地方公共団体は「保健所の体制強化に迅速に取り組む」と明記。都道府県は、管内市町村との迅速な情報共有を行うとともに、対策を的確かつ迅速に実施するために必要がある場合は総合調整を行うとしている。さらにクラスターの発見に資するよう、都道府県間の迅速な情報共有に努めるとしている。必要があるときは政府が総合調整を行うとしている。
④医療について、厚労省は地方公共団体や関係機関と協力して感染拡大の状況に応じて医療提供体制を確保するとしている。オーバーシュートや今後の感染者の大幅な増加を見据えて、次のように進めることを例示した。
新型コロナウイルス感染症の患者を優先的に受け入れる医療機関の指定など、地域の医療機関の役割分担を行うとともに、結核病床や一般の医療機関の一般病床等の活用も検討し、ピーク時の入院患者を受け入れるために必要な病床を確保する。
専門性を有する医療従事者や人工呼吸器等の必要な医療機器・物資等を迅速に確保し、適切な感染対策の下での医療提供体制を確保する。
医療機関は、業務継続計画(BCP)も踏まえ、必要に応じて医師の判断により延期が可能と考えられる予定手術や予定入院の延期を検討する。
地域の診療所など一般の医療機関に勤務している医療従事者の派遣を検討する。
重症化しやすい方が来院する、がんセンターや透析医療機関、産科医療機関などは、必要に応じ、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる方への外来診療を原則として行わない医療機関として設定する。
地域でのオーバーシュートに備え、都道府県域を越える場合も含めた広域的な患者の受け入れ体制を確保する。
また、厚労省は関係省庁と協力して、オーバーシュートの発生に備えて、感染症病床等の利用状況について一元的かつ即座に把握することを可能とする仕組みの構築を進めるとしている。
⑥その他では、緊急事態宣言の要件に該当するか否かの判断に言及。具体的に、海外での感染者の発生状況とともに、感染経路の不明な患者やクラスターの発生状況等の国内での感染拡大の状況を踏まえて、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるか否かについて、政府対策本部長(安倍総理大臣)が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分に踏まえた上で総合的に判断するとしている。