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#27|障害者特例の請求

年金時代編集部


 障害になった場合の社会保障は障害年金がメインとなりますが、前回の事例でも取り上げた「障害者特例」も、重要な役割を担います。

 おさらいがてら、障害者特例について、確認しておきますと、

① 障害等級3級以上の障害状態であること
② 厚生年金に加入していないこと
③ 特別支給の老齢厚生年金(以下「特老厚」という。)の受給資格があり支給開始年齢を迎えていること

 以上の条件を満たせば、本来なら報酬比例部分しか支給されない特老厚に、定額部分(生計維持関係にある配偶者や子がいれば、加給年金も同時に)が支給される制度です。

 障害等級が3級で認定された場合は、定額部分や加給年金が加算される障害者特例のほうが有利になることも多いので、特老厚を受給している人からの障害年金請求では、この障害者特例の請求も併せて考えなければなりません。

 基本的には、障害年金と障害者特例、両方請求してどちらの金額が有利かを選択するという流れになりますが、中には障害年金の請求はしないで、障害者特例のみ請求するという人もいます。
 例えば、人工関節を挿入したが、その初診日が国民年金加入中である場合、障害等級3級にしか認定されないだろうということを見込んで、障害基礎年金の請求はせず、障害者特例のみ請求するというようなケースが挙げられるでしょう。その理由はいろいろです。

 今回は、障害年金請求はしないで、障害者特例のみ請求する事例を取り上げたいと思います。

 少々病歴の期間が長いため、下の図1により整理してみましょう。

1.初診日の特定

 図1からも分かるように、断続的にかなり多くの医療機関に通院しています。また、診断されている病名も異なっている医療機関もありますので、それぞれの医療機関で診断された傷病との相当因果関係から確認しましょう。
 まず、「発達障害」を細分化したものが「広汎性発達障害」ですので、これは一つの傷病として考えます。問題は、最初のA心療クリニックで診断された「適応障害」と「発達障害」との相当因果関係となります。「適応障害」を終診してから相当期間(およそ10年程度)、精神科に通院せず普通に就業して暮らしていたら、この適応障害は寛解したものとみなし、相当因果関係なしと扱われることもあります。
 しかし、今回は「適応障害」と診断されたA心療クリニックから約6年後にBクリニックを受診しています。またこの間、就職した会社も短期間で退職していますし、とても安定した暮らし振りではないことから、「適応障害」が寛解したとは言えません。むしろ、A心療クリニック時点で発達障害であったと考えるのが自然です。A心療クリニックの初見としては「適応障害」と診断されたが、その後継続してしっかり受診していれば「発達障害」であると診断された可能性は、その後の病歴を見ると極めて高いです。
 ゆえに、「適応障害」と「発達障害」は相当因果関係ありとして、A心療クリニックの「平成2年6月頃」を初診日と特定します。具体的な日付はA心療クリニックの受診状況等証明書(以下「受証」という。)で確認することとなりますが、平成2年6月は国民年金加入中となりますので、障害基礎年金の請求になります。
 しかし、ここで2つの大きな問題が発生します。それは、初診日がかなり昔のため受証が取得できない可能性が高いこと。さらには、平成2年6月時点では、未納が多く、障害年金の納付要件である3分の2要件や直近1年要件を満たさないということです。

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