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老健施設の利用率低下や6割が赤字など厳しい実態を報告(2023年7月11日)

東京都医師会の平川博之副会長は7月11日の会見で、老人保健施設の現状について報告した。全国老人保健施設協会(全老健)の調査結果を踏まえ、施設利用率の低下や赤字施設が6割を占めるなどの経営実態を示した上で、「超高齢社会がいよいよ本番になるにも関わらず、現状維持さえ厳しい状況である」と訴えた。平川副会長は全老健の副会長も務めている。

全老健が5月31日~6月15日に実施した老健施設の入所者の状況調査の結果(1122施設)をみると、稼働率は全体平均で86.2%となった。施設類型別では超強化型86.1%、在宅強化型85.5%、加算型86.5%、基本型86.8%、その他型81.2%、療養型老健80.8%となっている。

平川副会長は「これまでの経営実態調査をみても稼働率は94%を超えていないと維持できない。95%を超えないと新しい施設整備や投資ができない。非常に厳しい状況だ。原因はつかみ切れていないが、利用控えの傾向が続いている」と述べた。

老健施設の経営状況をみると、黒字施設は40.9%、赤字施設は59.1%で6割が赤字となった。施設類型別の赤字施設の割合は超強化型53.7%、在宅強化型57.3%、加算型63.6%、基本型61.5%、その他型66.7%、療養型老健77.8%となっている。

赤字の第一要因には、全体の57.7%が稼働率としており、次いで15.3%が人件費をあげている。

介護職の業界以外への離職者数は26.8%増に

一方、介護現場における人材の流出の状況について、全老健と老人福祉施設協議会・日本認知症グループホーム協会の3団体で実施した調査結果(1433施設)を発表した。

離職者数をみると、令和4年度は正社員で前年度比7.6%増、短時間労働者を含む全体では前年度比5.2%増となった。

医療・介護業界以外への離職者数(正社員)をみると、正社員全体で前年度比28.6%、介護職では26.3%増と高い伸びとなっている。

令和5年度の介護現場における賃上げ率の調査結果をみると、「賃上げの実施なし」7.4%、「ベースアップなし(定期昇給のみ実施)」59.2%、「ベースアップあり(含む定期昇給)」33.5%と3分の1の施設がベースアップを実施した。

令和5年度の介護現場の職員の賃上げの状況は、23万6292円(介護分野の職員(役職員除く、手当なし)に対して賃上げ率1.42%、ベースアップ分だけでは0.54%となった。春闘における賃上げ率は3.69%であることから、平川副会長は「他の一般の業種に比べると、まったく勝負にならない。やはりこの業界は先がないと思う人もいるかもしれない」と述べた。

また、政府の賃金構造基本統計調査の職種別平均賃金(役職者除く、月収換算)について説明。平成24年は全産業平均35.0万円に対し介護分野の職員平均25.5万円と10万円の差があったが、令和4年は36.1万円に対し29.3万円の6.8万円の差となっている。

平川副会長は「10年前は全産業の平均賃金とは10万円の差があり、処遇改善交付金などの施策によって賃金は上がってはきたものの、現状でも7万円近い差がある。これは非常に厳しい数字だと理解している。この差がどう埋まるかは我々の死活問題である」と述べた。

介護老人保健施設の現状を報告する東京都医師会の平川博之副会長=7月11日

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