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#3 第3回年金部会・第6回経済前提専門委員会の議論を巡って③

権丈 善一(けんじょう よしかず) 
坂本 純一(さかもと じゅんいち)
玉木 伸介(たまき のぶすけ)
司会:年金時代編集部

※この記事は、2018年10月30日に「Web年金時代」に掲載されたものです。

年金局はいい資料を年金部会に提供している

権丈:平成31年の財政検証および経済前提を巡る認識ということでは、状況はかなり改善されてきているという手ごたえを感じています。賦課方式である公的年金保険の機能や役割、そして実質的な運用利回りであるスプレッドの重要性など、これまで、僕もずっといろいろな機会で言い続けてきました(社会保障への不勉強が生み出す「誤報」の正体――名目値で見ても社会保障の将来はわからない『東洋経済オンライン』2018年7月25日)。

第3回年金部会に年金局は、「諸外国の年金制度の動向について」と「年金額の改定ルールとマクロ経済スライドについて」という、ものすごく付加価値の高い資料を、たぶん相当時間をかけながら制作してくれています。この2つの資料に関連して、ご意見はありますか。

坂本:「諸外国の年金制度の動向について」という資料にある「諸外国の年金制度の動向~総論~」(図表1参照)では、年金制度に対して「給付の十分性」と「制度の持続可能性」という2つを同時に実現しなければならないという、いわゆる「公的年金論議のパラドックス」のジレンマから抜け出す解決策として、①就労期間の長期化②公的年金の支給努力の対象を最も脆弱な人々におく③公的年金給付の削減を補完する私的年金等の奨励――の3つを挙げているんですが、資料としてよくまとまっていると思います。「給付の十分性」と「制度の持続可能性」を対比させたことは、問題の中心を端的に表していて、課題へのアプローチの仕方がよく示されていると思います。さらに注文をつけるとしますと、そのなかで私的年金については、公的年金制度に対する補完性をテーマにされていましたが、もう少し踏み込んだかたちでの問題設定をしてもよかったのではないかとも思いました。

公的年金を補完する私的年金については、私は次のように考えています。まず、人の一生を考えると、生涯の所得が高かった人、中間的な人、低い人、低くてかつ生活保護に頼らざるを得なかった人というふうに分けるとしますと、生活保護に頼らざるを得ない人というのは、公的年金ではなく社会扶助の別の制度を利用することになります。また、他のすべての人は社会保険の枠内となりますが、生涯所得が低かった人、中間的な人、高かった人について考えてみると、低かった人というのは大部分が自分の貯蓄も私的年金もない人です。したがって、こうした人は公的年金がその人の老後の生活を保障しなければいけませんし、その人たちについては従前所得の100%に近い給付を公的年金が支給する必要があると思います。その場合には、所得再分配が必要となりますので、中間的な人あるいは高かった人から低い人に所得移転されるような給付設計が必要となります。現在も厚生年金と基礎年金を通して、このような所得再分配が実現していますが、この考え方は、基礎年金の給付水準を規定することにもなります。そうすると、中間的な人と高かった人は、自分たちの所得代替率が減ることになりますから、それを自助努力、もしくは職域の努力で引き上げようとする努力が必要となるので、それが私的年金、企業年金、個人年金ということになります。そうした自助努力に対しては、所得再分配への貢献とその自助努力に対して、税制上の優遇措置を与える。こういう枠組みの中で私的年金制度の役割を位置づけたらいいのではないかと思います。

また②の「公的年金の支給努力の対象を最も脆弱な人々におく」についても、民主党のときの悪夢がありますので、「最も脆弱な人々におく」は「最も脆弱な中間層におく」とすべきではないかと思います。

図表1●諸外国の年金制度の動向~総論~

出所:第3回社会保障審議会年金部会2018年7月30日
資料1 「諸外国の年金制度の動向について厚生労働省年金局 2018年7月30日」2頁。

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