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「高齢者の保険料で資産を考慮するのは時期尚早」医療保険部会(10月28日)

社会保障審議会医療保険部会は10月28日、医療保険制度において高齢者の「所得」だけでなく「資産」の保有状況に応じた負担を求めるのは時期尚早との考えで一致した。

政府は新経済・財政再生計画の改革工程表2019で、高齢者医療制度の負担について、「所得」のみではなく「資産」の保有状況を適切に評価し、高齢者に能力に応じた負担を求めることを検討する方針を示してきた。

これについて厚労省は医療保険部会に、医療保険制度の負担の議論において資産を考慮するのは時期尚早との見解を示し、概ね賛同を得た。厚労省は、預金口座へのマイナンバー付番の状況を見つつ、引き続き検討するとした。

導入見送りの理由として、現状ではまだ全ての預貯金口座にマイナンバーの付番がなされているわけではなく、資産を把握するには保険者に事務負担が生じてしまうことをあげた。 さらに、医療保険に資産の保有状況等を反映するための理論が整理されていないこともあげた。

遠藤部会長は、金融資産の保有状況を考慮することについて、①資産を把捉できるか②理論づけができるか③どのような制度で資産を考慮すべきか―の3つを同時に議論していく必要があると解説した。

とくに②の理論づけについて、高齢者は現在の所得が少ないものの、資産を持つ人が多いから、その分、多く負担をしてもらうという考え方は、「アリを非常に低く評価して、キリギリスを高く評価する考え方にもみえる」と述べ、慎重な議論が求められることを示唆した。

さらに③について、現在は介護保険制度の補足給付において資産の保有状況が勘案されているが、介護保険の保険料負担においては資産を考慮していないことに触れ、「福祉的な意味合いのある制度の部分でのみ資産を考慮している。概念論だけを議論するのではなく、資産という視点をどの制度に入れるのがよいのかを議論しなければいけない」と指摘した。

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