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令和元年度の介護サービスの収支率は前年度から0.7ポイント低下し2.4%(10月30日)

厚労省は10月30日、令和2年度介護事業経営実態調査結果(実態調査)を公表した。

同日相次いで開催された、社会保障審議会介護給付費分科会の介護事業経営調査委員会(委員長=田中滋分科会長)や、分科会に報告された。令和元年度の決算に基づく介護サービス全体の収支差率(税引き前)は平成30年度から0.7ポイント低下し2.4%になったことが分かった。収支差率の低下について厚労省は、人材確保難から人件費が増加している影響と分析している。

実態調査と合わせて、令和2年度介護従事者処遇状況等調査及び、参考として新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査等も示された。

介護人材の確保から収支差率が低下

実態調査は、介護サービス事業所・施設の経営状況を把握し、次期介護報酬改定等に必要な基礎資料を得るためのもの。改定後3年目の5月に実施され、改定後2年目の決算を調査する。

今回は令和元年度の決算に基づき、収支状況や職員配置・給与などを把握した。全介護サービスを対象とし、サービスごとに層化無作為抽出法により、1分の1~20分の1で抽出。今回は23サービスの3万1773事業所を対象として有効回答は1万4376事業所(有効回答率45.2%)。

なお改定後2年目の5月には改定前後のデータを把握する概況調査も実施する。

平成30年度介護報酬改定は0.54%のプラス改定であった。さらに昨年10月には消費税率が10%に引き上がったことに合わせ、税率引き上げへの対応や介護人材の処遇改善のために2.13%の改定も臨時的に実施された。処遇改善では介護職員等特定処遇改善加算が新たに導入された(改定率は1.67%)。

実態調査によると、全サービス平均の収支差率は2.4%(税引き前。以下同)。各サービスの状況をみると、17サービスで前年度より下がった。プラスは訪問看護など5サービスに止まった。訪問介護では1.9ポイント低下し2.6%になった。また収支差率がマイナスになったのは居宅介護支援のみであり、前年度から1.5ポイント低下し▲1.6%になった。居宅介護支援は制度発足以降、マイナスが続いている。

他方、30年度改定で導入された介護医療院の収支差率は5.2%(集計数が少なく参考値)と、介護老人福祉施設(特養)の1.6%や介護老人保健施設の2.4%などと比べて高かった。

収支差率の低下の要因について厚労省は、介護人材の確保が課題となる中、人件費が増加していることを指摘。収入に対する給与費割合は全サービス平均で0.4ポイント上昇し64.5%になっている。上昇が最も大きかったのは夜間対応型訪問介護で6.1ポイント上昇し82.8%になった。給与費割合が最も大きいのは居宅介護支援で0.2ポイント上昇し83.6%になっている。

また介護現場では人材紹介会社等の利用も増えており、厚労省はその影響も指摘する。費用は委託費に含まれる。収入に対する委託費の割合をみると、たとえば訪問介護では、30年度決算と比べて0.8ポイント上昇し1.7%になっている。

厚労省からの報告を受け、介護事業経営調査委員会では、実態調査の有効回答率を高める方策の検討を求める意見が出た。今回の実態調査の有効回答率は45.2%で、昨年12月に公表された概況調査よりも3ポイント低くなった。

他方で、今回のコロナ禍の中での回答への協力に謝意を述べる声も上がった。

またコロナによる収支差への影響は年度末だけで限定的との指摘や、給与費割合の増加から特定処遇改善加算による影響も指摘された。

続いて開かれた分科会でも、有効回答率の低さを問題視し、調査を依頼された事業所・施設に回答を義務化することが提案され、田中滋分科会長が「私も同感だ」と賛同した。

また収支差率の低下やコロナの影響を踏まえ、「プラス改定」や「適正な報酬の見直し」を求める声が上がった。

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