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障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 令和6年度改定に向けて調査項目を了承(2023年3月28日)

厚労省の障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(主査:畦元将吾厚生労働大臣政務官)は3月28日、令和6年度改定に向けて、サービス事業者の経営に関する調査の結果や進捗状況について報告を受けた。
調査は、①令和4年障害福祉サービス等経営概況調査②令和5年障害福祉サービス等経営実態調査③障害福祉サービス等報酬改定検証調査の3種類。サービスごとの利益の状況を示す「収支差率」が公表されるとともに、今後の調査における新たな調査項目が示され、検討チームはおおむね了承した。調査結果はいずれも次期報酬改定の基礎資料となる。

障害福祉サービス等報酬改定検討チームの開催は昨年5月以来。障害者総合支援法と児童福祉法にもとづき市町村が事業者に給付する「障害福祉サービス等報酬」は令和6年4月に大幅な改定が見込まれており、診療報酬、介護報酬とのいわゆるトリプル改定の一角をなす。
3年前の流れに従えばチームは今後、関係各団体からのヒアリングや各サービスの個別検討を行い、来年春には具体的な報酬(単位数)を示すこととなる。

3年度の収支差率を報告

「令和4年障害福祉サービス等経営概況調査」は、障害福祉サービス施設・事業所に調査票を郵送し、令和2・3年度の決算を調査したもの。前回の令和3年度報酬改定が経営に与えた影響を把握することを主な目的とする。調査は令和4年秋に実施し、オンラインでの回答を可能とした。
全体の回答率は50%と、前回調査(約44%)を上回った。各サービスの収支差率については、すべてのサービス平均を見ると令和2年度は4.8%、3年度は5.1%だった(図1)。

図1 令和4年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要(収支差率)

3年度においては、収支差率がマイナスのサービスは無かった。また、新型コロナウイルス感染症の経営への影響が報告された。

障害福祉サービス事業所に対しては現在、消毒や清掃、残業等に要する費用のかかりまし経費に対し、国と都道府県からの補助が行われている。この「コロナ補助金」が収支差率に与える影響を見ると、すべてのサービスにおいてその差は0.1ポイント程度であり、補助金が収支差に与える影響は大きくないことが示された。

ただし、検討チームのメンバーからは、コロナの影響は必ずしも決算数字に表れないという指摘があった。

実態調査に項目を追加

直近の収支状況を把握すること等を目的とする「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査」は令和5年6月に実施する。令和4年度の決算情報を調べ、同年秋頃に結果を公表する。

調査票について、事務局は今回から追加する調査項目(図表2)を説明した。例えば今回の調査より、施設長や管理者、サービス提供責任者等の職種ごとの給与の状況を把握するための項目を追加する。追加の趣旨は、医療保険(医療経済実態調査)や介護保険(介護事業経営実態調査)における同様の調査の項目に寄せたものとしている。

図表2 令和5年障害福祉サービス等経営実態調査における前回(令和2年)調査からの変更点

1. 職員給与に関する項目の追加
 医療経済実態調査及び介護事業経営実態調査と同様に、職種ごとの給与の状況を把握するため、職員給与の項目を設けることとする。
2. 各種補助金収入に関する項目の追加
 「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」、「新型コロナウイルス感染症関連の補助金」及び「物価高騰対策関連の補助金」の各収入による決算額に関する影響を適切に分析できるよう、事業活動収益(収入)等の内訳として項目を追加。
3. 繰入金収益(費用)に関する項目の追加
 法人本部からの繰入金収益(繰入金費用)の実態を把握するため、特別収益(特別費用)の内訳として項目を追加。
4. 新型コロナウイルス感染症の影響に関する項目の追加
 新型コロナウイルス感染症による令和4年度の障害福祉サービス等施設・事業所の決算額に関する影響を適切に分析ができるよう、感染の状況及び事業運営における影響の有無について項目を追加。
5. 運営法人の状況に関する項目の追加
 運営法人の事業活動収益の総額を把握し、法人の規模別での収支差を分析できるよう項目を追加。

処遇改善様式を簡素化

「障害福祉サービス等報酬改定検証調査(令和4年度調査)」では、検討チームにおいて検討が必要とされた事項や改定の効果検証に必要な事項に関する7本の調査を実施している。例えば「生活介護における支援に関する調査」では、障害福祉サービスのなかでも1月当たり約30万人と利用者数が多い生活介護について利用者像や支援内容等の実態を把握する。

同日は6年度同時改定に向けた中医協や介護給付費分科会との合同意見交換会の予定のほか、サービス事業所が処遇改善加算を算定するために提出が必要な計画書について、事業所の軽減負担のために簡素化が行われている旨が報告された。
検討チームのメンバーからは今回の事務の効率化を評価する声があがり、今後も積極的に書類の簡素化を進めていくよう要望があった。

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