#2 第2回社会保障審議会年金部会の議論を巡って②
財政検証のときに年金部会には全体の世論を引っ張っていくかたちで、制度改正の議論をしてほしい
権丈:年金部会の議論では、第1回でこれからの検討の方向性を議論しましたが、第2回では、財政検証の意義と役割がテーマになりました。そこで、平成16年改正において、財政検証の仕組みを組み入れた坂本さんから、この「財政検証の意義・役割」を議論するにあたってのポイントや気を付けてもらいたいこと、あるいはこういうふうに考えたらどうだろうかというようなアドバイスをお願いできますか。
坂本:一番基本的な部分としては、財政検証は、それ以前までは財政再計算という仕組みだったのですが、財政再計算では向こう5年間、つまり次の財政再計算までの保険料率を決めなければならないので、そこには必ず法律改正が伴い、したがってそのときに制度の見直しを行うことになっていました。ある意味で非常にいい「規律」ができあがっていました。それが財政検証となり、その規律がちょっと緩められてしまったという印象を持ちます。その間にも、先ほど申し上げた「抜本改革」などの議論が入ってきて、制度の見直しの検討がかなり遅れてしまいました。しかし、これからはやはり財政検証は制度の見直しをいっしょにやっていく節目であるという認識を持って、委員のみなさんも年金部会でのご議論に臨んでおられるものと思います。ところが、財政検証に制度改正が伴うのか伴わないのかというところでは、平成16年改正以降ちょっとグレーになっていたのではないかと思いますので、そこはむしろ年金部会の委員の方々が全体の世論を引っ張っていくようなかたちで、制度改正の議論をしていただければと思います。この意味で悪い例はアメリカです。アメリカは毎年財政検証を行い、財政が不均衡であることが報告されるのですが、実際の対策が本格的に議論されないのが現状です。今年歳入が歳出を下回り、積立金の取り崩しが始まり、2030年代の初めに積立金が枯渇する見通しになっています。もし積立金が枯渇した場合には、保険料の範囲でしか給付はできなくなり、給付を急激に切り下げないといけない事態になります。その場合は3割以上給付の削減が必要という見通しになっています。我々としましては、規律を保持して、制度の定期的見直しと対策の実施を行っていくことを続けることが肝心だと思います。
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