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#31 高収入の夫に扶養される妻は、長男死亡による遺族厚生年金を受給できるか

石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー

今回は、会社勤務の長男が転勤先で死亡し、その母親が遺族厚生年金を請求したケースです。父親は会社役員で年収が1300万円あり、母親と同居しています。母親は当然、父親の被扶養者であり、同時に転勤先の長男との生計維持関係が認められるかどうかがポイントとなります。


【事例概要】
死亡者 A介さん(昭和57年3月10日生まれ:41歳・会社員)
・B子さん、C雄さん夫婦の長男で、同夫婦と同居
・配偶者と子はいない
・Y県に転勤後、いったん両親宅に戻り、再度、Z県に転勤
・令和5年10月3日に転勤先で死亡(厚生年金保険の被保険者期間中)
 
請求者 B子さん(昭和34年6月8日生まれ:64歳・専業主婦)
・昭和55年6月10日にC雄さんと婚姻
・C雄さんとの間に長男A介さんを授かる
・C雄さんは会社役員で年収1300万円
・令和5年11月8日に年金事務所を来所

厚生年金保険の被保険者であった息子のA介さんが死亡したとのことで、その母であるB子さんが遺族厚生年金の相談のため年金事務所に来所されました。加入歴等の記録とB子さんの持参した戸籍謄本等によると、B子さんには夫C雄さんがおり、死亡したA介さんはB子さんC雄さん夫婦の長男でした。この3人は同居しており、生計同一であったことが確認できました。なお、A介さんは保険料納付要件を満たした厚生年金保険の被保険者で、配偶者及び子はいませんでした。

遺族厚生年金が支給される死亡者・遺族の要件

遺族厚生年金が支給されるための死亡者の要件については、厚生年金保険法第58条に規定されています。A介さんは保険料納付要件を満たした厚生年金保険の被保険者で、被保険者期間中に死亡したことは明らかなので、同条第1項第1号に該当します。

次に、遺族厚生年金を受けることができる遺族については、同法第59条で「・・・(略)被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(略)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(略)その者によつて生計を維持したものとする」と規定されています。
 
A介さんには配偶者及び子がおらず、上記の遺族に該当するのはA介さんの父母であるC雄さんとB子さんのみです。B子さんの持参資料等によれば、戸籍の全部事項証明書ではC雄さんが筆頭者であり、B子さんはC雄さんと婚姻し、両名の間の子であるA介さんが出生したこととなっていました。
 
また、厚年法第59条第4項では「納付要件を満たしている死亡者によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は政令(施行令)で定める」とし、厚生年金保険法施行令第3条の10において、「死亡の当時その者によって生計を維持していた者」を「死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額(年額850万円以上の収入又は年額655万5千円以上の所得。以下「基準額」という。)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」と規定しています。
 
B子さんが「基準額以上の収入または所得を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」であったことについては、問題ないと思われます。M市長が証明するB子さんの令和5年度非課税証明書によれば、令和4年中の所得金額は92万円で、公的年金に係る収入は21万8千円とされています。

ただし、夫のC雄さんは会社役員を務めており、年収は1300万円あることが確認できました。また、C雄さんに係る被扶養者記録照会回答票により、C雄さんを被保険者とする健康保険において、平成20年4月1日以降、B子さんはC雄さんの被扶養者であることが認められました。
そうすると、B子さんは夫C雄さんの被扶養者であり、同時に長男A介さんによっても生計を維持していた、と認められるかどうかが問題となります。

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