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居宅介護のサ責要件の暫定措置の解消でさらなる減算を示す(10月12日)

厚労省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームは12日、令和3年度報酬改定に向けて、⑴障害児入所施設⑵居宅介護⑶重度訪問介護⑷同行援護⑸行動援護⑹重度障害者等包括支援─に係る基準・報酬について議論した。厚労省が示した見直しの方向性について検討チームのアドバイザーは概ね賛同した。

基準・報酬の見直しの方向性について、障害児入所施設と居宅介護などの訪問系サービス等に分けて紹介する。

厚労省は居宅介護について、居宅介護職員初認者研修課程研修修了者がサービス提供責任者を務めることを可能とする暫定措置の解消に向け、さらなる減算を提案した。重度訪問介護について、移動中の自動車を運転中のヘルパーが駐停車して緊急支援を行った場合の評価の導入を示した。同行援護・行動援護については、従業者等要件の経過措置のさらなる延長を提案した。


介護保険での取り組みを参考に暫定措置の解消を進める

⑵居宅介護(ホームヘルプ)について、厚労省は、居宅介護職員初認者研修課程研修修了者がサービス提供責任者である取り扱いの廃止に向けた段階的な対応について意見を求めた。

障害福祉サービスの基準上、「居宅介護職員初任者研修課程の研修を終了した者であって、3年以上介護等の業務に従事したものをサービス提供責任者とする取扱いは暫定的なもの」とし、介護福祉士の資格取得等を促進しており、将来的に暫定措置を解消する方針が示されている。

これを踏まえ、30年度改定では、初任者研修修了者がサービス提供責任者として配置し、当該者が作成した居宅介護計画に基づくサービス提供では、居宅介護サービス費を10%減算している。

他方、介護保険の訪問介護では同様の措置を講じてきた。具体的に、ヘルパー2級・介護職員初任者研修修了者によるサービス提供責任者の配置等について24年度介護報酬改定で10%減算を行った。その後、27年度改定で30%減算を行い、30年度改定で廃止している。

こうした実態を踏まえて、介護保険と同様に廃止に向けて進めることを提案した。具体的に30%減算を行う方向だ。

重度訪問介護で駐停車時の緊急支援を評価

⑶重度訪問介護は、重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する者であって、常時介護を要する障害が対象。生活全般にわたる援助が行われる。

重度訪問介護について、厚労省は、ヘルパーが自動車を運転して障害者を移送する際に、運転中に駐停車を行い、医療的ケアなどの緊急支援を行った場合、その緊急性や安全管理等を報酬上、評価することを提案した。運転中にヘルパーが支援することは評価されない。

同行援護の従業者要件の経過措置を延長

⑷同行援護は、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者の外出時に支援するもので、サービス提供は、同行援護従業者養成研修一般課程修了者等が行う。

厚労省は、盲ろう者向け通訳・介助員は同行援護従業者養成研修を修了したものとみなす経過措置の延長を提案した。

  平成30年度改定では、盲ろう者が同行援護を利用しやすくなるよう、令和3年3月31日まで盲ろう者向け通訳・介助員は同行援護従業者養成研修を修了したものとみなす経過措置を設け、同行援護サービスを提供できるようにした。

同行援護従業者養成研修は一般課程20時間と応用課程12時間が設定されている。

他方、盲ろう者向け通訳・介助員は、都道府県や指定都市、中核市が別途養成。研修の実施に当たっては、厚労省の定めたカリキュラム(必修42時間・選択科目42時間)を基本としている。さらに養成された通訳・介助員について地域生活支援事業により都道府県等が派遣する事業を行っている。

  関係団体ヒアリングでは、2つの研修内容を調整し、盲ろう者向け通訳・介助員が同行援護従業者養成研修を受講する場合と、同行援護従業者が盲ろう者向け通訳・介助員養成研修を受講する場合に、各々、適切な「免除科目」を設定する必要が指摘された。さらに、新たな研修の受講が一定程度進むまでの間は、現行の経過措置を継続することが求められた。

こうしたことを踏まえ、厚労省は、盲ろう者向け通訳・介助員は同行援護従業者養成研修を修了したものとみなす経過措置の延長を提案した。

延長期間は次の報酬改定まで(令和5年度末)を目途とし、同行援護従業者養成研修カリキュラムの充実や、盲ろう者向け通訳・介助員養成カリキュラムとの間の適切な免除科目の設定を検討することとした。

行動援護のサ責・従業者要件の経過措置を延長

⑸行動援護は、知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を有する者が対象。利用者が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護などを行う。

サービス提供責任者やヘルパーの要件としては、行動援護従業者養成研修又は強度行動障害支援者養成研修(実践研修)の修了者であって一定の直接処遇の経験が求められているが、令和3年3月31日までは、介護福祉士や居宅介護職員初任者研修修了者等で一定の実務経験があるものでも可能とする経過措置が設けられている。

厚労省は、令和元年度に実施した調査で、21.2%の従業者が経過措置の対象者であり、そのうち11.8%が行動援護従業者養成研修課程の修了予定が無いことや、新型コロナウイルス感染症の影響なども踏まえ、経過措置の延長を提案した。

延長期間は次の報酬改定まで(令和5年度末)を目途とし、養成研修課程を当該期間までに終了させるように市町村等に周知徹底を図ることとした。

また令和3年度以降、新たに介護福祉士等の資格を取得する者は、当該経過措置の対象外とすることも示した。

重度障害者等包括支援の要件の一部見直しを提案

⑹重度障害者等包括支援は、常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高い者が対象で、訪問系サービスや通所サービス等を組み合わせて包括的に提供するものだ。厚労省は、対象者要件の一部の見直しを提案した。

具体的に対象者は、障害支援区分6に該当し、意思疎通を図ることに著しい支障がある者で、▽四肢全てに麻痺等があり、かつ、「寝たきり状態」にある者のうち、人工呼吸器による呼吸管理を行っている者及び最重度の知的障害のある者▽支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)が10点以上の者─とされている。

この「寝たきり状態」については、認定調査項目の「寝返り」において「全面的な支援が必要」と認定される必要がある。「寝返り」ができると支援対象とならない。

この点について、28・30・31年度の調査研究等で、「起き上がり」又は「座位保持」に「全面的な支援が必要」な寝たきり状態にもかかわらず、「寝返り」ができるために対象とならないことに疑問が提起され、「実態に即した判定基準の検討が必要」と指摘されてきた。

厚労省は、「寝たきり状態のある者」に係る対象者要件について、「寝返り」だけでなく、「起き上がり」「座位保持」も考慮することを提案した。

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