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#25 遺族年金の受給権者は本妻か、内縁の妻か、内縁の妻の子か?

石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー

今回は、年金を受給しながら会社勤務をしていた夫が死亡し、内縁の妻と本妻が同時に遺族年金を請求した事例をご紹介します。内縁の妻には亡夫が認知した5歳の娘がおり、亡夫との生計維持関係が成立しています。一方、本妻は亡夫と夫婦として普通に生活を送っていました。


【事例概要】
死亡者:A男さん(昭和34年1月15日生まれ:64歳)
・特別支給の老齢厚生年金を受給しながら会社勤務(厚生年金被保険者)
・令和5年4月20日に死亡

請求者:B子さん(昭和58年2月10日生まれ:40歳)
・A男さんと重婚的内縁関係にある
・A男さんとの子であると認知されたC子(5歳)さんと同居
・令和5年5月18日、年金事務所を来所

請求者:D子さん(昭和36年7月20日生まれ:61歳)
・A男さんの戸籍上の妻で、A男さん死亡時に同居
・成人した2人の子がいる
・令和5年5月8日、他県のX年金事務所で遺族年金を請求

内縁の妻と本妻の両者が遺族年金を請求

重婚的内縁関係にあったA男さんが死亡したとのことで、B子さんが遺族年金の相談にみえました。B子さんの話によると、亡くなったA男さんとの間に正式に認知された娘C子さんがいて、A男さんは毎月数回、B子さん宅を訪問し、その都度、金額は不定ですが、2人の生活費等を渡してくれていたとのことでした。

厚生年金保険法には第58条に、遺族厚生年金を支給する場合の死亡者の要件が規定されています。本件は同条第1項第1号の「被保険者が、死亡したとき」であって、保険料納付要件も満たしています。
また、厚生年金保険法には第3条第2項に、この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとすると規定されています。

A男さんとB子さんの間に音信があり、かつ、生計維持が認められる様子が伺えるので、一見、B子さんはA男さんと「事実婚関係」にあり、A男さんとの子ども(5歳)と同居しているので、遺族基礎年金及び遺族厚生年金の受給権があるように思えます。

しかし、死亡したA男さんの年金記録等を確認したところ、10日前にA男さんの戸籍上の妻D子さんが、遺族厚生年金の請求書を他県にあるX年金事務所に提出し、受理されていることがわかりました。なお、D子さんには2人の子がいますが、両者とも成人しています。

B子さんに事情をお話ししたうえで、いったんお帰りいただき、調査(後述)を行った後、ご連絡することとしました。

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