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謎の新興国アゼルバイジャンから|#20 歴史から何を学ぶのか【後編】私たちは自分の歴史とどう向き合うのか

香取 照幸(かとり てるゆき)/アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使(原稿執筆当時)

※この記事は2018年2月22日に「Web年金時代」に掲載されました。

みなさんこんにちは。
本稿は外務省ともアゼルバイジャン大使館とも一切関係がありません。全て筆者個人の意見を筆者個人の責任で書いているものです。内容についてのご意見・照会等は全て編集部経由で筆者個人にお寄せ下さい。どうぞよろしくお願いします。

歴史は「通時」と「共時」の双方の視点で見ることが必要

前回、国際ホロコースト記念日に際してここバクーで開催された、「Beyond Duty -Diplomats recognized as Righteous of the Nations」と題したシンポジウムに参加した話を書きました。

お話ししたように、第二次大戦下にあって、外交官としての職責を超えて人道的な行動を行い、「正義の人」として表彰された外交官たちを題材に、外交官としての職責と人道的行為との間の葛藤にどう向き合うべきか、を議論するというシンポジウムでした。

今回は、このシンポジウムに参加し、議論を終えた後の私の率直な感想について書きたいと思います。
私たちは自分たちの歴史とどう向き合っていくべきなのか、という話です。
重ねて記しますが、私自身の経験を踏まえた全くの個人的な感想です。どうかその前提でお読み下さい。

私たちは、日本の近現代史、特に昭和初期から終戦に至るまでの時代の全体像、特に世界史的視点から見た日本の近現代史の全体像をあまりきちんと学べていないように感じます。

私自身、高校時代は一端の「歴史少年」だったので、学校であまり教えてくれないマイナーな東洋史とか中央アジア史とか日本を含む帝国主義時代以降の近現代史とかは随分自分で勉強していたつもりでしたが、この地に赴任してからというもの、ここコーカサスの歴史にしても旧ソ連圏の歴史にしても、今回のシンポジウムで改めて勉強した戦間期以降のヨーロッパ政治史(いかにしてファシズムがヨーロッパの政治を飲み込んでいったか)にしても、実は全く勉強不足であったことを正直痛感しています。

どうして私たちは自分の国の近現代史(日本と当時の世界との関わりも含めて)について、きちんと体系的に学べていないのでしょう?

例えば、「満州事変」、って言われて、いつどこで起きたどんな事件だか、みなさんちゃんと言えますか? その事件の前に何があって、その事件の後に何が起こって、でどうなったか、系統立ててきちんと説明できる人は私たちの中にどれ位いるでしょうか?
800年以上前の元寇や400年以上前の関ヶ原の戦いのこと、明治維新のことはみんなとっても詳しいのに、まだその時代を生きた人が生き残っている、100年も経ってない日中戦争のことは、そもそも中国と戦争してたっていう事実(その戦争が正しかったのか間違っていたのかとかいう以前に、事実としてそういうことがあったということ)だってあんまりよく分かってない、ぼんやりとしか理解していない人がもしかしたら多いんじゃないでしょうか。

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