居酒屋ねんきん談義|#6 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って その2
民主主義だからこそ、市民に政策決定のプロセスを理解してもらうことが大切
権丈:坂本さんも実際に2004(平成16)年制度改正をご担当されていたので、お伺いしたいのですが、たとえば、年金局の担当になり改革を進めようとされるとき、これまでどのような方法で改革を実現するための法律の作成まで進めようとされたのでしょうか。おそらく出口さんもそうだと思うのですが、ぼくは政策を動かしていく力と現実の民主主義のあり方ということを意識するんですよね。
いままでは毎回毎回、役人は非公開の場、言わば密室で政治家を説得して、政治家のほうも誰が何を発言したかは世間に出さないままです。しかし、このような密室で政策の方向性が決まっていくプロセスをなんとかして、市民に理解してもらうプロセスにしていかないと、次も企業側のロビイングに負けますよ。
坂本:2004(平成16)年制度改正までは、やはり、いま権丈さんがおっしゃった、どちらかというと、いまと比較すれば密室に近いかたちで国の政策が進められてきたように思います。実際、審議会は非公開でした。当時は年金審議会という組織でしたが、そこに課題をあげるときにはすでに政治家とも議論をしながらあげていました。
権丈:しかも関係団体との間での意見も、許容できる範囲のものがあがってきたりしていて、年金審議会での議論が始まっていくわけですね。
坂本:そうした密室でのやり取りがもれたりすると、当時は上から叱られたりするようなこともありました。しかし、2004(平成16)年制度改正を経て、そのあたりがずいぶんオープンになってきたという感じがしました。その兆しは2000(平成12)年制度改正のときにすでにあったのですが、もう情報を共有しないと、ちゃんとした制度改正ができないと、そういう意識が2000(平成12)年制度改正のころから高まりつつありました。それは、ひとつには官僚のスキャンダルがあり、あれで政治家ともなかなか話ができないという状況のなかで、どういうふうにいまある課題を進めていくかということに直面したのです。そうしたときに、この状況を打開していくにはディスクローズしかないという意見が出始めたのです。それが2000(平成12)年制度改正のころからです。そして、2004(平成16)年制度改正のときには、もうちょっとそうした機運が高まったのですが、社会保障制度改革国民会議によって、そうした方向に一挙に変わっていったという印象があります。
権丈:政府の審議会のような組織は、関係団体の委員が拒否権を持って参加してくるわけです。そこで、報告書をまとめるときには、手続上、みんなの合意がないとまとめられない仕組になっている。そういう厳しい状況だから、昨年12月25日の年金部会でぼくは、「お疲れさまで、年金局のみなさんは、前向きに倒れたと評価しています」と発言しているんですね。
出口:事務局のみなさんがほっとした表情をされていて、名言でしたね。もっと単純に言えば、民主主義って多数決ですよね、だから、年金部会にはプレスも取材に来ているわけですから、ここは事務局の腹の決め方ひとつで多数決をとればいいわけです。そうしたら、誰が抵抗勢力で反対しているのか、みんながわかるわけです。だから、各団体の顔を見て、「議論の整理」の文章を修正するようなことをするのではなく、たとえば、適用拡大について対立する意見が出た、じゃあ部会としては多数決でやりましょうと言って、みんなに手を挙げてもらって、賛成が何票、反対が何票、そして、誰が賛成か、誰が反対かをディスクローズすることによって、市民も適用拡大の方向性が正しいということをご理解いただけるのではないかと思います。
ここから先は
¥ 100