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中医協総会が入院医療を議論 高齢者救急対応と地ケア病棟が焦点に(2023年7月5日)

中医協総会(小塩隆士会長)は7月5日、急性期から回復期、慢性期までの入院医療全般の議論を行った。令和6年度診療報酬改定に向け、中医協は第一巡目の議論を行っている。令和4年度改定の影響調査の結果も一部出たため、厚労省が一定の方向性を示す論点を明らかにし、中医協で委員の意見を求めている。

特に診療側から最も多くの発言があったのは、超高齢社会を背景に増大する高齢者救急の受け入れ先をめぐる課題への対応だった。厚労省は、高齢者救急の受け入れ先として、在宅医療からの受け皿という機能を含め、「直接入棟であるかどうかは別として、リハビリテーション、栄養、口腔の観点でのケアが充実している地域包括ケア病棟が望ましい」との考えを示している。一方、3月15日の意見交換会の後の病院団体の会見などでは、救急搬送された高齢者が、急性期病棟を経ないで、直接、地域包括ケア病棟で受け入れることが一般化することへの強い懸念が示されていた。

5日の総会で、日本医師会の長島公之委員は、救急医療に関する基本的な考えとして、「これまでの改定では、高度急性期に対する評価を重視してきたため、二次救急を担う医療機関への評価が不十分な状況になっている。医療計画がテーマとなった総会でも議論したように、三次救急からの下り搬送や出口問題に対応することへの評価を含め、二次救急の評価の充実を検討すること」を求めた。

現状では、高齢者救急の多くも救命救急センターなど第三次救急医療機関が受け入れている。しかし、今後は、高齢者救急は二次救急医療機関が中心となることが、第8次医療計画でも明確化された。二次救急医療機関の機能を充実させるためには、適切な診療報酬の評価が必要となるが、二次救急医療機関の機能にはばらつきがあり、二次救急の機能の標準化も求められている。

一方、地ケア病棟とあわせた救急医療の課題として焦点になったのが、生活機能が低下した軽症の高齢者救急の受け入れ先であり、二次救急医療機関の急性期病棟よりも地ケア病棟のほうが望ましい場合があるという論点だ。日医の江澤和彦委員は、「脳梗塞や心筋梗塞で、ご自身が治療を望まれる場合は、高度急性期、急性期病棟で治療すべき。一方、誤嚥性肺炎や尿路感染症の場合は、対応可能な地ケア病棟で受け入れることを考える場合が出てくる。ただし、地ケア病棟は看護配置が13対1で、救急医療管理加算も算定できない。対応できる救急医療には限界があることを認識すべきだ」と強調した。

その上で、「大切なことは、介護施設や高齢者向け住宅と、地ケア病棟のある在宅療養支援病院など中小病院が、顔の見える良好な連携体制を構築すること。平素から連携が取れていれば、救急車による救急搬送よりも、介護施設などの職員の付き添い、あるいは医療機関が患者を迎えに行く緊急入院が多くなる」と述べ、現場の実態を踏まえた評価を行うことを主張した。

急性期一般入院料1の届出件数 令和2年から4年にかけて増加

急性期をめぐる課題に対して、支払側が第一に求めたのは、政府の骨太方針にも明記され、長年の課題とされる医療機能の分化・連携であった。

協会けんぽの安藤伸樹委員は、「次期改定は団塊世代がすべて75歳以上になる2025年の前の最後のタイミングである。超高齢社会でも持続可能な医療提供体制とするために、医療機能の分化・連携を進めなければならない。しかし、(看護配置が7対1の)急性期一般入院料1をみると、令和2年から令和4年にかけて、わずかに増加している。高度急性期、急性期の病棟が、重点的な医療を必要とする患者が入院する病棟という位置付けにふさわしいものとなるため、機能分化を図ってほしい」と求めた()。

図 看護配置7対1の入院基本料の届出状況

健保連の松本真人委員も、急性期一般入院料1が令和2年から令和4年にかけて、わずかに増加していることを問題視。「令和4年度改定の効果を検証した上で、(機能分化を推進する)かなり踏み込んだ対応が必要」と語気を強めた。

令和4年度改定での「重症度、医療・看護必要度」(必要度)の見直しについて、「A項目の心電図モニターが廃止となったが、(200床未満の)基準値が下がり、影響が相殺されてしまっている。まだまだ急性期病床が過剰である可能性は残っている」と指摘した。

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