介護サービス運営基準等改正省令案について諮問・答申(1月13日)
社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は13日、田村憲久厚生労働大臣から社保審に諮問された、令和3年度介護報酬改定における「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営基準に関する基準等の一部改正省令案」について、了承した。
改正省令案には、全介護サービスにおいて感染症・災害が発生した場合の業務継続に向けた計画(BCP)の策定を義務付けることや、個室ユニット型施設の1ユニットの定員を15人まで可能とするなどの見直しが盛り込まれた。
同日、分科会から社保審の遠藤久夫会長に「諮問のとおり改正することを了承する」と報告され、遠藤会長から厚労大臣に答申も行われた。改正省令は1月下旬に公布される運び。施行は令和3年度から。基本報酬・加算や算定要件の諮問・答申は別途、行われる。
改正省令案の内容は、審議報告のとりまとめに先立ち昨年12月9日に了承された改正事項と同じだ。また同23日に公表された「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」にも盛り込まれている。主な改正内容をみてみる。
全介護サービスにBCP策定や虐待防止対策の強化を義務付け
省令改正により、全介護サービスに対して、感染症対策の強化を求め、委員会の設置や指針の整備、研修の実施、訓練の実施を義務付ける(施設系サービスでは現行でも委員会の開催や指針の整備、研修の実施を求めている)。さらに感染症・災害が発生した場合の業務継続に向けた計画(BCP)の策定等を義務付ける。いずれも3年の経過措置を設ける。
高齢者虐待防止の観点から、虐待発生・再発防止のための委員会の開催や指針の整備、研修の実施、担当者の設定を義務付ける。3年の経過措置を設ける。
パワーハラスメント・セクシャルハラスメント対策を求める。
CHASE・VISITを活用した計画の作成や事業所単位でのPDCAサイクルの推進、ケアの質の向上を推奨する。
運営基準で実施が求められる各種会議等について次のよう見直す(利用者宅を訪問して実施が求められるものを除く)。
▽利用者等が参加せず、医療・介護関係者のみで実施するものは、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を参考にして、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
▽利用者等が参加するものは前記に加えて、利用者等の同意を得た上で、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
無資格者に認知症介護基礎研修を受講させる措置を義務付け
認知症の人の尊厳の保障の実現に向け、介護サービス事業者(訪問入浴介護、通所系サービス、短期入所系サービス、多機能系サービス、居住系サービス、施設系サービス)に対し、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格がない者に認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を義務付ける。3年の経過措置を設ける。
地域との連携も強化する。小規模多機能等と同様に、災害の訓練の実施にあたり、地域住民の参加を求める努力義務を規定する(通所系サービス、短期入所系サービス、居住系サービス、施設系サービス)。また通所介護には地域密着型通所介護と同様に地域との交流について努力義務を規定する。
サービス付き高齢者向け住宅における適正なサービス提供の確保にも配慮する。事業所と同一建物に居住する利用者にサービスを提供する場合、当該建物に居住する利用者以外にもサービスを提供する努力義務を規定する(既に規定がある定期巡回・随時対応型訪問介護看護を除く訪問系サービス、通所介護、通所リハ)。
施設系サービスでは、口腔衛生管理体制を整備し、入所者ごとの状態に応じた口腔衛生管理を求める。栄養ケア・マネジメントを基本サービスとして行うこととし、現行の栄養士に加えて、管理栄養士の配置を位置付ける(栄養士又は管理栄養士を配置)。入所者ごとの栄養管理を計画的に行うことを求める。口腔衛生管理及び栄養ケア・マネジメントの実施は3年の経過措置を設ける。
目立つ利用定員・人員配置基準の緩和
利用定員・人員配置基準について緩和する方向での見直しが目立つ。
個室ユニット型施設の1ユニットの定員について、現行の「おおむね10人以下」から「原則としておおむね10人以下とし、15人を超えないもの」とする(短期入所系サービスも同様)。
施設で従来型とユニット型を併設する場合に、介護・看護職員の兼務を可能とする。
地域密着型特養(サテライト型を除く)で他の施設等との連携により栄養士を置かないことを可能とする。またサテライト型居住施設で、本体が(地域密着型)特養の場合、生活相談員を置かないことを可能とする(本体の生活相談員で対応する)。
認知症グループホームのユニット数を「3以下」とし、3ユニットの場合に各ユニットが同一階に隣接するとともに安全対策を取っていること等を要件として、夜勤2人配置を可能とする。また計画作成担当者の配置について1ユニットごとに1名以上の配置から事業所ごとに1名の配置に緩和する。
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護について、過疎地域等において市町村が認めた場合に、人員・設備基準を満たすことを条件に、登録定員を超過した場合の報酬減算を一定期間行わないこととし、登録定員・利用定員を超えることを可能とする。
小規模多機能について広域型特養や老健施設と併設する場合に、管理者・介護職員の兼務を可能とする。
共用型認知症対応型通所介護の管理者について、本体施設の・事業所の職務と合わせて、共用型事業所の他の職務に従事することを可能とする。
夜間対応型訪問介護のオペレーターについて、特養などの併設施設の職員や、随時訪問を行う訪問介護員等との兼務を可能とする。他の訪問介護事業所等に事業の一部を委託することや、通報受付の集約化も可能とする。
人員基準の緩和は、「利用者(入所者)の処遇に支障がない場合」に認められる。
この「処遇に支障がない場合」について厚労省は「個別に都道府県なりが判断していく」と説明。
連合の伊藤彰久委員は、この場合の判断について「都道府県で迷わないように国の方で適切に対応していただきたい」と要望した。
人員配置基準の緩和について日本看護協会の岡島さおり委員は、「その影響を幅広く検証することをお願いしたい」と述べた。都道府県・市町村でも評価・検証を行うよう国から促すことも要請。サービス支援の充足率や、医療・看護・介護従事者の業務実態や確保、研修の実行状況等を把握し、介護保険事業(支援)計画が妥当であったか検証するよう求めた。
同一事業者により提供された訪問介護等の割合を利用者に説明
居宅介護支援について、ケアマネジメントの公正中立性の確保を図る観点から、前6カ月に作成したケアプランにおける訪問介護・(地域密着型)通所介護・福祉用具貸与の各サービスの割合及び、各サービスについて同一事業者により提供されたものの割合を利用者に説明することを義務付ける。
また区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占めるケアプランを作成する居宅介護支援事業者を事業所単位で抽出するなどの点検・検証する仕組みを令和3年10月から導入する予定だ。