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全世代会議が論点整理、手上げによるかかりつけ医機能の制度整備(11月24日)

政府の全世代型社会保障構築会議は11月24日、各分野の方向性を盛り込んだ「論点整理」をまとめた。後期高齢者を含む医療保険の加入者全体で支える出産育児一時金の仕組みや、手上げ方式によるかかりつけ医機能が発揮される制度整備を盛り込んだ。年末までに報告書をまとめる。

報告書のとりまとめについて話し合う岸田文雄首相と全世代型社会保障構築会議の清家篤座長ら=11月24日(写真は首相官邸Webサイトより転載)

医療・介護の改革の論点は、同会議内のチームがまとめた内容を踏まえたものとなっている。

医療保険制度では、現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、負担能力に応じて全ての世代で増加する医療費を公平に支え合う仕組みを強化する観点から、次の3点をあげた。

  1. 出産育児一時金の大幅な増額と出産費用の見える化を実施。その際、出産育児一時金の費用について負担能力のある後期高齢者も含めて医療保険の加入者全体で支え合う仕組みをつくる

  2. 後期高齢者の保険料負担と現役世代の支援金について、賦課限度額や所得の保険料率の引上げにより、負担能力のある高齢者に応分の負担を求めつつ、介護保険制度も参考に一人当たりの伸び率が均衡するような見直しを図る

  3. 被用者保険における保険料率の格差を是正する観点から、前期高齢者の医療費の分担について検討する

医療提供体制では、都道府県の責務の明確化等による地域医療構想の推進、医療法人の経営状況の見える化などの医療法人改革、働き方改革の確実な実施などをあげた。

医療機関は自院のかかりつけ医機能を住民に情報提供

かかりつけ医については「かかりつけ医機能が発揮される制度整備は不可欠である」とし、早急な実現を求めた。

その上で、整理すべき論点として①かかりつけ医機能の定義は、現行の省令である「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」をベースにする②日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握し、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行う③かかりつけ医機能の活用、医療機関、患者それぞれの手上げ方式とする④医療機関は自らが有するかかりつけ医機能について住民に情報提供を行うとともに、自治体がその機能を把握できる仕組みにする―などをあげた。

介護保険制度では、地域包括ケアシステムの深化・推進のため、地域の拠点となる在宅サービス基盤の整備や地域包括支援センターの体制整備等の推進をあげた。介護職員の働く環境の改善に向けた取り組みでは、介護サービス事業者の経営の見える化や優良事例の横展開、ICT・ロボットの活用等による現場の生産性向上、行政手続のデジタル化等による業務効率化、経営の協働化・大規模化等による人材や資源の有効活用をあげた。

介護人材確保に向けた総合的政策パッケージを

同日、政府の全世代型社会保障構築本部も開かれ、論点整理が報告された。

岸田文雄首相は、論点整理に沿って早急に実施するべき課題と中長期的な課題を整理し、年末までに報告書をまとめるように要請した。

加藤勝信厚労相に対しては、介護人材の確保に向けて、介護サービス事業者における生産性の向上と働きやすい職場環境づくりのための経営の見える化や介護ロボット・ICT機器の導入促進を含む総合的な政策パッケージについて年末までまとめるよう指示した。

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