遺族年金のしくみと手続~詳細版|#13事実婚を主張する請求者が遺族厚生年金を受給できるか否か
遺族年金においては、婚姻の届出をしていない「事実婚」であっても、配偶者とみなします。事実婚が認められるには一定の条件があり、本人の申立てと、それを裏付ける証明書類等を確認しなければなりません。加えて、生計維持要件も満たす必要があります。今回は、具体的なケースに基づき、事実婚の認定方法を中心にご紹介します。
「事実上の妻」が遺族厚生年金を請求
厚生年金保険の被保険者であり、かつ老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給者であったAさんが死亡したとのことで、Aさんの「事実上の妻」であるというB子さんが、遺族厚生年金の請求に来所しました。
遺族厚生年金の受給要件を満たした者が死亡した場合、死亡した者の配偶者で、当該死亡の当時、死亡者によって生計を維持した者には、遺族厚生年金が支給されます。
また、死亡者によって生計を維持した配偶者とは、死亡者と生計を同じくしていた配偶者で、年額850万円以上の収入または年額655万5千円以上の所得を将来にわたって有すると認められる者以外の者とされています*。
*厚生年金保険法第58条第1項第4号、第59条第1項及び第4項、同法施行令第3条の10、「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号厚生労働省年金局長通知/以下「認定基準」という)より
さらに、厚年法第3条第2項により、「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが、事実上、婚姻関係と同様の事情にある者を含むとされています。
今回は、死亡の当時、Aさんは遺族厚生年金の要件を満たした死亡者であったこと、死亡時点において戸籍上の妻はいないこと、AさんとB子さんは婚姻の届出をしていないことが、B子さんが持参された戸籍謄本等により認められました。
また、B子さんは「年額850万円以上の収入または年額655万5千円以上の所得を将来にわたって有すると認められる者以外の者」であることも確認できました。なお、Aさんの住民票はX市にあり、B子さんの住民票は隣のY市にあります。
以上のことから、AさんとB子さんが事実婚関係にあったかどうか、また、Aさんの死亡当時、B子さんはAさんによって生計を維持した者と認められるかどうか、検討することにしました。
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