遺族年金のしくみと手続~詳細版|#12胃がんのため退職し、脳出血で死亡した場合、遺族厚生年金を受給できるか?
今回は、胃がんのために退職し、胃がんが悪化して再入院中、脳出血により死亡した事例をご紹介します。会社退職後の死亡であり、在職中に初診日のある胃がんと、死因の脳出血との因果関係が問われるケースです。医師による医学的見地からの申立書がポイントとなりました。
会社を退職後に死亡した場合
A夫さんが死亡したとのことで、配偶者であるB子さんが遺族厚生年金の請求に来所されました。A夫さんの年金加入記録をみると、厚生年金保険の被保険者期間は平成13年4月1日から令和元年8月1日までの約18年間で、その後、国民年金保険料が全額免除となっていました。このことから、A夫さんの死亡は厚生年金保険加入中ではなく、会社を退職しておおよそ4年後であるとわかります。なお、学生であった20歳から入社までの国民年金保険料は未納の状態でした。
次に請求者であるB子さんの話と持参書類(戸籍謄本、死亡診断書等)から、A夫さんは令和4年4月4日に、脳出血を直接死因として死亡したことが確認できました。また、B子さんがA夫さんの配偶者であることは明らかで、夫婦に子はいません。
厚生年金保険法第58条第1項では、次のように規定しています。
A夫さんについて見てみると、第一号、第三号及び第四号には該当しません。そこで、第二号に該当するか、確認していくことにしました。
最初に保険料納付要件をみると、「3分の2要件」を満たしています。次に、死亡診断書によれば、死亡日は厚生年金保険の被保険者資格喪失日(令和元年8月1日)よりも後になります。初診日は平成30年5月10日となっており、厚生年金保険の被保険者期間中です。また、初診日から5年経過する前の死亡です。
ところが、初診日傷病は「胃がん」となっています。そこで、死亡の直接原因となった「脳出血」との間に、「相当因果関係」が認められるか否かが、この事例の問題点となります。以下のように、本件の問題点について検討していきました。
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