#7 遺族年金の基本と注意点-会社員だった人が亡くなった場合の遺族年金
遺族年金は、国民年金や厚生年金保険の被保険者や、被保険者であった人などが亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族に対して支給されます。
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありますが、どの制度から遺族年金が支給されるかは、亡くなった人が加入していた年金制度や遺族(配偶者、子、父母など)の範囲などで決まる仕組みです。
なお、遺族基礎年金は、受け取れる遺族が「子のある配偶者」または「子」に限られますので、今回は、遺族厚生年金を中心にご説明しましょう。
※本稿において子・孫とは、18歳到達年度末日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の状態の人をいいます。
遺族厚生年金が支給される条件と遺族の条件
遺族厚生年金は、次の①~④のいずれかを満たしている人が死亡したときに、遺族に支給されます。
①厚生年金の被保険者の死亡
②厚生年金の被保険者期間中に初診日がある傷病で初診日から5年以内に死亡
③1級・2級の障害厚生(共済)年金の受給権者の死亡
④老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている人の死亡
です。
①と②は、一定の保険料納付要件が必要です。④は、原則25年以上の加入期間が必要です。
遺族の条件は、死亡した人に生計を維持されていた
a 子のある妻または子、子のある55歳以上の夫
b 子のない妻
c 孫
d 子のない夫、父母、祖父母(いずれも55歳以上で、支給は60歳から)
です。
遺族厚生年金を受けられる遺族には、優先順位があります。
遺族厚生年金の年金額と加算額
遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。前述の支給条件の①~③については、死亡した人の厚生年金の被保険者期間を最低300月(25年)と見なして計算します。
また、次の❶と❷のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、年額596,300円が加算されます(中高齢寡婦加算)。
❶夫死亡時、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
❷40歳に達した当時、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。
65歳前の遺族年金と老齢年金の選択
65歳前に遺族厚生年金を受給していた人が「特別支給の老齢厚生年金」を受給できるようになったときは、遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方を同時に受給できません。いずれか一方を選択することになり、選択に当たっては、「年金受給選択申出書」の提出が必要となります。
妻が65歳以降、老齢厚生年金と遺族厚生年金が受けられる場合は
妻が65歳以上で老齢厚生年金と遺族厚生年金を受給できる場合、まず、妻自身の老齢厚生年金が支給されます。次に、遺族厚生年金は、妻の老齢厚生年金よりも年金額が多い場合、その差額分が支給されます。この場合であっても妻自身の老齢基礎年金は、全額支給されます。
夫婦2人暮らし、50歳代後半のIさんのケースを見てみましょう。
私が老齢年金を受給開始後に死亡した場合、妻は遺族年金をいくら受けられますか。
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