見出し画像

年金事業管理部会が公金受取口座の登録について意見交換

(こちらは3月1日に「Web年金時代」に掲載したものです)

厚生労働省の社会保障審議会年金事業管理部会(部会長=増田寛也・日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長)は2月22日、日本年金機構の令和5年度計画案や公金受取口座の登録などについて意見交換を行った。令和5年度計画案は、前回委員から出された意見を反映し、教育関係機関や企業等における年金セミナーおよび年金制度説明会の実施結果を検証することを追記したほか、公的年金業務のシステム刷新について定めている「プロジェクト憲章」を改定することを加えた。また、年金記録問題関連では持ち主不明の「未統合記録」について、死亡者の記録や持ち主の手がかりがいまだ得られていない記録についてサンプル調査を行い、年金受給につながる可能性について検証することが追加された。令和5年度計画案は了承され、厚生労働大臣の認可を受けることになる。

デジタル庁が実施している公金受取口座の登録方法には①マイナポータル経由②行政機関等経由③金融機関経由の3種類があるが、高齢世代の登録率が低い状況になっている。デジタル庁は、マイナポータル経由で口座登録を行うデジタル的手法に不慣れな人の存在が登録が進まない要因となっている可能性があるとし、迅速かつ確実な給付の実現に向け、デジタルに不慣れな人でも簡易に公金受取口座の登録ができるよう登録方法の拡充を図るため、「行政機関等経由登録の特例制度」を創設することについて同部会に報告した。具体的には、まず日本年金機構から年金受給者等にこの制度について書留郵便等で事前通知する。この通知では、年金受取口座情報等をデジタル庁に提供することに同意または不同意であることを求め、同意の場合は口座情報等が登録されること、一定期間(30日以上を想定)内に回答がないときは同意したものとして取り扱われることを記載する。受給者等が同意したとき(同意したものとして取り扱われる場合を含む)は、機構はその情報をデジタル庁に提供できる。公金受取口座の登録後は、デジタル庁が登録結果を受給者等に通知する。

委員からは「勝手に登録されたと心配する人もいると思うので、周知徹底をしっかり行うべき」「年金の新規裁定のときに口座登録について案内するなど、年金の手続のしくみの中に乗せていくのはどうか」「不同意だったのに一定期間を過ぎてしまった場合、あとで不同意とする手続が必要となるが、手続が行える金融機関まで行くこと自体難しい状況の人もいると思うので、オプトアウト方式では厳しいと思う。また、公金受取口座を登録するとどんな利点があるのかイメージできないと登録する動機につながりにくい。手続に負担感をもたれないようにする必要がある。金銭管理や個人情報の話なので、本人の意思に沿って行われることがいちばん大事。慎重に進めてほしい」「公金の受け取りが年金だけの人は、機構にその口座が登録されていればいいだけなので、登録する必要がない。複数の公金を複数の口座で受け取っている場合も、登録できるのは1つの口座だけなので、分けたいのに分けられないという状況になるのでは。利用を促すには利点について説明したほうがいい」「違和感を覚える受給者も一定数いると思うので、通知が送られてくると年金事務所への問い合わせや苦情が増えることもあると思うので、そういう事態が発生すると想定してほしい」「高齢者をターゲットにするのに違和感がある。この制度に便乗した悪徳業者が出てくると思うので、高齢者にとってはメリットよりもデメリットのほうが大きいくらいでは。対策を考えてほしい。先々のことを考えると無理して高齢者の登録を増やすよりも将来世代の登録率を高めるほうが意味があるのでは」などの意見が出た。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。