財政審が建議を提出 かかりつけ医の制度化・事前登録制を提言(5月25日)
財政制度等審議会は5月25日、「歴史の転換点における財政運営」と題した建議をまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。かかりつけ医の制度化を提言し、患者の事前登録にも踏み込んだ。
建議はかかりつけ医について、「『いつでも、好きなところで』という意味で捉えられがちで、受診回数や医療行為の数で評価されがちであった「量重視」のフリーアクセスを、『必要な時に必要な医療にアクセスできる』という『質重視』のものに切り替えていく必要がある」と指摘。その上で、制度的対応が不可欠と強調した。
具体的にはかかりつけ医の要件として◇地域の医師・医療機関等と協力◇休日や夜間も患者に対応できる体制を構築◇在宅医療を推進―などの事項を法制上、明確化して、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定する制度を提案している。
さらに、かかりつけ医の利用を希望する者については事前登録や医療情報登録を促す仕組みを導入することを検討するべきとした。
このようなかかりつけ医の普及を図るために、地域における外来医療の実態を可視化する必要があるとも指摘。レセプトデータ等をもとに、実際にかかりつけ医機能が発揮されているのかどうか、外来医療の実態を明らかにした上で、「地域医療構想のように地域における外来医療のあるべき姿を示し、現状との比較を通じてそこへの収斂を促す仕組みを整えていく」ことが重要だと訴えた。
金看板のフリーアクセス「肝心な時に機能しなかった」
建議は、コロナ禍での外来医療のあり方の問題点を指摘した。一昨年の秋以降、発熱した患者はまずかかりつけ医等の地域の身近な医療機関に相談する仕組みを政府は目指していた。しかし実際には、発熱患者にかかりつけ医がいないこともあり、相談する医療機関に迷う場合に電話相談できるはずの「受診・相談センター」には、電話がつながりにくいことなどの事情もあった。建議はそれらの事情を挙げたうえで、「発熱患者等が円滑に診療を受けられない状況」だったと断じた。
発熱外来の対象をかかりつけ患者に限定していた医療機関も少なくないが、かかりつけ医をふだんからもたない患者はその対象から除外されていたことになる。建議では、国民の半数弱がかかりつけ医をもっていないとした上て、「医療機関側では患者の選別を行っている」と指摘。「我が国医療保険制度の金看板とされてきたフリーアクセスは、肝心な時に十分に機能しなかった可能性が高い」とした。