調剤報酬の令和5年度特例措置――医薬品安定供給に資する取組みに応じて地域支援体制加算をさらに評価
1.オンライン資格確認の導入の原則義務付けに係る経過措置(令和5年4月~)
令和5年4月から、保険医療機関・保険薬局においてはオンライン資格確認の導入が原則として義務付けられますが、令和4年8月10日中医協の答申書附帯意見を踏まえ、令和4年度末時点でやむを得ない事情がある保険医療機関等については、期限付きの経過措置等が設けられます。
⑴ 経過措置の対象となる保険医療機関等
以下の「やむを得ない事情」に該当する保険医療機関等が対象となります。対象保険医療機関等は、あらかじめ、支払基金を経由して地方厚生(支)局に猶予届出書を届け出ます。
上記のほか、患者からオンライン資格確認を求められた場合に応じる義務については、訪問診療等又はオンライン診療の場合には、居宅同意取得型の運用開始(令和6年4月目途)までの経過措置が設けられています。
⑵ 猶予届出書の届出について
猶予届出書は、あらかじめ支払基金(オンライン資格確認医療機関等向けポータルサイトの届出フォーム)を経由して、地方厚生(支)局に原則オンラインで令和5年3月31日までに届け出る必要があります。
オンラインによる届出が困難な場合は、紙媒体の猶予届出書を地方厚生(支)局に郵送で届出を行います。
⑶ 地方厚生(支)局・支払基金との情報共有
地方厚生(支)局は、療養の給付に関して必要がある時は、支払基金に対して必要な資料の提供を求めることができます。
また、支払基金は、オンライン資格確認の体制整備を促進するために必要がある時は、地方厚生(支)局に対して必要な資料の提供を求めることができます。
2.オンライン資格確認の導入・普及に関する加算の特例措置(令和5年4月~12月)
医療DX推進のためのオンライン資格確認の導入・普及の徹底の観点から、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」について、初診時における評価を見直すとともに、再診時についても新たに評価を行う特例措置が講じられます。
また、あわせて「オンライン請求」をさらに普及する観点から、これらの加算の算定要件を見直す特例措置も講じられます。
これらの特例措置については、令和5年4月から12月までの時限的な適用となります。
⑴ 医療情報・システム基盤整備体制充実加算
<算定要件(特例措置)>
① 医療情報・システム基盤整備体制充実加算1(特例措置)については、施設基準を満たす保険薬局でマイナンバーカードを利用しない患者に調剤を行った場合に、6月1回に限り4点を算定します(*3)。なお、マイナンバーカードを利用する患者については、医療情報・システム基盤整備体制充実加算2として、6月1回に限り現行と同じ点数(1点)を算定します。
(*3)「適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局」は特例措置の対象とはなりません。
② 下記の<施設基準>で示す体制を有していることについて掲示するとともに、必要に応じで患者に対して説明します。 <施設基準>(基準を満たしていればよく、届出は不要(①の※に係る届出を除く)) ① オンライン請求を行っていること。
※ オンライン請求を行っていない保険医療機関が、令和5年12月31日までにオンライン請求を開始することを地方厚生(支)局長に届け出た場合(様式86使用)は、同日までの間に限り、要件を満たしているとみなされます(*3)。また、令和5年4月10日までに当該届出書の提出があり、同月末日までに要件審査を終え届出の受理が行われたものについては、同月1日に遡って算定することができます。(*4)
(*3)届出を行った保険医療機関において、令和5年12月31日までに「オンライン請求を開始」していない場合は、届出時点で医療情報・システム基盤整備体制充実加算の要件を満たさなかったものとして取り扱われます。なお、「オンライン請求を開始」とは、「保険医療機関又は保険薬局に係る光ディスク等を用いた費用の請求等に関する取扱いについて」(平成18年保総発第0410001号)の別添「電子情報処理組織等を用いた費用の請求に関する取扱要領」の別添1「電子情報処理組織の使用による費用の請求に関する届出」を審査支払機関に提出していればよいとされています。
(*4) 届出は令和5年3月1日から可能あり、令和5年4月から算定する場合は令和5年4月10日が届出期限とされていますが、混雑も予想されるので原則令和5年3月31日までに届け出ることとされています。
② オンライン資格確認を行う体制を有していること。
③ ②の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて当該保険医療機関の見やすい場所及びホームページ等に掲示していること。
3.医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の特例措置
医薬品の供給が不安定な状況を踏まえ、患者への適切な薬剤の処方や、保険薬局の地域における協力促進などの観点から、保険医療機関に対する加算について、特例措置が講じられます。
この特例措置は、令和5年4月から12月までの時限的な適用となります。
00調剤基本料(「注12」地域支援体制加算)(特例措置)
医薬品の供給が不安定な状況を踏まえ、地域医療への貢献の観点から、地域支援体制加算について、後発医薬品の使用促進を図りながら、保険薬局が地域において協力しつつ医薬品の安定供給に資する取組を実施する場合の要件及び評価が見直されます(令和5年4月から12月までの時限的な適用)。
<算定要件(特例措置)>
① 地域支援体制加算1~4(特例措置)は、施設基準を満たす保険薬局で調剤を行った場合に算定します。なお、特別調剤基本料を算定している場合は、100分の80に相当する点数(小数点以下第1位を四捨五入)を算定します。
② 地域支援体制加算1~4(特例措置)に該当する場合であって、施設基準の届出を行っている保険薬局で調剤を行った場合は、調剤基本料「注6」の連携強化加算(2点)を更に所定点数に加算します。
<施設基準(特例措置のための追加分)>(基準を満たしていればよく、届出は不要)
① 地域支援体制加算の届出を行っている保険薬局であること。
② 後発医薬品調剤体制加算に係る届出を行っている保険薬局であること。
③ 当該保険薬局の存する地域の保険医療機関又は保険薬局(同一グループの保険薬局を除く。)に対する在庫状況の共有、医薬品の融通などを行っていること。(*4)
④ ③の取組に関する事項について、当該保険薬局の見やすい場所に掲示していること。
(*4)③について求められる取組みは、後発医薬品の使用促進を図りながら、地域の保険医療機関・保険薬局との連携の下で、薬局で必要な調剤を行うための情報共有や医薬品の融通、医師との処方内容の調整など、医薬品の安定供給に資する対応です。具体的には、地域の実情に応じて対応すべきものであり、例えば、次に掲げる取組が考えられますが、現下の不安定な医薬品供給の状況を踏まえれば、このような取組は、自薬局の周辺地域の保険医療機関や同一グループ以外の保険薬局と連携すべきものであり、地域における開かれた取組であることが求められます。また、この観点から、災害時の医薬品供給の対応のように、都道府県、保健所等の行政機関を介した情報共有等の連携体制に参加する取組も今回の対応として有用であると考えられます。
(例)
・地域の薬局間での医薬品備蓄状況の共有と医薬品の融通
・医療機関への情報提供(医薬品供給の状況、自局の在庫状況)、処方内容の調整
・医薬品の供給情報等に関する行政機関(都道府県、保健所等)との連携
なお、特例措置は時限的なものですが、上記のような地域における取組を促し、それを定着させるための措置であることを踏まえると、特例措置が終了した後でもこのような取組を継続して行うべきものとなります。
4.診療報酬関連書籍(調剤)のご紹介
社会保険研究所が発刊する診療報酬関連書籍のうち上記改正に関連する書籍をご紹介します。
調剤報酬点数表の解釈 令和4年4月版
薬局関係者必携の保険調剤のすべてがわかる定本。類書の追随を許さない抜群の正確さと高い信頼性を誇ります。