遺族年金のしくみと手続~詳細版|#22 当事者の一方が昏睡状態の場合の婚姻届と遺族年金
今回は一見すると、同居している戸籍上の夫婦の夫が交通事故で死亡したケースです。ところが、婚姻届けは、夫が交通事故に遭い、昏睡状態のときに妻が提出していました。夫は会社員で厚生年金被保険者でした。妻に遺族厚生年金は支給されるでしょうか。
厚生年金被保険者が死亡した場合
厚生年金被保険者であったA夫さんが令和5年1月15日に交通事故で死亡されたとのことで、妻のA子さんが令和5年2月10日に遺族厚生年金の手続きに来所されました。
「厚生年金被保険者が死亡したとき」は、遺族厚生年金の受給権者として厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)第58条第1項第1号に規定されています。
また、遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持関係の認定については、政令(平成23年3月23日通知「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」年発0323第1号)で定められており、生計同一要件及び収入要件を満たす場合に死亡した被保険者と生計維持関係があるものと認定することとなっています。
今回の請求に来所されたA夫さんA子さん夫妻が受給要件に該当するかを確定するため、最初にA夫さんの年金加入歴を基礎年金番号等で確認しました。その結果、A夫さんは学生であった20歳到達月から就職するまで国民年金に加入し、学生納付特例となっていました。その後、就職した平成20年4月1日から死亡日までは、継続して厚生年金被保険者となっていました。
遺族厚生年金の受給要件のうち、厚生年金被保険者の死亡(厚年法第58号第1項第1号)のみに該当する、いわゆる「短期要件」の該当者です。
保険料納付要件を求められますが、A夫さんは原則の「3分の2要件」(厚年法第58条第1項)を満たしていました。
同居している戸籍上の夫婦だが、婚姻日に夫は昏睡状態
次に、A夫さんの死亡当時における生計維持を確認する必要があります(厚年法第59条第1項)。持参された添付書類を確認して行くと、戸籍謄本に記載されている婚姻日が令和5年1月12日で、その3日後の15日が死亡日となっていました。また、住民票は、M市N町宅においてA夫さんが世帯主、A子さんは妻として登録されていました。なお、A子さんの受給権発生の前年の収入は未確定のため、前々年の令和3年の収入を確認すると、約320万円となっていました。
ここまで書類の確認をしていくと、同居している戸籍上の夫婦であり、何も問題がないと思いました。
しかし、死亡診断書によれば、実際に交通事故があったのは1月5日となっていました。つまり、婚姻届けを提出した日のA夫さんは、意識不明の状態であることがわかります。
そこで、A子さんの話を聞いていくと、次のようなことがわかりました。
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