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#31|社会的治癒を主張した障害年金請求


 現在罹患している傷病が回復しても、将来再発してしまうことがあります。この場合、前発の傷病が「治癒」していた場合は、後発の傷病により初めて医療機関を受診した日が障害年金における初診日となりますが、治癒していない再発の場合は、前発の傷病により初めて医療機関を受診した日が初診日となります。

 この「治癒」というのは、病気や怪我が治り治療行為が必要ではなくなった状態のことを言います。例えば、風邪で高熱を出していたものが、薬を飲まなくても平熱でいられるようになったら、これ以上の治療行為は必要ありませんので、治癒したと言えるでしょう。逆に、薬を飲んだ時は平熱まで下がるが、時間が経つとまた高熱が出てしまう状態は、薬を飲むという治療行為を継続しなければなりませんので、治癒したとは言えません。

 また、糖尿病のような慢性疾患は、ほとんどの場合が一生治療をしなければなりませんので、例え一定期間治療行為を行っていなかったとしても、治癒したとはみなしません。

 このように、治癒したかどうかは、その症状や数値等からある程度判断できるものですが、その見分けがつきにくい傷病があります。それが精神の傷病です。

 精神の傷病は、患者さんとの問診をもとに精神科医が診断及び治療をします。従って、血液検査のような数値的なものはなく、また、外傷など外目に分かるものもありません。さらに、好調と不調を繰り返すこともありますので、治癒をしたかどうかの判断は非常に難しくなります。

 今回は、一度、精神の傷病に罹患した後、しばらくして別の精神の傷病に罹患した場合の事例を取り上げ、「治癒」について検証したいと思います。

 相談者は少々就職や年金加入の出入りが激しいですので、具体的な日付等を入れて図1に整理します。

1.相談者が希望する請求

 相談者は、現在の症状が「双極性障害」によるもの考えています。ゆえに、その診断をしたCZ病院を初めて受診した「令和3年12月21日」を初診日として障害認定日請求を希望しています。

 つまり、相談者としては、30歳頃に診断された適応障害及びうつ病は治癒しているため、今回の双極性障害とは関係がないとの主張です。

 仮に、相談者が主張するように前発の傷病が治癒しているのであれば、「令和3年12月21日」を初診日と特定してよいでしょう。その日において、直近1年間に未納がないことから納付要件はクリアしていますし、厚生年金加入中ですので、障害厚生年金の請求が可能となります。

 逆に、治癒していないようであれば、前発の傷病と一括りにされますので、初診日は「RTクリニック」の「平成20年6月11日」となり、国民年金加入中となります。また、未納が多いため、直近1年要件や3分の2要件も満たさないことから、そもそも請求自体が不可能となります。

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