令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向け主な論点案を示す(8月27日)
厚労省は8月27日、障害福祉サービス等報酬改定検討チームに、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向け、「災害や感染症の発生時も含めた支援の継続を見据えた対応」など、6項目の主な論点案を示した。厚労省によると、改定の主な論点として災害や感染症の対応が挙げられるのは初めてのこと。次回会合は9月11日に開催し、個別のサービスの論点の検討に入る予定だ。
「災害や感染症の発生時を含めた支援の継続」も主な論点に
主な論点案としては、関係する46団体のヒアリングで出された意見も踏まえ、現時点のものとして次の6点が示された。
このうち①では、具体的な検討事項として、共同生活援助における重度化・高齢化に対応していくための方策や地域生活支援拠点等における機能の充実を図るための方策、30年度から導入された自立生活援助の整備を促進するための方策を示した。
②では、利用者のニーズに応じた短期入所を確保するための方策や緊急時の受け入れ促進につながる方策などを示した。
③では、医療的ケアに関する客観的な指標(判定スコア)による評価方法や、障害児通所支援(児童発達支援及び放課後等デイサービス)のサービス内容や質に応じた評価方法、「障害児入所施設の在り方に関する検討会」の報告を踏まえた見直しを示した。
「障害児入所施設の在り方に関する検討会」の報告では、地域支援機能を高めるためのソーシャルワーカーの配置促進や、福祉型施設での職員配置基準の引き上げ、医療型施設での保育士等の配置促進などが盛り込まれた。
④では、精神障害者の地域生活への移行や地域生活を送るための支援方策などを示した。
⑤では、専門家との連携による災害や感染症の発生に対する体制整備や、新型コロナウイルス感染症に係るオンライン等を活用した在宅での支援の取り扱い等を踏まえたサービス支援の評価を示した。
最後の⑥では、サービスの内容や質に応じた評価を行うための報酬体系等の見直しや、業務効率化を図るためのICTの活用等の推進方策、廃止が決まっている、食事提供体制加算や送迎加算などの経過措置の取り扱いに関する検討を示した。
医療的短期入所等への動ける医療的ケア児の受け入れ促進を強調
意見交換で、アドバイザーを務める田村正徳・埼玉医科大学客員教授は、短期入所について、「緊急時の受け入れ以外でも多様な利用者のニーズに応じたサービス提供について報酬をつけるべきではないか」と提起。評価するサービス提供として、医療的ケア児の受け入れや日中支援活動、入浴などを挙げた。特に動ける医療的ケア児の受け入れの促進を強調。「家族のレスパイトだけでなく、医療型短期入所等に入るお子さん自身のQOLが上がることにつながる」と述べた。
岩崎香・早大教授は、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの推進」では、地域づくりと並行しながら、個別支援を進める上で、「個別支援の要は相談支援」として相談支援の重要性を強調した。
小川正洋・柏市障害福祉課長は、柏市で地域生活支援拠点等を計画的に整備してきた実態を踏まえ、特に重度者の緊急時の受け入れを評価して財政的支援を充実するように求めた。
小船伊純・白岡市福祉課長は、「コロナ禍における報酬改定の議論でオンラインを活用した支援体制を報酬上に位置付けるのであれば一定の基準がほしい」と指摘。さらに「精神障害者の地域移行が進んでいない」と指摘し、そのための支援体制として、「市町村や保健所などの行政の関与を位置づける新しい仕組みづくり」を要請した。相談支援について、「6つの論点全てに関わるので、大きな柱建てをして議論したほうが有効な相談支援体制を整備できるのではないか」と提案した。
設置が進まない地域生活支援拠点等について、小川アドバイザーの主張に賛意を表明。拠点等を構成するサービスには加算が創設されたりしたが、「拠点そのものの整備には何の評価もない」とし、今後、議論を行うよう求めた。
複数のアドバイザーから相談支援を重視する意見が出されたことを受け、厚労省は相談支援について、今後の議論も踏まえて、12月に報酬改定の基本的な方向性をまとめる段階で、大きな柱として位置付けるか検討する考え。