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苦境に立つ病院経営(中村秀一)

霞が関と現場の間で

大幅に減った患者数

今年1~3月のわが国のGDPは年率で△2.2%と昨年10~12月期(△7.3%)に続き2期連続のマイナスを記録した。4~6月期はコロナ禍で大幅なマイナスは必至で、戦後最大の落ち込みとなる見通しだ。でも、医療需要は経済の変動に左右されにくく大きく落ち込むことはないと思っていた。医療機関への受診は「不要不急」ではないはずだから。

5月27日に公表された病院3団体の「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(最終報告) 」(有効回答数1,307病院)によると大違いだ。この4月の外来患者数は前年4月比で2割減(80.3%)、初診患者数は4割減(58.4%)であった。入院も減少している。在院患者延数は1割減(89.9%)であり、新規入院患者数は2割減(81.1%)となっている。手術件数、救急患者受入数も減り、事態は深刻だ(それぞれ82.4%、65.1%)。

コロナ受け入れ病院ほど経営悪化

この結果、病院の経営状態は悪化するのは当然だ。医業収入は10.5%減となり、医業費用の減は1.3%減にとどまっているので、昨年4月にはプラス1.5%であった医業利益率は△8.6%と赤字に転落した。

コロナ患者の入院を受け入れていない病院の赤字幅が△5.5%に対し、コロナ患者を受け入れている病院の赤字幅は△10.8%と大きくなっている。コロナ患者を受け入れていることは、経済面でも大きな負担となっているのだ。

特定警戒地区と指定された都道府県(北海道・埼玉・千葉・東京・神奈川・京都・大阪・兵庫)にある病院の医療利益率は、△11.4%と全国平均△8.6%より落ち込みが大きい。東京都の病院の医業利益率は△22.5%と最悪の状態である。

第二の医療崩壊を防ぐために

5月以降の状況も気になるところであるが、国の医療費統計がまとまるのは診療月から4~5か月後であり、コロナ禍の医療機関経営に与える影響の全貌は明らかではない。感染爆発による患者数の増大に対処できなくなる医療崩壊を避けるため、私たちは緊急事態宣言下の自粛生活を送ってきた。 しかし、経営破綻する医療機関が続出すれば、国民医療の確保は困難になる。この第二の医療崩壊も防がなければならない。会期末の国会で成立した第2次補正予算で、重点医療機関への支援、医療従事者等への慰労金の支給等を内容とする2兆7179億円が計上されている。

緊急的な支援措置も重要だが、今回の経験を踏まえ、次なるパンデミックに備え、これまでの診療報酬体系では十分対応できていなかった緊急時の空床の確保、感染防御体制の整備など構造的な見直しが必要だ。 

Web版への補足

7月1日に社会保険診療報酬支払基金から2020年4月診療分の確定件数と確定金額が公表された。医科の確定件数は3,870万件で前年同月比△24.2%,確定金額は6,423億円で前年同月比△11.7%であった。やはり落ち込みが大きかったことを示す数字であった。 

(本コラムは、社会保険旬報2020年7月1日号に掲載されました)


中村秀一(なかむら・しゅういち)
医療介護福祉政策研究フォーラム理事長
国際医療福祉大学大学院教授
1973年、厚生省(当時)入省。 老人福祉課長、年金課長、保険局企画課長、大臣官房政策課長、厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政担当)、老健局長、社会・援護局長を経て、2008年から2010年まで社会保険診療報酬支払基金理事長。2010年10月から2014年2月まで内閣官房社会保障改革担当室長として「社会保障と税の一体改革」の事務局を務める。この間、1981年から84年まで在スウェーデン日本国大使館、1987年から89年まで北海道庁に勤務。著書は『平成の社会保障』(社会保険出版社)など。

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