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ICT活用の場合の居宅介護支援費を新設──令和3年度介護報酬改定

令和3年度介護報酬改定では、居宅介護支援も大きく見直される。

ICT活用の場合の居宅介護支援費(Ⅱ)を新設し、逓減制が適用される介護支援専門員1人当たりの担当件数を45件以上の部分からと、現行よりも5件引き上げる。

特定事業所加算を拡充し、複数事業所の連携でも算定可能な特定事業所加算(A)を新設する。

看取り期でサービス利用前に利用者が亡くなったケースでも必要なケアマネジメント業務を行い、一定の要件を満たす場合に居宅介護支援費の算定を可能とする。

報酬告示の見直しを中心に主な内容を見てみる。

参考:第199回社会保障審議会介護給付費分科会


ICT活用等での逓減制を導入

居宅介護支援費については、適切なケアマネジメントの実施などのため、一定件数を超えるとより評価が低くなる逓減制が導入されている。具体的に介護支援専門員1人当たりの取扱い件数が40件未満までは居宅介護支援費(Ⅰ)が、40件以上60件未満の部分は同(Ⅱ)が、60件以上の部分は同(Ⅲ)がそれぞれ適用される。

令和3年度改定では、一定のICT(AIを含む)の活用又は事務職員の配置を行っている事業者を対象とする居宅介護支援費を設定する(新たな居宅介護支援費(Ⅱ)の導入)。逓減制の適用について、新たな居宅介護支援費(Ⅱ)の(ⅱ)では45件以上の部分からとする(60件未満まで)。さらに新区分(Ⅱ)の逓減率についてメリハリをつけ、新区分(Ⅱ)の(ⅱ)・(ⅲ)の単位数を、ICTの活用等を行わない場合の居宅介護支援費(Ⅰ)の(ⅱ)・(ⅲ)よりも引き下げる。

逓減制における介護支援専門員1人当たりの取扱い件数の計算に当たり、現在、事業所が自然災害や感染症等による突発的な対応で利用者を受け入れた場合は、例外的に件数に含めないこととしている。事業所がその周辺の中山間地域等の事業所の状況からやむを得ず利用者を受け入れた場合も例外的に件数に含めないこととする。

特定事業所加算の見直し

経営の安定化、質の高いケアマネジメントの一層の推進を図る観点から特定事業所加算について次のように見直す。

まず①必要に応じて、インフォーマルサービスを含む多様な主体等が提供する生活支援サービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画の作成を要件で求める。

②小規模事業所が事業所間連携により質の高いケアマネジメントを実現していくよう、事業所間連携により体制確保や対応等を行う事業所を評価する「特定事業所加算(A)」を新設する(100単位/月)。

③現行の加算(Ⅳ)について、病院との連携や看取りへの対応状況を要件とするものであることを踏まえ、別個の「特定事業所医療介護連携加算」とする(単位数や要件は現行の加算(Ⅳ)と同じ)。

④前出のICT等を活用した場合の逓減制の導入を踏まえ、介護支援専門員1人当たりの取扱い件数を見直す。

⑤現行の加算(Ⅰ)~(Ⅲ)について単位数を引き上げる。

看取り期のサービス利用前の相談・調整等を評価

居宅介護支援でも看取り期の適切な対応や医療介護連携を推進する観点から評価を行う。

具体的に居宅サービス等の利用に向けて介護支援専門員が利用者の退院時等にケアマネジメント業務を行ったものの利用者の死亡によりサービスの利用に至らなかった場合、モニタリングやサービス担当者会議における検討など必要なケアマネジメント業務や給付管理の準備が行われ、サービス提供が行われた場合と同様のケースでは、居宅介護支援費の算定を可能とする。関係通知を改正する。

現行では、たとえば末期がんの患者が最期を在宅で過ごすことに向けてサービス利用を準備していても容態が急変して亡くなった場合、サービス利用の実績がない場合、基本報酬の請求はできない。

算定要件として、▽必要なケアマネジメント業務を行い、給付管理票の(原案の)作成など請求に当たって必要な書類の準備を行っていること▽居宅介護支援費を算定した旨を適切に説明できるよう個々のケアプラン等において記録で残しつつ、居宅介護支援事業所で書類等を管理しておくこと─を求める。

医療機関との情報共有を促進

医療機関との連携の強化では、利用者が医療機関で医師の診察を受ける際に介護支援専門員が同席し、医師等と情報共有を行い、ケアマネジメントを行うことを評価する「通院時情報連携加算」を新設する(50単位/月)。算定要件は次のとおり。

▽利用者1人つき1月に1回の算定を限度とする。

▽利用者が医師の診察を受ける際に同席し、医師等に利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報を提供し、医師等から利用者に関する必要な情報の提供を受けた上で、ケアプランに記録する。

退院・退所時のカンファレンスの充実

居宅介護支援の退院・退所加算で求められるカンファレンスの要件で、退院・退所後に福祉用具の貸与が見込まれる場合には、必要に応じて福祉用具専門相談員や作業療法士等が参加することを関係する通知に記載する(単位数は変更なし)。退院・退所時のスムーズな福祉用具貸与の利用を進めるため。

施設系サービスの退所時の支援に係る加算の退院・退所時のカンファレンスでも同様に見直す。

介護予防支援の委託で加算新設

地域包括支援センター(介護予防支援事業所)が介護予防支援を居宅介護支援事業所に委託する場合の情報共有等を評価する「委託連携加算」を新設する。利用者1人につき介護予防支援を居宅介護支援事業所に委託する初回に限り、300単位/月の算定を可能とする。包括は、加算で得た収入も踏まえ、居宅介護支援事業所に委託費を支払う。

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