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訪問系サービスや居宅介護支援について議論(8月19日)part1

社会保障審議会介護給付費分科会は(田中滋分科会長)19日、令和3年度介護報酬改定に向け、①訪問看護、②訪問リハビリテーション、③訪問介護、④訪問入浴介護、⑤居宅療養管理指導の訪問系5サービスと、⑥居宅介護支援・介護予防支援について検討した。

検討状況について4回に分けて紹介する。part1では、訪問看護と訪問リハについて取り上げる。

訪問看護では、ステーションからの理学療法士等による訪問が増加していることを問題視する意見が複数の委員から出された。また退院当日の訪問看護について算定できるように求める声も上がった。訪問リハでは、総合事業の短期集中予防サービスとの関係も論点になった。


訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問の増加を問題視

訪問看護の請求事業所数は平成23年の7683事業所から増加傾向であり、平成31年には1万1795事業所になっている。

訪問看護の利用者の平均要介護度は2.4。最も多いのは要介護2で22.7%、次いで要介護1で19.9%などとなっている。費用額は2570億円だ。

訪問看護ステーションの現状をみると、全従事者に占める看護職員の割合は71%であり、低下傾向である一方、理学療法士などリハ専門職の割合が高まっている。また訪問看護費の請求に占める理学療法士等の請求の割合は年々増加傾向であり、令和元年5月審査分で53.9%と、過半数を超えていることが報告された。

理学療法士等の訪問によるリハビリテーションの提供も、訪問看護の一環として行われるものと位置づけられている。

平成30年度改定では、理学療法士等による訪問について1回あたり6単位減算して296単位にするとともに、看護職員との連携を強化するなど、運用上の見直しが行われた。

分科会では、理学療法士等による訪問が増加傾向であることを複数の委員が問題視した。

協会けんぽの安藤伸樹委員は、理学療法士等の訪問について一定の理解を示しつつ、医療の必要な高齢者が増加する中で、訪問看護が十分に役割を果たしていけるか疑問を示した。理学療法士等の多い訪問看護の実態等の分析を深めることを要請。「必要に応じて、看護職員の割合や看護職員による訪問割合を基にメリハリある報酬体系にすることを考える必要もある」と提起した。

日本看護協会の岡島さおり委員は、リハ専門職が多い訪問看護ステーションで連携体制がきちんととれているのかなどと指摘し、「サービス提供実態を踏まえて、看護職員とそれ以外の職員の比率を人員配置基準に追加するなど次回改定に向けて検討が必要ではないか」と述べた。

また岡島委員は、退院日当日の訪問看護が、気管カニューレを使用している状態など、厚生労働大臣が定める状態(別表8)など一部を除き、原則として算定不可となっている点に言及。急な病状変化などで家庭での介護力では対応できないような場合や、単身高齢者で療養環境を整えるのが非常に難しい場合などを例示し、「介護保険の中で必要と認めた方に別表8以外の状態でも退院当日の報酬算定を認めてほしい」と要望した。

岡島委員は、30年度改定で創設された「看護体制強化加算(Ⅰ)」の算定状況が2.6%(事業所ベース)で低調な要件について、特別管理加算やターミナルケア加算などほかの加算の算定状況を要件にしていることに起因すると説明。医療保険の訪問看護に移行したり、または状態が改善して特別管理加算の算定から外れるなど、「高い機能を発揮しているから利用者の変動がある」と指摘。ターミナルケア加算について医療保険のものを合算したり、特別管理加算の算定者の割合を引き下げるなどの要件の見直しを求めた。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員も岡島委員と同様に「リハビリ専門職に特化した訪問看護ステーションは問題」とし、訪問看護ステーションについて「看護職員の割合を求めるべき」とした。
また退院当日の訪問看護について6割が「訪問できなかった」「訪問したが、訪問看護費を算定しなかった」となっている状況から、「緊急時の訪問看護であり、医療保険であれ、介護保険であれ算定できるようにすべき」と主張した。

日本医師会の江澤和彦委員も、訪問看護のリハ専門職の訪問について実態が訪問リハと同様であれば訪問リハからサービスを提供すべきとして、検討の必要性を指摘。また岡島委員に同調し、看護体制強化加算の要件の見直しを求めた。


訪問リハと短期集中予防サービスとの関係も論点に

訪問リハの請求事業所は年々、増加傾向であり、平成31年には4614事業所になっている。開設者種別では、病院・診療所が81%、老健施設が19%となっている。受給者数も増加傾向であり、特に要支援者が増えている。平成31年では19年から5倍程度増加している。

 利用者の平均要介護度は2.4。最も多いのは要介護2で23.5%、次いで要介護1と要介護3が16.6%で続く。費用額も年々増加しており、30年度で約500億円だ。

30年度改定では、訪問リハにおけるリハビリテーションマネジメン加算を見直し、VISITに情報提供している場合に対して評価を導入した。訪問リハ事業所でVISITシステムを導入しているのは4%にとどまっており、その理由としては「VISITがよくわからない」「導入のメリットがない」などが挙げられている。

また30年度改定では、事業所評価加算が介護予防訪問リハにも導入されたが、「介護度の認定期間が長く、改善の結果が得られにくい」などの課題も報告されている。

他方、総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の訪問型サービスに導入されている短期集中予防サービスについて、実施する自治体は43.8%と4割を超える状況が報告された。総合事業の同サービスは要支援者にも提供が可能だ。こうしたサービスとの役割分担も論点として出された。

日本経団連の井上隆委員は、訪問リハについてADL等のアウトカム評価を重視するように求めた。その一環としてVISITの推進のため「有効性を共有できるというフィードバックを充実させていく」ことが重要とした。

全老健の東委員は、訪問リハのVISITへの情報提供が少ない状況について「バーサルインデックスを手打ちしているという現場の負担感も大きな要因」とし、現場に負担感のない情報収集の方法の検討を求めた。

健保連の河本滋史委員は、訪問リハについて、総合事業の短期集中サービスの実施状況を見極めて、要支援者の訪問リハを総合事業に移行していく必要性を指摘した。

日医の江澤委員は、訪問リハについて認知症短期集中リハがないことに触れ、「ニーズがあれば検討課題」と指摘した。

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