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介護分野の文書の負担軽減で2020年度以降の取り組みを提示(3月30日)

厚労省は3月30日、社会保障審議会介護保険部会の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(野口晴子委員長)に、介護分野の文書に係る主な負担軽減に向けた昨年12月の中間取りまとめを踏まえた取り組みの進捗と今後の進め方を示し、意見を求めた。

厚労省は、2020年度には加算の添付書類の様式例の検討や変更届における簡素化、更新時の提出書類の精査などを進める方向を提示。調査研究事業を進めながら委員会で更に検討を深め、結論に応じて速やかに省令改正や通知・事務連絡を発出する方針を示した。


介護医療院への移行における提出事項の一部簡素化を前倒し

中間取りまとめでは、指定申請や介護報酬の請求、指導監査において、簡素化・標準化・ICT等の活用を進めて、文書作成・提出等の負担軽減を行う方針を提示。内容に応じて➀2019年度内目途②1~2年以内③3年以内─に分けて進めていくこととしている。前倒しで実現できるものがあれば、順次取り組む。

このうち2019年度以内の取り組みとしては、たとえば指定申請の提出書類の簡素化等に取り組んでおり、負担軽減について3月6日付で老健局長通知を発出。また介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算の申請様式の一本化など簡素化について3月5日付けで老健局長通知を発出した。指定権者には原則、様式に変更を加えないことも周知した。

他方、介護療養型医療施設から介護医療院への移行における開設許可申請の際に提出する事項について、介護療養型の指定の更新を受けた時点から変更が無い場合には、一部を省略することを可能とする改正省令を年度内に公布し、7月1日から施行する予定だ。この見直しは中間取りまとめでは「1~2年以内」に取り組むこととなっていたが、前倒しすることになった。

速やかな省令改正や通知・事務連絡の発出も

厚労省は、2020年度の進め方として、3つの調査研究を進めながら委員会で更に検討を深め、結論に応じて速やかに省令改正や通知・事務連絡を発出する方針を示した。また介護給付費分科会でも議論を進める可能性があることを説明した。

2020年度に実施する調査研究とは、①介護分野の文書の簡素化・標準化に向けた調査研究事業②介護保険法に基づく実地指導等事務の効率化方策に関する調査研究③情報公表システムを活用した介護現場における文書負担軽減に関する調査研究事業─の3本。

このうち①は、主に指定申請・報酬請求の簡素化・標準化に関する1~2年以内の取り組みつき、更なる実態把握、課題の整理・分析及び対応方策案の具体化を行う。また③は、ICT等の活用の一環で、介護サービス情報公表システムを利用した指定申請・変更等の入力項目の標準化等の実現について検討する。指定申請・報酬請求でウェブ入力や電子申請を推進すべきとの意見を受けたもので、2021年度以降、システム開発等につなげていく。

変更届での簡素化や更新時の提出書類の削減を進める

2020年度の調査研究を活用して進める簡素化・標準化の取り組みは次のようなことが紹介された。

指定申請・介護報酬請求において人員交代に伴う頻繁な変更届の提出などの負担が指摘されていることから、省令に定める変更時に届出が必要な項目を精査するとともに、変更届の様式例や添付書類の範囲を整理する方向で見直しを検討する。

併設事業所や、予防サービスや援総合事業など複数指定を受ける事業所に関して文書や手続きの重複が指摘されており、簡素化を検討する。

たとえば▽同一事業所での介護サービスと予防サービスで類似の書類を一本化する。▽介護サービス事業所の指定を受けている事業所の総合事業の指定申請に関して簡素化する。▽介護サービスと予防サービスで指定開始日が異なる場合、更新日を近い方に合せて集約し、更新申請が6年に一度で済むようにする。 総合事業や加算の添付書類等の様式例の整備とともに、それ以外の標準化のための有効な方法(ガイドラインの作成等)について検討する。

更新申請時に求められる書類について、たとえば特養では最も少ない自治体で申請書と誓約書の2枚である一方、最も多い自治体で149枚に上るなど、格差が大きいため、調査研究も活用して実態把握を行うとともに、なるべく少なくする方向で検討する。

他方、指導監査については、既に示されている標準化・効率化指針に基づく実地指導の実施状況を把握するとともに、指針の見直しも視野に自治体に対してアンケートを実施するとともに、分析や効率化方策についてさらに検討する。

意見交換では、処遇改善加算等の申請様式が一本化されるとともに、自治体で変更を加えないことを周知したことから、「標準様式が活用されている」と厚労省の取り組みを評価する声が上がった。

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