地域共生社会や子ども家庭政策などについて講演-社会保険旬報「地方から考える社会保障フォーラム」開催(4月25日)
地方議員らが参加する第26回【社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」セミナー】が4月25日に都内で開催され、全国の参加者にオンライン中継された。厚生労働省の山本麻里社会・援護局長、鳥井陽一大臣官房会計課長、川又竹男大臣官房審議官が地域共生社会や子ども家庭政策などについて講演した。
相互に支える伴走型の支援体制を整備
山本麻里社会・援護局長は「コロナ禍の経験を踏まえた地域共生社会の実現」と題して、生活困窮者自立支援制度や生活保護支援制度などについて講演した。
コロナ禍で高齢者の交流機会が減少し、自殺者が11年ぶりに増加。このような背景から、生活困窮者の自立と尊厳の確保と生活困窮者支援を通じた地域づくりを目標とする、生活困窮者自立支援制度の導入を進めるとした。
また、生活保護についても、「コロナの経験を踏まえた見直しが必要」と強調。生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の「重なり合う支援」の実現に向けた議論を深め、就労準備支援事業、家計改善支援事業等のより一層の連携方策を検討すべきとの考えを示した。
今後の支援については、具体的な課題解決をめざすアプローチとつながり続けることをめざすアプローチの両輪とする「伴走型の支援」が重要であり、地域共生社会の実現に向けて、多分野協働のプラットフォームの整備が必要だとした。
山本氏は、「人間は一方的に支えられるだけでは自己肯定感は生まれない。支援にあたって、一方的な関係ではなく相互に支えられる関係をめざす。地域にはさまざまな資源が転がっており、それを本当の地域資源にしていくことが重要」と述べた。
歳出削減のため引き続きの努力が必要
鳥井陽一大臣官房会計課長は、2022年度の厚労省予算をテーマに講演した。
令和4年度厚労省予算は一般会計が33兆5160億円と過去最大。うち、社会保障関係費が33億1833億円で、その他の経費が3327億円となった。高齢化等で増加を見込む一方、歳出改革による削減の結果、前年度比の伸びは1.1%に抑えられたと説明した。
令和4年度の社会保障関係費の伸びは、制度改正等により▲2200億円となった。大半は薬価改定等によるもので、そのほか後期高齢者医療の患者負担割合の見直しや、被用者保険の適用拡大等によるもの。鳥井氏は、「申し訳ない部分もあるが、ぎりぎりの努力をしていく必要があるだろう」と述べた。
また、コロナ禍の影響を受けて消費税引下げの議論がされていることに触れ、消費税5%から10%への増収分のうち約4兆円が社会保障関係費に充てられていると紹介し、その意義を強調した。
「こどもまんなか社会」の実現めざし、こども家庭庁を創設
川又竹男大臣官房審議官は「子ども家庭政策の現状と課題」と題して、少子化やこども家庭庁創設などについて講演した。
少子化の現状について、新型コロナの流行が影響し、婚姻件数や妊娠届出数が減少傾向にあると指摘。出生数も減少傾向が続いているとした上で、「これが一過性のものであればよいが、今の段階で今後を見通すのはやや難しい」と述べた。
現在、国会では「こども家庭庁」創設に向けた関係法案が審議されている。こども家庭庁は総理大臣直属の機関と位置づけられ、こども政策の強い司令塔機能を持つ組織となることが説明された。こども家庭庁の大臣は、各省大臣に対する勧告権をもつ。子どもの福祉や保健を目的とする法律や事務がこども家庭庁に移管されるが、こどもに必要不可欠な教育は従来通り文部科学省の担当とする。政府はこども家庭庁の創設時期を令和5年4月1日としている。
川又氏は、「『こどもまんなか社会』の実現に向けて、常に子どもの視点に立ち、こどもの権利条約なども踏まえて、こども家庭庁の創設をめざしている」と述べた。
―――講演の詳細は後日、「社会保険旬報」に掲載します