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厚労省が地域医療構想の進捗状況を報告 対応方針が合意済の医療機関は60%に(2023年5月25日)

厚労省は5月25日の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)に、地域医療構想の進捗状況を報告した。地域医療構想調整会議で協議される対応方針が措置済を含め「合意・検証済」となった医療機関は、半年間と比べ、36%から60%に上昇。厚労省は、「進捗が認められる」と評価した。ただ、委員からは、対応方針の具体的な内容がわからないことやデータ活用の不十分さを問題視する意見が出た。

公立・公的病院の策定も進展

地域医療構想の進捗状況を把握するため、各医療機関の対応方針の策定や検証・見直しの状況などについて、厚労省が都道府県に確認を求めた結果を集計した。

各構想区域の医療機関の対応方針が、令和5年3月末時点で、措置済みを含む「合意・検証済」となっている割合は、半年前の令和4年9月末時点と比べると、医療機関単位では36%から60%、病床単位では61%から76%に上がっている。


対応方針の措置済みを含む「合意・検証済」の割合が80%を超える都道府県は16府県。「合意・検証済」・「協議・検証中」の割合が50%に満たない都道府県は9県となっている。「協議・検証未開始」の医療機関に、その理由をきくと、「新型コロナ対応の経験を踏まえ、改めて検討中」が最も多い。


地域医療構想においては、公立・公的病院の対応方針の策定を優先してきた。それもあり、436の再検証対象医療機関を除き、公立病院の措置済または策定済の割合は99%、公的病院では97%にまで高まった。

「それぞれの調整会議がかなり努力した結果」

一方、厚労省の分析により、急性期の「診療実績が特に少ない」と判断され、再検証が求められた公立・公的病院の再検証の措置済・検証済の割合は、53%から58%へのわずかな上昇となっている。
また、措置済・検証済とされた253病院のうち、57病院が「従前どおり」となっていた。


民間病院などその他医療機関の措置済または合意済の割合は、29%から55%に上がったが、公立・公的病院と比べると、取組みは遅れている。健保連の幸野庄司委員は、民間病院の取組みの加速化を求めた。

一方、日本医師会の猪口雄二委員は、医療機関単位で「合意・検証済」が36%から60%に上がったことから、「それぞれの調整会議がかなり努力した結果であり、それなりの成果が出ている」と評価した。

地域医療構想の評価が調整会議の開催や対応方針の合意などプロセス指標のみになっており、具体的な成果として、何を実現したかが明確にわからないことに対しては、改善が求められる意見が出た。

日本医療法人協会の伊藤伸一委員は、「複数病院が合併し巨大公的病院ができて、二次救急を担う地域の民間病院の存続を危うくしかねない事例が出ている。追跡調査を含め、ワーキンググループで議論すべき」と主張した。

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