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災害時における高齢者福祉施設の円滑な避難に向け検討会が初会合(10月7日)

国交省と厚労省は7日、「令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会」の初会合を開催した。

研究者や自治体関係者、福祉施設関係者など9名が参加。座長には、鍵屋一・跡見学園女子大学教授がついた。

検討会は、7月の豪雨災害で熊本県の球磨川流域の氾濫により、球磨村の特別養護老人ホームで14人が亡くなったことを踏まえ、高齢者福祉施設における避難の課題を確認したうえで避難の実効性を高める方策について議論し、年度内に取りまとめる予定だ。国交・厚労両省はそれを受け、施策等を見直す考え。

球磨村の特養は、平成30年4月に避難確保計画を作成。川と山に囲まれる地域に立地しているが、これまで浸水しておらず、球磨川の導流堤も完成したため、周辺の大規模水害の可能性は低いと考え、洪水より土砂災害の危険性を重視。避難確保計画も土砂災害のみを対象とするなど、事前の備えに課題があったことが報告された。また浸水時には避難誘導するための職員が参集できなかったことや、施設の2階への利用者の避難に時間がかったことなども示された。

国交・厚労両省は検討の論点として、▽全ての事象(自然災害)を想定した適切な避難先の選定▽迅速な避難に資する施設の体制の確保、設備の充実▽施設における防災リーダーの育成、他施設との連携、関係団体の支援▽避難確保計画及び訓練の内容の適正化・充実、行政の関与─を提示した。

また厚労省は今回の被害を踏まえて、新たに介護施設等における水害対策の支援メニューを地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金に導入することを紹介。具体的に広域型を含めた既存施設における垂直避難用エレベーターやスロープ、避難スペースの確保等に関する改修工事等を補助する。今年度から実施する予定だ。

委員からは、施設担当者のみで避難確保計画を作成しても実態と乖離した計画になってしまうことがあるとして、市町村の防災担当部局を巻き込んだ体制で計画を作成する重要性が指摘された。防災の人材育成を支持する声も上がった。

鍵屋座長は、高齢者施設における対応をまず検討するが、検討の成果を障害者施設や児童福祉施設、学校、病院などに展開していくことに期待を寄せた。


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