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社会福祉法等一部改正法案の参議院での審議が開始(5月29日)

「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」は5月29日、参議院本会議にて趣旨説明及び与野党からの質疑が行われ、審議が開始した。6月2日からは厚生労働委員会で審議が深められる。同法案は、今通常国会で成立の見通し。


顔認証付きカードリーダーの導入を批判

安倍晋三総理大臣は、田島麻衣子議員(立憲民主党)からの問いに答え、介護人材の処遇改善について答弁。「累次の処遇改善により自公政権で月額5万1千円の処遇改善を行ったが、昨年10月からは月額8万円の更なる処遇改善を行ったところ。その時点での当該処遇改善の実施率は全体の5割強にとどまっていたが、さらに2割の法人が実施を検討しており、その実施を促していくことで現場の介護士の賃金の向上を実施していく」

また、来年3月から医療保険のオンライン確認の実施でマイナンバーカードを健康保険証の代わりに使うことができるようにする。そのため医療機関における顔認証付きカードリーダーの導入を促進する。この点について田島議員は、「被保険者番号ないしマイナンバーをオンラインで確認する仕組みを作れば十分。1台9万円もする(顔認証付き)カードリーダーをわざわざ全医療機関等に提供する必要はない」と批判した。

安倍総理は、顔認証付きカードリーダーについて、「患者がマイナンバーカードを健康保険証の代わりに使用する場合に医療機関の窓口で確実な本人確認や資格確認を効率的に行うために整備するものとしている。必要なシステム整備と考えている」と答えた。

介護保険制度の20年の総括と2040年のあるべき姿を尋ねる

下野六太議員(公明党)は、2000年度から介護保険制度が開始し20年がたったことの総括と2040年を見据えた今後の介護保険制度のあるべき姿を安倍首相に尋ねた。

安倍総理は、次のように答弁。「介護保険制度はそれまで家族が多くを担っていた高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとすべく創設された。それから20年がたち、高齢者数は約1.6倍となる中で、サービス利用者は3倍超の約500万人となり、介護が必要な高齢者の生活の支えとして、また介護離職を防ぐ手立てとして定着・発展してきた。今後、2040年に向けて高齢化が一層進展し、介護需要がさらに増加・多様化すると同時に、現役世代の減少が顕著となる。こうした状況を踏まえれば介護保険制度において介護人材の確保、地域に応じた介護基盤の整備、介護予防・健康づくりの推進などが、より重要になると考えられ、ご審議いただいている社会福祉法等改正法案でもこうした課題への対応を盛り込んでいる」

介護福祉士の業務独占とサ高住の厚労省単独の所管を主張

東徹議員(日本維新の会)は、介護福祉士の介護分野における業務独占を行うことを指摘した。

加藤勝信厚生労働大臣は、「介護は日常生活を支援するものであり、国民誰もが参画できることがメリット。介護分野に業務独占を導入することはこうしたこととの兼ね合いを考える必要がある」と答えた。一方、介護福祉士が現場のチームリーダーとしての役割を発揮することが重要とし、厚労省では、▽介護福祉士を中心としたチームケアの先駆的な取り組みの全国展開に向けた支援や▽介護福祉士のキャリアモデルの在り方についての検討─に取り組んでいることを説明した。

また東議員は、「サービス付き高齢者向け住宅と介護施設の役割分担を明確にし、それぞれの配置の最適化やサービスの質の向上を図る必要がある」と指摘。サ高住が厚労省と国交省の共管では、「いつまでもサービスの最適化はできない」とし、補助金なども含め、厚労省で介護施設とともに一体的に所管すべきと主張した。

赤羽一嘉国土交通大臣は、「サービス付き高齢者向け住宅は政策上、社会福祉施設ではなく、住宅として位置付けられている。その要件はバリアフリー等のハード面の基準の適合と安否確認等のサービス提供を必須とすべきもの。バリはフリー等のハード面の基準は主として国土交通省が担当し、安否確認等のサービスについては国土交通省と厚生労働省の両省で共管する。入居者が利用する介護保険サービスについては厚生労働省が介護保険法に基づき、自治体を通じて指導監督する立場にあると認識している」と説明。そのうえで入居者の大半が介護サービスを利用していることから、国交省としては厚労省とより緊密に連携する考えを示した。

社会福祉連携推進法人の貸付業務を質す

倉林明子議員(共産党)は社会福祉連携推進法人による貸付業務について質した。

加藤厚労大臣は、「社会福祉連携推進法人が行う貸付業務は、社会福祉法人の経営基盤の強化を図りうるようにするため、社員である社会福法人に対し、社会福祉事業に必要な資金を支援するために認めるもの。仮に個々の社会福祉法人の経営が悪化した場合、自主的な再建や金融機関からの融資など様々な対応があり得るが、あくまでも当該社会福祉法人の自主的な判断で対応を決めることになると考えている」と説明した。

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