第14回 社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」開催される(11月15日)
第14回となる社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」(主催:地方から考える「社会保障フォーラム」事務局)が11月15日㈬、16日㈭の2日間にわたり開催され、全国各地から41名の地方議員が参加した。
ここでは、1日目の講義内容を速報する。
第14回地方から考える「社会保障フォーラム」プログラム
【11月15日㈬】
講義1:地方自治体における「健康経営」の推進
講師:尾形裕也氏(九州大学名誉教授)
講義2:児童虐待防止に地域はどう関わるか
講師:宮腰奏子氏(厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課虐待防止対策推進室長)/石川治江氏(ケア・センターやわらぎ代表理事)/田沢茂之氏(子どもすこやかサポートネット代表理事)
講義3:夢をつむぐ子育て支援~希望出生率1.8がかなう社会の実現をめざして~
講師:吉田学氏(厚生労働省子ども家庭局長)
【11月16日㈭】
講義1:厚生労働行政と地方自治体―地域包括ケアシステムと関連して
講師:谷内繁氏(厚生労働省大臣官房審議官・老健担当)
講義2:地方財政の課題―分配モデルからの転換―
講師:田中秀明氏(明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授)
「健康経営」の考え方を地域コミュニティに適用する―尾形氏
事務局の開講の挨拶に続いて、まずは尾形裕也氏が「地方自治体における『健康経営』の推進」をテーマに講義。
尾形氏は、欧米諸国ではこの20年の間に、医療・健康問題を単なるコストととらえることから、人的資本への投資と考える考え方に転換してきた。
それが、健康と生産性を同時にマネジメントする「健康経営」という考え方で、企業や組織にとっては、重大な経営問題にほかならないと説明。 さらに尾形氏は、こうした健康経営の考え方を日本の企業、組織、さらにはコミュニティへ適用できないかと提案する。
そのうえで、日本は皆保険体制による統一性があることから健康経営に取り組む比較優位性を持つと指摘。
東京都荒川区の「区民と取組む健康増進計画」、埼玉県の「市町村の特性を活かした糖尿病重症化予防対策」、協会けんぽ愛知支部が実施する、健康づくりに取り組む事業所をサポートし、認定・表彰する「健康宣言」の取り組みを取り上げ、健康経営の地域での適用実践例を紹介した。
市町村における児童の支援体制を説明―宮腰氏
続いて、宮腰奏子氏が「児童虐待防止対策について」と題して講義。児童福祉法に基づいて保護が必要とされる要保護児童等の早期発見や適切な保護や支援を図るため、市町村には要保護児童対策地域協議会を設置して、関係機関が情報を共有し、連携して児童に対する必要な支援を行っていることを説明した。
また、児童が直面するリスクの程度に応じて、低位での子育て世代包括支援センターから、リスクの程度が高まると市区町村子ども家庭総合支援拠点において必要な支援を行い、さらにリスク高位になると都道府県における児童相談所が対応する支援体制であることを紹介した。
地域における虐待防止対策の取組を紹介―石川氏・田沢氏
石川治江氏は、虐待を受けた若者が描いた絵本をもとに、自身も油絵の描いていた経験を生かし、3年前に児童虐待予防の絵本を作った。この絵本を母子手帳といっしょに配布する活動を通じて、児童虐待の防止に努めていきたいと話した。
また、田沢茂之氏は、「愛の鞭(ムチ)ゼロ作戦」について紹介。「体罰や暴言による『愛の鞭』は捨てて、子どもの気持ちに寄り添いながら、前向きに育んでいきましょう」と訴えた。
子育て支援は地域と一緒に考えるまち・コミュニティづくり―吉田氏
今回の社会保障フォーラム1日目最後の演台に立った吉田学氏は、「夢をつむぐ子育て支援~希望出生率1.8がかなう社会の実現をめざして~」と題して講義。
吉田氏は、まずは少子高齢化など子育て支援をめぐる現状を踏まえたうえで、これまで取り組まれている子育て支援策を説明した。
そのうえで、地域と一緒に考えていきたいことは、まずは「顔の見える関係」作りから始め、問題意識と情報を共有することだと言う。それは結局まちづくり・コミュニティづくりということになるが、それは行政だけでは無理なので、地域のキーパーソンを見つけ出すことが大切だと話す。
そして、取組の基本単位は市町だが、市町の役割や人にも限りがあるので、広域連携をしたり、都道府県の役割となったりすることにもなるが、国としては予算や制度で、第一線の取組をバックアップしていくと話を結んだ。