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介護保険部会が次期制度改正に向け議論を開始(3月24日)

社会保障審議会の介護保険部会は3月24日、2024年度の次期介護保険制度改正に向けた議論を開始した。1年8か月ぶりの開催で、厚労省から最近の介護保険制度の動向について説明を受け、フリーディスカッションを行った。

委員からは給付と負担のあり方や介護人材の確保策について意見があがった。

給付と負担のあり方や人材確保等についてフリーディスカッションが行われた

介護保険部会は、2019年12月に「介護保険制度の見直しに関する意見」をまとめた。

これを踏まえ、昨年4月施行の制度改正では、地域共生社会の実現に向けて介護保険制度の見直しが必要との観点から、市町村の包括的な支援体制の構築の支援、医療・介護のデータ基盤の整備の推進などが盛り込まれた。

しかし、「意見」では給付と負担については、◇被保険者範囲・受給者範囲◇多床室の室料負担◇ケアマネジメントの給付のあり方◇軽度者への生活援助サービス等の給付のあり方◇「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準―を引き続きの検討としている。

また、昨年3月の政府の新経済・財政再生計画改革工程表では、ケアプラン作成や多床室室料、軽度者への生活援助サービスの給付のあり方の検討などを明記。さらに、昨年5月の財政制度等審議会の財政健全化に向けた建議では、利用者負担の原則2割やケアマネジメントの利用者負担の導入などの見直しを求めている。

こうした給付と負担のあり方の見直しの指摘に対し、意見が出た。

健保連の河本滋文委員は、「制度の持続可能性に向け、利用者負担や給付内容の見直しなど前回先送りされた項目を含めて踏み込んだ見直しを行うべきだ」と発言した。利用者負担は原則2割にし、3割負担である現役並み所得者の対象範囲の拡大を提案。ケアマネジメントの利用者負担も求めた。多床室の室料負担や軽度者の生活援助サービスの給付は、「負担の公平性やサービスの重点化の観点から見直しを図るべき」と述べた。

全国市長会の大西秀人委員(高松市長)は、2040年を見据えた制度の持続可能性の確保が必要とし、保険者のあり方として現行の市町村から、広域化を含む体制の見直しの検討を求めた。

日本介護支援専門員協会の濱田和則委員は、ケアマネジメントの利用者負担導入について「対応によっては自治体などの他の窓口の支援に転嫁されたり、社会的入院・入所などが増加し、結果的に社会コストが大きく膨らんでしまう。介護保険制度創設時の理念が失われるケースも懸念される」と述べ、現行給付の維持を求めた。

認知症の人と家族の会の花俣ふみ代委員は利用者の負担増の議論に対し、「払える人には払ってもらうべきとの意見があるが、高齢者介護を必要とする人たちの負担能力がどのくらいあるのかといった資料を見たことがない。まずは負担できるかどうかを調べることが不可欠だ」と指摘した。

一方、介護人材の確保策についても意見があがった。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、人手不足のなかで介護職員を大幅に増やすことは現実的ではないことを指摘し、「いわゆる元気高齢者など『介護助手』を現場に多く投入することで介護職員の業務を減らし、少ない介護職で多くの要介護高齢者を看ることができる」と提案した。

日本医師会の江澤和彦委員は、介護従事者のモチベーションについて「ケアの質によって利用者が元気になる『成功体験』の蓄積が介護を続けることができる特効薬だ。ケアの質の向上と人材確保は相互に補完する関係であることを政策に取り入れてほしい。離職理由の上位は賃金ではなく、トップは職場の人間関係で、女性に働きやすい職場環境の整備、法人・施設の理念・基本方針となっている。本質に迫るような人材確保政策が必要ではないか」と述べた。

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