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重度障害者の外出支援における新たな加算の創設を求める(7月21日)

厚労省の障害福祉サービス等改定検討チームは7月21日、令和3年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けて、関係団体のヒアリングを継続した。ヒアリングは3回目。今回は、①日本精神神経科診療所協会②全国脊髄損傷者連合会③全国地域で暮らそうネットワーク④全国自立生活センター協議会⑤日本身体障害者連合会⑥障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会⑦全国児童発達支援協議会⑧全国地域生活支援ネットワーク⑨日本自閉症協会─の9団体から意見を聴取した。

重度障害者の外出支援での新たな加算の創設や、精神障害者等に適切に対応できない介護保険のケアマネジャーへの再研修の必要性、ピアサポート職員の配置への評価など、多様な意見が出された。また複数の団体が食事提供体制加算の継続を求めた。

ピアサポート職員の配置への評価を要望

全国脊髄損傷者連合会は、重度障害者等包括支援の対象者や障害支援区分6の重度者に対する重度訪問介護の報酬単価を引き上げることを要望した。

また緊急事態宣言が全面解除されたが、重度障害者が公共交通機関を利用することはいまだに新型コロナウイルス感染症の感染リスクが高く、外出時に自家用車での移動が必須であるとし、重度訪問介護に「停車時介護加算(仮称)」を創設することを提案した。障害者の自家用車や障害者が手配したレンタカーなどに限り、通院等介助(身体介護を伴う場合)の単価水準を上限とするとしている。

日本精神神経科診療所協会は、医療と福祉の連携において、障害支援区分認定やそれに基づく支援計画について主治医に報告する必要があると強調した。また障害福祉と介護保険の連携の重要性も指摘。たとえば、ひきこもりの長期化などによる「8050問題」に介護保険のケアマネジャーが対応した場合には「障害のある子どもを入院させるなどの安易な解決策を求めることが多い」とし、ケアマネジャーの再研修が必要とした。

障害福祉サービスに営利企業の参入が増えていることを踏まえ、専門性の確保などの観点から、事業所にPSWなどの専門職を必置するよう求めた。

災害発生時に必要な行動を判断するうえで障害のある方に対して「サービス等利用計画」に災害時対応を加えた場合に加算することも提案した。

全国地域で暮らそうネットワークは、障害者のピアサポート職員の配置への評価や「地域づくり加算」の創設を求めた。また地域ごとに複数の相談支援事業所が協働して運営する形態を条件付き(1事業所に1名の常勤専従者がいる複数の事業者がある程度の移動距離の範囲で運営され、週2回以上の合同ミーティングを実施する等)で認め、併せてそのような事業所には体制に応じて現行の特定事業所加算が算定出来る仕組みの創設を提案した。

全国自立生活センター協議会は、医療的ケアの必要な重度心身障害者や筋疾患を持つ障害者が地域移行できるような仕組みを構築することを求め、医療的ケアが必要な人の地域移行件数が多い相談支援事業所を評価し、新たな加算を設けることを提案した。

日本身体障害者連合会は、医療的ケアを伴う重症心身障害者の生活介護への受け入れを進めるため、現在2段階方式の常勤看護職員等配置加算を配置人数により、3~4段階方式等に拡充し、加算額の引き上げを行うことを提案した。また食事提供体制加算及び送迎加算の継続も求めた。

障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会は、グループホームについて、介護サービス包括型や外部サービス利用型において、世話人の配置基準に新たに3対1、2対1を設ける必要を指摘。高齢化・重度化に対応するため、人員配置を手厚くした事業所を評価するように求めた。

全国児童発達支援協議会は、食育のほか食事に困難さを抱える児童への特別な配慮や摂食指導等に対して食事提供体制加算の継続もしくは「食育加算」の創設を提案した。

全国地域生活支援ネットワークは、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、ICTを活用したリモート面談などが実施されたことなどを踏まえ、ICTやIOTの積極的な活用を提案。「一部分はオンラインで行い、ハイブリットで支援していく」と述べた。さらに指定申請・変更申請など、都道府県等に提出する書類も電子化することを求めた。

日本自閉症協会は、「支援従事者問題が依然としてある。量的な問題と質的な問題がある」とし、「複雑な処遇改善加算ではなく、基本報酬をまず上げていただきたい」と求めた。書類作成事務の簡素化も要望し、そのうえでICT化を進めるように訴えた。    

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