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#37 同居したことのない養子は遺族年金を受給できるか

石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー

今回は、年金受給中のAさんが、妹の孫を養子にした途端に亡くなったケースをご紹介します。養子になった小学生が遺族年金の請求者ということになります。養子縁組はAさんの病気療養中に行われ、そのままAさんは亡くなったので、この子はAさんと生活を共にしたことがありません。この子は遺族年金を受給できるでしょうか。


【事例概要】
死亡者:Aさん(昭和30年10月15日生:68歳/年金受給者)
・婚姻歴なし
・令和5年7月9日にXと養子縁組を届出
・その後、肺がんの病状が悪化して入退院を繰り返す
・令和6年5月30日に死亡
 
請求者:X(平成28年5月10日生:8歳)
・Aさんの妹の孫
・令和3年9月14日に実母のB子さんが協議離婚
・B子さんと2人の兄(C、D)と共に生活を始める
・令和5年7月9日にAさんと養子縁組を届出
・Aさんの病状によりB子さんと同居を続ける(Aさんとは別住所)

同居したことのない養子が遺族年金を請求

老齢厚生年金を受給中のAさんが死亡したとのことで、同人の養子である小学生のXと実母のB子さんが遺族年金の請求に年金事務所に来所しました。
 
B子さんの話によると、AさんはXの祖母の兄にあたり、婚姻をしたことがありません。Xが幼少のころから養子にする意思があり、実際、亡くなる前に養子に迎えていました。
一方、Xの実母であるB子さんは令和3年9月14日に協議離婚の届出をし、Xの父親と離婚後、K市でX及び2人の兄(C、D)と同一世帯で暮らしていました。
令和5年、Aさんが肺がんに罹患していることが判明しましたが、Xは同年7月9日にAさんと普通養子縁組(以下、「養子縁組」と略す)の届出をしました。その後、Aさんが入退院を繰り返し、Xの通学の都合もあり、両者は同居することはありませんでした。
Aさんは治療の効なく、令和6年5月30日に死亡したとのことです。
 
厚生年金保険法第59条第1項によると、遺族厚生年金を受けることができる遺族は「被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母であって、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時、その者によって生計を維持したもの」と規定されています。
ただし、当該遺族が「子」である場合は、同条同項第2号において、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと、と規定されています。
 
また、厚生年金保険法施行令第3条の10によると、被保険者又は被保険者であつた者によって生計を維持していたと認定されるのは「被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」となっています。
 
なお、「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号。以下「認定基準」という)では、遺族厚生年金の請求者が、死亡者との生計同一要件を満たし、かつ収入要件を満たす場合に、生計維持関係が認められるとしています。
 
Aさんの死亡はXとの養子縁組をした後なので、XはAさんの「子」であり、18歳到達年度末までにあります。しかし、Xは養子縁組後も実母のB子さんのもとで生活を送っています。Xは小学生なので収入要件は満たしていますから、生計同一要件を満たしていれば、Aさんとの生計維持関係が認められます。

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