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#10 遷延性植物状態による請求

 日本人の死因上位3つ(いわゆる三大疾病)は、がん、心疾患、脳血管疾患です。これら三大疾病は、死亡の原因になる他、障害状態になる可能性もある疾病です。特に、脳にダメージを与える疾病は、肢体麻痺や高次脳機能障害に陥り、障害状態になる可能性が高くなりますので、脳血管疾患はもちろんのこと、がんであれば脳腫瘍、心疾患であれば、心停止による脳への酸素供給不足により、脳が大きなダメージを受け、障害状態になることも多い事例です。そのダメージの部分が、大脳(思考と行動を制御する部分の脳)と呼ばれる部位ですと、肢体麻痺や高次脳機能障害に限らず、すべての行動や意思疎通に支障をきたす「遷延性植物状態」になる場合もあります。今回の事例は、この「遷延性植物状態」による障害年金請求を検証します。


1.遷延性植物状態とは

 「遷延性意識障害」とも言いますが、今回は「遷延性植物状態」という表現で統一します。
 遷延性植物状態は、体を動かすことはできず、言葉も発することもできませんが、意識はあり、自力で呼吸もできることから、点滴等で生きるための栄養補給が十分であれば、すぐに死亡するような状態ではありません。この点が、自力で呼吸ができず、人口呼吸器を外すと生きていくことができない「脳死」状態とは異なります。
 しかし、治療方法はまだ確立されておらず、回復する可能性は一般的に厳しいと言わざるを得ません。従って、障害年金では、遷延性植物状態に該当した場合、1級の障害と認定されます。具体的にその事例を検証していきましょう。

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