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#41 夫死亡後の収入減見込みで遺族厚生年金は受給できるか

今回は、代表取締役を務めていた夫が死亡したケースです。夫は生前に体調を崩し、代わりに妻が代表取締役に就任しました。2年余りで夫は亡くなり、妻はその年の年末に代表取締役を退任して会社も退職する予定です。給与収入がなくなるため、収入減が見込まれます。こうしたケースで収入要件の「近い将来の収入減」が認められるかどうか、見ていきます。


【事例概要】
死亡者:A雄さん(昭和28年7月12日生:71歳)
・昭和55年6月10日にB子さんと婚姻を届出
・平成5年5月1日にM社を設立し、厚生年金保険の被保険者資格取得
・令和4年6月25日にM社の代表取締役を退任
・令和5年7月12日に70歳に到達し、被保険者資格を喪失
・令和6年8月5日に死亡(老齢厚生年金受給中) 
請求者:B子さん(昭和30年5月3日生:69歳/会社員)
・昭和55年6月10日にA雄さんと婚姻を届出
・昭和61年4月に国民年金第3号被保険者資格を取得
・平成27年5月に60歳に到達し、第3号被保険者資格を喪失
・平成28年5月1日にM社に入社し、厚生年金保険の被保険者資格取得
・令和4年6月25日にM社の代表取締役に就任
・令和6年9月15日に年金事務所に来所
・令和6年12月末日付で代表取締役を退任して会社も退職予定

老齢厚生年金受給者が死亡した場合の遺族厚生年金

夫のA雄さんが死亡したとして、B子さんが遺族厚生年金の請求のため、年金事務所を訪れました。B子さんの持参資料と話によると、A雄さんはその死亡の当時、老齢厚生年金の受給権者であることは明らかです。
 
老齢厚生年金の受給権者(25年以上の者に限る)が死亡したとき、一定の遺族に遺族厚生年金が支給されます。遺族が配偶者である場合には、死亡者の死亡当時、死亡者によって生計を維持した者であることが必要です。
生計を維持した者とは、生計同一であり、かつ年額 850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者をいいます。

【根拠条文】
・厚生年金保険法第58条第1項第4号、第59条第1項、第4項
・厚生年金保険法施行令第3条の10第
・「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号厚生労働省年金局長通知。以下 「23年通知」 という。)

B子さんがA雄さんの戸籍上の妻であり、子はすでに成人となって独立しており、B子さんはA雄さんの死亡の当時、A雄さんと生計を同一にしていたことは確認できました。

そこで、B子さんはA雄さん死亡の当時、年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者であって、A雄さんによりその生計を維持した者であるかを確認することにしました。
 
この収入要件の確認は、「23年通知」により取り扱われることとなります。次の①から④までのいずれかに該当することが求められ、これらの要件に該当するかどうかは死亡者の「死亡時点で判断」すべきとされています。

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